逆説9 キャリアデベロップメントプログラムを導入しない
人材マネジメントには、あるべき像を示して足りない部分を埋めさせるギャップアプローチと、今のありのままをそのまま認識して強みを伸ばすポジティブアプローチの 2 種類がある。
人材マネジメントにおいては、ギャップアプローチが合わないケースがある。 その場合、ポジティブアプローチに切り替えるとうまくいく。ここでは、ギャ ップアプローチで設計されたCDPは機能せず、ポジティブアプローチで設計 されたCDPが機能したという事例を紹介しよう。
そもそも私は、キャリアデベロップメントプログラムがうまくいっている企業をあまり見たことがない。キャリアデベロップメントプログラムの多くは、あるべき像を示して、足りない部分を埋めさせるという「ギャップアプローチ」で設計されることが多いため、多様化する価値観を持つ従業員に受け入れられないで形骸化していると考えている。あるべきキャリア像を明示して、その通りにやることが良いことだと明示すれば、その通りにならない場合には落ちこぼれという認識を従業員に持たせてしまうからだ。
一方で、キャリアデベロップメントプログラムをポジティブアプローチで設計しているケースがある。ある企業のCDPでは具体的な人物をキャリアデベロップメントプログラのモデルとして本にして配っている。 当初は誰もが知っている有名な人材を本に載せていたのだが、現場の評判はあまり良くない。登場するモデルのキャリアがあまりにも素晴らしすぎて、現場 の従業員からはむしろため息がでてしまう。「自分には無理だな~」と。そこで、有名でなくても強みを活かしている人物を中心に、特徴あるキャリアを歩んだ人材を様々に紹介するようにしていった。
キャリアデベロップメントプログラムでは組織としてのモデルを一律に示してその通りにやるように指導するのではなく、本人の強みを認識させて、自分の強みをその組織でどう活かせば良いのかのヒントを与えれば良い。キャリアデベロップメントプログラムを設計しようと思った当初の目的は、個々の従業員のモチベーションアップだったはずだ。しかし、多くのキャリアデベロップメントプログラム設計プロジェクトではそのことを忘れ、組織のあるべき論に終始してしまった。結果として出てきた成果物(いわゆる「キャリアモデル」)は、現場社員のモチベーションを更に下げてしまってはいないだろうか?
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「人事の大学」を運営する株式会社JIN-Gの社長です/
ビジネス・ブレークスルー大学で准教授も務めます/
組織人事戦略コンサルタント
・株式会社JIN-G 代表取締役 組織人事戦略スペシャリスト
・ビジネス・ブレークスルー大学経営学部グローバル経営学科准教授
三城 雄児(ミシロ ユウジ) 株式会社JIN-G 代表取締役 組織人事戦略スペシャリスト
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