ワーク・ライフ・エンリッチメント
ワーク・ライフ・エンリッチメントとは?
「ワーク・ライフ・エンリッチメント」とは、仕事とプライベートが相互に作用し、質を高めあうという考え方のこと。「エンリッチ」とは英語で「豊かにする」という意味があります。これまでは、仕事とプライベートは明確に切り分けられるもので、時間やコミットメントを奪い合う対立関係にあると捉えられてきました。しかし近年では、仕事と私生活(主に家庭生活)のどちらか一方の役割における経験が、もう一方の役割における経験の質を高めるというポジティブな効果が注目され、研究が進んでいます。
ワークとライフは必ずしも対立関係にはない
複数の役割を持つことのメリットとは?
仕事と家庭の両立を考える時によく聞く言葉として、「ワーク・ライフ・バランス」があります。今や当たり前のように使われていますが、この言葉の根底にはワークとライフは別物で、対立関係にあるという考え方があります。「公私混同」というネガティブな言葉もありますが、これまでライフはワークに割くリソースを阻害するものとして、ネガティブに捉えられてきました。
しかし最近はワークとライフは必ずしも対立する関係ではなく、両者が相互に作用して相乗効果を与え合う、というポジティブな面が注目されるようになってきました。ライフの中でも大部分を占める家庭生活に着目し、一方へのコミットメントがもう一方を豊かにするという効果が見出されています。
仕事と家庭生活の関係性には、ネガティブなものとポジティブなものがあります。まずは「仕事が忙しくて家庭のことを全くできない」「家事・育児が大変で仕事のことを考えられない」というネガティブなもの。実際に限られた時間で仕事と育児を満足にこなすのは骨が折れる営みです。
ただし、仕事と家庭生活の両立はネガティブな影響だけではなく、「取引先と子供の話題で盛り上がった」「仕事で身につけた業務管理を家事にも応用している」といったポジティブなものもあります。「Z世代の子供がいることで、新商品のマーケティングに役立った」「子どもを保育園に預けて働きに出ているからこそ、子どもとの時間を大切に思える」など、大変なことはあっても互いを豊かにする効能もあります。
会社だけ、家庭だけ、といった単一の役割だけでなく、複数の居場所や役割を持つ人のほうが、心理的ウェルビーイングが高いとも言われています。複数の役割を持つことによるポジティブな影響を引き出すためには、仕事に裁量があることや、新しい挑戦にオープンな組織風土、ワーク・ライフ・エンリッチメントを体現するようなロールモデルの存在が必要です。従業員にモチベーション高く働いてもらうためにも、社外に役割を持つことを歓迎するような風土を作ることが大切です
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