ストレングスファインダー(R)をマネジメントに活かす その6
マネジメントの現場で、人と人との関係において何より大切だと実感するのが、「聴く力」です。これは知識として学ぶだけでなく、実際に“やってみて初めてわかる”ものだと、私自身の経験から強く感じています。
マネジャーだった当時、私はストレングスファインダー(R)を今のように深く活用できていたわけではありませんが、今思えば、自分の資質がよく表れていた出来事がありました。
ある部下と、よくぶつかっていた時期がありました。彼とは価値観ややり方の違いで議論になることが多かったのですが、今振り返ると、彼は私と似たタイプだったのかもしれません。
当時の私は「責任感」と「分析思考」が強く働いていて、自分の中に“正しさ”へのこだわりがありました。「これは自分の責任だ」という思いに、「こうすべきだ」という理屈を積み上げていくタイプ。もし彼も同じような資質を持っていたとしたら……互いに自分の正しさを信じて主張し続ける限り、平行線の議論になるのも当然です。
当時、私はコーチングを学び始めたばかりでした。そんな中で「変わらなければならないのは、自分のほうかもしれない」と思うようになりました。そこで、私が意識的に取り組み始めたのが“傾聴”です。
最初はとにかく難しかったです。だって、部下の言うことはことごとく“違う”と感じていたから。「それは違うよ」「なんでそう考えるんだ?」と思っていると、つい口を挟みたくなります。でも、それを“ぐっとこらえて黙って聴く”ことを、意識的に練習し続けました。
すると、不思議なことが起こってきました。「あれ、意外とみんなちゃんと考えてるじゃないか」と思うようになったんです。今思えば、それまでの私は相手の考えを受け取る余白をまったく持っていなかったのだと思います。自分の中の“正しさ”で相手をジャッジしていたから、そもそも聴けていなかったんですね。
それが少しずつ、「なるほど、そう考えるのか。それも一理あるな」と思えるようになってきました。相手の言葉を、評価せずにそのまま受け取る。“共感的理解”ができるようになってきたのです。
すると、あれほどぶつかっていた部下との関係も、少しずつ変わっていきました。平行線の議論を繰り返すのではなく、お互いの考えを持ち寄って建設的に話せるようになっていったのです。
関係性が変わると、相手の中にある他の強みにも目が向くようになります。以前なら気づかなかった相手の良さが、ふと見えるようになる。すると、自然と尊敬の気持ちも生まれてくるんです。
実際、私が異動するとき、彼から「知識さん、変わりましたよね」と言ってもらえました。これは私にとって、とても嬉しく、忘れられない一言です。
この経験があるからこそ、「聴くこと」が持つ力の大きさを、私は強く信じています。どんな関係にも、どんな場面にも、信頼関係の土台には“聴く”がある。それは間違いなく、私自身が実感を持って言えることです。

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ストレングスファインダーで変革を促す~対話と多様性を重視し、個々の強みを活かすことで組織全体の成長をサポート~
前職では半導体製造技術者として勤務しながらコーチングやアサーション研修の社内講師も務める。独立後、ストレングスファインダーを活用したチームビルディングやリーダーシップ研修を中心に提供。ストレングスファインダーのプロファイリングに定評がある。
知識茂雄(チシキシゲオ) ガイアモーレ株式会社提携講師(株式会社ハート・ラボ・ジャパン)

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