一芸採用
一芸採用とは?
「一芸採用」とは、企業が社員の採用において、特定の分野での実績=“一芸”に秀でた応募者を積極的に評価する選考制度のことです。評価対象となる分野はスポーツや学業、社会貢献、起業、資格取得など。面接や筆記試験といった通常の採用手法では見えにくい若者の個性や特技に光を当て、物事への高い挑戦意欲や、幅広い能力をもった人材を確保するのがねらいです。「一芸入社」とも呼ばれ、新規事業創出や組織活性化を促す目的で導入する企業が増えています。
志望動機は問わず、適性検査もなし
個性と挑戦心を求める“攻め”の採用
景気回復に伴い、多くの企業が新卒者の積極採用に転じる中、面接や筆記試験あるいは学校推薦といった通常の手法とは別に、応募者の一芸で人材発掘を図る動きが広がっています。デフレ下では、厳しい就職戦線にさらされた学生が内定獲得のためのノウハウやテクニックに走る一方で、企業側も“守り”に入り、ともすると個性的な若者の採用には慎重になりがちでした。その結果、組織内の人材が同タイプに偏る傾向に。「一芸採用」導入の背景には、そうした紋切り型の採用活動への反省もあるようです。
この流れに先鞭(せんべん)をつけたといわれているのは富士通です。2011年春の新入社員採用から「チャレンジ&イノベーション採用」と銘打って一芸採用枠を新設しました。同枠は通常枠と比べると、適性検査やグループワークなどの過程がなく、選考にあたっては志望動機もあえて問いません。学生時代に打ち込んできた内容や実績、物事にチャレンジする意気込みを応募者にプレゼンテーションしてもらい、エントリーシートと面接だけで採用を決定する方式です。
同社の採用サイトなどによると、これまでに一芸採用枠で内定を獲得した応募者には、難関の公認会計士試験に現役合格した学生やビジネスコンテストで複数回入賞した外国人留学生、囲碁の学生チャンピオンといった、多彩な一芸の持ち主が並びます。ラクロスやシンクロナイズド・スイミングの元日本代表などスポーツの分野で輝かしい実績を上げた人材もいれば、各種学会や大学で表彰を受けた「学業優先組」の顔ぶれも。
制度導入から三年間で採用は計45人にのぼり、社内では、これまで富士通には集まらなかったようなユニークな個性や挑戦心、自立心を持った人材の発掘につながっていると評価されています。
ソフトバンクが、分野や領域に関係なく、ナンバーワンの実績をもつ人材を求めて導入した「NO.1採用」も、一芸採用の一種と言えるでしょう。何であれ、その道の一番を目指して勝ちとった経験とそこへ至るまでのプロセスを、書類審査とプレゼンテーション(面接)のみで評価するのが特徴です。これまでに衛星開発コンテストや起業家選手権の優勝者、レスリングの日本王者といった、多様なナンバーワン人材が採用されています。また13年末には、過去三年連続で新卒採用枠を約350人に抑えていたパナソニックが、積極採用への転換を発表。15年春入社の新卒社員を700人と前年に比べ2倍に増やすと同時に、採用方法についても一芸採用の導入を打ち出し、大きな話題を呼びました。
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