内製化
内製化とは?
企業が外部の専門家に委託していた業務を、自社内で行うことを「内製化」と呼びます。収益環境の悪化に伴ない、コスト部門の予算削減が進むなか、2009年前後からとくに教育研修をはじめとする人材育成を、外注に頼らずに、社内で内製化する動きが目立ってきています。
コストダウンだけがメリットではない
必要に応じて外注と使い分けるのが得策
定期刊行誌『企業と人材』(産労総合研究所発行)が、2010年10月に発表した「第34回 教育研修費用の実態調査」によると、企業の教育研修費総額と従業員一人当たりの教育費用はここ数年減少傾向にあり、2009年度の一人当たりの額(実績)は04年度以来、5年ぶりに40,000円台を割り込んだとのこと。社外の講師や教育機関などに支払われた09年度の“外注費”の総額は平均2,086万円で、前回に比べて45%もダウン。この傾向は、大企業でより顕著に表れています。
不況下の人材開発の取り組みでは、外注を抑えることによるコスト削減は避けて通れない課題。研修の内製化への関心が高まる背景にもこうした流れがあることは間違いありません。しかし内製化を検討・選択した理由として、コストダウン以外のポジティブな側面に注目している企業も少なくないのです。
● 自社の従業員のために最適化した教材やカリキュラムを開発することで高い学習効果を実現できる
● 社内人材を講師として育成することで、指導や教育のノウハウを組織に蓄積できる
● 専門性の高い人材を活用する可能性が広がり、一部の熟達者の暗黙知として個人の中に埋もれていたノウハウを組織の形式知として共有・継承できる
――自社のニーズにマッチした研修を開発し、必要な人材や体制を整備すれば、内製化によるメリットは上記のように豊かなものとなるでしょう。
内部人材による“自前”の教育を推進している企業の成功例といえば、国内ではトヨタの名前を挙げないわけにいきません。同社では有名な「トヨタウェイ」を教育理念に掲げ、「トヨタ・インスティテュート」と呼ばれる教育専門の組織を設立。伝統の継承によって社員の成長を促す、具体的かつ実践的な教育プログラムでプロ人材の輩出に成果を挙げています。しかし言うは易しで、そこまで研修の内製化を徹底し、メリットを実現することはきわめて難しいでしょう。専門の教育サービス事業者が有する高度な講師スキルやプログラム開発のノウハウが欠かせないはずの研修を、素人同然の自社社員が行おうとすれば、失敗するリスクは大きく、粗悪な研修を濫造することにもなりかねません。
組織開発コンサルティングのNGKの望月明人取締役は「コストダウンのことだけを考えて研修を内製化するのは危険だ」と警告します。内部講師をつけてみたり、eラーニングを導入してみたりするのではなく、内製化できるところとアウトソーシングすべきところはきちんと見極めるべきだというのが望月氏の提言です。09年から本格的に内製化をスタートさせているソフトバンクは、「社内講師認定制度」など独自の実践的な研修スタイルで注目を集めていますが、すべての研修を自前で行っているわけではありません(09年度は社員向けの集合研修で64%、eラーニングで67%、ショップスタッフ向け研修で84%を内製化)。幅広い視野と知見の獲得を目指す管理職など上位階層向けのメニューについては基本的に外部ベンダーを利用するなど、必要に応じて内製と外注を使い分けることにより、研修の効果の最大化を図っています。
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