希望留年制度
希望留年制度とは?
卒業時までに企業から内定をもらえなかった学生に対して、翌年度も就職に有利な“新卒”として就職活動ができるよう、本人が希望すれば留年を認め、在学させる制度です。「卒業延期制度」とも呼ばれ、就職戦線の激化を背景に導入する大学が増えています。
“新卒”にこだわって再チャレンジ
就職留年を公認・支援する大学が増加
読売新聞が全国の国公私立4年制大学735校を対象に実施した調査によると、今春、卒業年限を迎えながら留年した学生が全国で少なくとも7万9000人いると推計されることが明らかになりました(読売新聞 2010年7月6日付)。2009年度の卒業予定者数と実際の卒業者数の差は7万9000人ですが、そのほぼ全員が就職留年者である可能性がきわめて高いと判断されたのです。国の推計による今春の就職率(4月1日時点)は過去ワースト2位の91.8%ですが、この数字は卒業者を対象に調査したもので、留年者は含まれていません。国の調査によると、約3万1000人が、就職が決まらないまま卒業しており、今回明らかになった7万9000人の就職留年者と合わせると、約11万人がいわゆる“就職浪人”であるという計算になります。
採用側の根強い“新卒主義”を背景に、学生があえて卒業に必要な単位を落としたり、卒業論文を提出しなかったりして、浪人の道を選ぶケースは以前からありました。08年のリーマンショックの影響で“内定取り消し”が頻発して以降は、大学側も学生支援のために、授業料を減額するなどの特別措置で留年を認める制度を次々と導入。さらに今年は、内定取り消しに遭った学生だけでなく、就職活動が不調だった学生にも、制度の対象を広げているのが特徴です。
湘南工科大(神奈川県藤沢市)は今春から、内定取り消しでなくても就職活動を続ける学生のために「就職支援特別在籍制度」を設けました。在籍には年間22万円が必要ですが、教員から履歴書の書き方や面接の受け方などについて指導を受けることができます。青山学院大(東京都渋谷区)も来年度から「卒業延期制度」を導入。授業料は基本的に半額とし、学生の経済的な負担が重くならないように配慮するといいます。こうした制度を導入した大学は、リーマンショック以前から実施していた立教大(東京都豊島区)や成蹊大(東京都武蔵野市)も含めると、全国で数十校におよぶと見られています。
もっとも「卒業要件を満たしているのに大学公認で留年させる」という手法について、大学内には異論もあるようです。明治大(東京都千代田区)も1割の授業料で在籍させる特例措置を設けていますが、同校就職キャリア支援部の杉林宏茂事務長は「就職が決まらないという理由だけで特別な在籍を認めるのは不公平だ。こうした措置が広がり過ぎると、逆に企業側が内定切りしやすくなる面もある」と指摘しています。
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