男女賃金格差の背景に迫る
日本生産性本部は2024年3月11日、第97期「人事部長クラブ」の3月例会を都内で開催(オンライン併用)した。
当日は「男女賃金格差の背景に迫る」をテーマに、日本貿易振興機構アジア経済研究所開発研究センター主任研究員の牧野百恵氏が講演した。
冒頭、牧野氏は、男性を100とした場合の女性の賃金はOECD平均で87.9なのに対し、日本は78.7であることや、世界経済フォーラムが発表した2023年の「ジェンダーギャップ指数」において日本は146カ国中125位であり、これはG7のみならずアジア諸国の中でも最下位で、特に政治・経済の分野で順位が低いことなどを説明した。
牧野氏は、男女の賃金格差には様々な要因が考えられるが、内閣府の調査では、「男性は出産休暇・育児休業を取るべきではない」と思っている人たちが、男性でも15%強、女性でも10%弱ぐらいいることを引用し、「男性が家族を養うべき」「育児は母親がすべき」といった思い込みや社会規範(思い込みが社会のルールになったもの)の影響力は非常に大きいと指摘した。
また、女性は外で働くべきではないという社会規範が弱い国々(北欧諸国等)では大卒女性ほど結婚して子どもを産んでいるが、こうした社会規範が強い日本や韓国、南欧諸国では大卒女性ほど結婚しないし、子どもも産んでいないことや、日本は先進国の中では女性の労働参加率は低いほうではないが、それはパートタイムを含む数字であり、フルタイム就業者だけに限れば、イタリアよりも労働参加率が低くなることなどにも触れた。
男女の賃金格差の要因になりうる、「女の子は数学が苦手」「女性は競争や交渉が苦手」といった点については、様々な実証研究の結果、社会や文化によって形づくられた思い込みにすぎないことを指摘し、そうした思い込みが将来の所得格差を生み出す可能性があることを説明した。
牧野氏は、柔軟な働き方ができる職種では、子どもが生まれたからといって、男女賃金格差の要因にならなかったという、ノーベル経済学賞を受賞したゴールディン教授の研究成果などを紹介しながら、「柔軟な働き方がまだ十分でない日本でも、コロナ禍で、できないと思われていたテレワークができるようになったように、柔軟な働き方をもっと追求することが必要ではないか」と述べた。
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