人事デューデリジェンス
人事デューデリジェンスとは?
デューデリジェンスとは、投資やM&Aなどの取引を検討する段階で、事前に投資対象となる企業などの価値やリスクを精査・検証する作業のこと。法務や財務、ビジネスなどさまざまな観点から行われ、とくに経営資源としてのヒト・モノ・カネのうち、ヒト=人事面に焦点を当てる査定を「人事デューデリジェンス」あるいは「HRデューデリジェンス」と呼びます。
人材に焦点を当てたM&Aの事前調査
必要ならば買収先社員の個人情報も求められることに…
デューデリジェンスというと、財務や法務にかかわるテーマという認識が従来は一般的でした。しかし、M&Aなどによって二つ以上の会社が統合される場合、出身組織の異なる人材同士をどれだけ融合させられるかがその成否を握るとの観点から、近年は人事面を対象とする査定に注目が集まっています。投資先、買収先の「人と組織」の状態を正確かつ戦略的に把握するために人事デューデリジェンスを実施することは、大手の外資系企業ではすでに常識であり、国内でも頻繁に行われるようになってきました。
人事デューデリジェンスを行う際の視点は、大きく二つあります。ひとつは、いわゆる人事の財務面に着目して行うデューデリジェンス。もうひとつは、財務面以外のあらゆる観点から、対象企業の人材マネジメントの有効性を精査するものです。具体的には、貸借対照表上の退職給付引当金の適切性の確認や総人件費の把握など、人事施策が企業の財務体質にどのような影響を及ぼしているかを検証するのが前者の典型例です。統合される企業間で給与水準や福利厚生に許容しがたい格差があると、新会社発足後にモラルや士気の低下を招く恐れもあるので留意が必要でしょう。
一方、非財務面のデューデリジェンスにおいては人事制度のしくみや運用状況の検証はもちろんのこと、部門別・役職別の従業員の人員構成(年齢/性別など)から労使関係や組合の活動実態、さらにはマネジメント層を中心とするコア社員の個々の業績やスキルまで、企業の文化とポテンシャルを形成するあらゆる要素が抽出され、案件の検討に資することになります。その過程で、査定を受ける側の企業は、M&A検討元から人事情報の提供を求められることも少なくありません。
人事担当者としては、社員の雇用契約書や履歴書、職務経歴書などの個人データまで、社員個々の同意なしに提出してよいものか迷うところですが、2009年10月に経済産業省が改正および告示した「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」によると、「当該データの利用目的および取扱方法、漏えい等が発生した場合の措置、事業承継の交渉が不調となった場合の措置等、相手会社に安全管理措置を遵守させるため必要な契約をすることにより、本人の同意等がなくとも個人データを提供することができる」とされています。
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