これからの企業における精神障がい者の雇用支援
2018年7月7日、日本産業ストレス学会の主催する「2018年度 第1回 日本産業
ストレス学会研修会」が開催され、弊社の諏訪裕子が「これからの企業における
精神障がい者の雇用支援-職場定着に向けた企業外支援機関との協働-」という
テーマで講演を行いました。今回のメルマガコラムでは、その講演内容を簡単に
ご紹介いたします。
2018年4月の法定雇用率の引き上げに伴い「精神障がい者雇用の義務化」という
言葉が使われていますが、現状では、企業の障がい者雇用において、その種別
(身体・知的・精神)は問われておらず、企業は雇用イメージが持ちやすい身体
障がい者の採用活動に注力しています。
厚生労働省が毎年公表している「障害者雇用状況の集計結果」によると、2013年(2%)、
2018年(2.2%)の法定雇用率の上昇に併せて、企業は年々、実雇用率を
伸ばしており、民間企業における雇用障害者数は、50万人を超えようとしています。
現行の法定雇用率(障害者雇用率)の算出方法
障がい者雇用率=
(身体障害者および知的障害者および精神障害者である常用労働者数+失業している身体障害者および知的障害者および精神障害者の数)
/(常用労働者数ー除外率相当労働者数+失業者数)
法定雇用率は5年ごとに数値が見直されていますが、今後は労働人口の減少により
計算式の分母が小さくなること、加えて、就職を希望する精神障がい者数の増加に
より分子が大きくなることが予想されます。法定雇用率の上昇が見込まれるため、
企業は引き続き、新規雇用を継続しなければなりません。
また、新規雇用の障がい者数は、ここ4年程、毎年21,000人を超えています。その
内訳は、以前は身体障がい者と知的障がい者で割合を占めていましたが、現状では
知的障がい者と精神障がい者へと推移しています。今後さらに精神障がい者雇用の
拡充が見込まれるため、企業としては精神障がい者の採用や定着の運用体制を早めに
整える必要があるでしょう。
企業における精神障がい者の採用では、業務の選定が難しいという課題があります。
精神障がいの特徴や症状が、身体障がいのように誰が見てもわかりやすい状態では
なく、能力や性格との切り分けが難しいため、業務適性が捉えにくいということが
影響しています。また、トラブルを起こす問題社員(パーソナリティ障害など)と
いうイメージもあり、現場の抵抗感が強いため、配属先が見つからないという現状も
あります。
また、精神障がい者の定着では、マネジメントが上手くいかないという課題が
あります。人事も現場管理職も、配慮の必要性は理解していますが、その程度が
わからず、対応に苦慮しています。何か不具合が起きると、ストレスを加えない
ように仕事を与えなかったり、様子を見過ぎてしまい介入が後手になってしまったり
するため、更なる悪化を引き起こすこともあります。
企業の人事担当者は試行錯誤しながら、精神障がい者雇用を始めつつありますが、
その企業/部署にとって、初期のケース程、上手く雇用できるかどうかは重要で、
その先の受入れを左右することになります。そのため、積極的に精神障がいの
専門家を活用し、雇用の体制づくりに取り組むことが望ましいと思われます。
自社内に精神障がい者雇用の専任担当者を置くことは現実的には難しく、人事は
兼務しながら、片手間で対応せざるを得ません。精神障がい者では企業外支援機関を
上手く活用することが企業に求められると考えます。
- 安全衛生・メンタルヘルス
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公認心理師/臨床心理士/シニア産業カウンセラー
【専門領域】障がい者雇用の企業支援、精神障がい者の採用・定着・育成支援
精神科・心療内科クリニックにて、医師との協働で会社員のメンタルヘルス相談等に関与。EAP事業会社にて企業のメンタルヘルス支援に従事。現在は、企業の人事部門に対する障がい者雇用のコンサルテーション、精神障がい者の現場管理職・本人支援を実施。
諏訪 裕子(スワ ユウコ) シニアコラボレータ―
対応エリア | 関東(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県) |
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所在地 | 渋谷区 |