安心・安全な場づくりとは?
組織として働く利点を最大限活かし、「集まった人たちが組織として機能しながら持続的に成果をあげる」状態を目指した考察を続けています。
今回は、実際に動き出すための土台となるお話です。
【組織を考える問い】
メンバーが本音を話すには、何が必要でしょうか?
前回までの記事で、組織を活性化させるために必要なコミュニケーションについて書いてきました。
しかし、メンバーが集まって話をするような場面では「さあ、みんな話して!」と促すだけではなかなか本音のコミュニケーションが起こりません。
メンバーが本音で話をしていくためには、まず「場をつくる」必要があるのです。
安心、安全な場づくり
メンバーのみんなで話す場合、よく「対話をしよう」とか「本音で話そう」などといったコメントをリーダー(あるいはファシリテーター)がします。
上辺で整えられた当たり障りのない話だけではない、ある意味ではもっとドロドロした部分を含めて話してもらうことで、今までにない新たな発見につながり、心からの同意が生まれると期待しているからです。
しかしこの「本音」の部分を引き出すのは、そう簡単なことではありません。
その人を形作る重要な部分、本来なら隠しておきたいようなデリケートな内容が含まれていますので、これをさらけ出すのはとても勇気がいることだと想像できるでしょう。
もし本音を話して否定されたらどうしよう。
自分だけがおかしなことを話してしまったらどうしよう。
他の人の意見に自分が影響を受けてしまったら、
逆に自分の発言で他者に変な影響を与えてしまったら…
などなど、不安を挙げればきりがありません。
そこで、これらの不安を「感じなくてもいい」ように、メンバーをサポートすることが必要になります。
これが、「安心・安全な場づくり」です。
「安心・安全な場」に必要な、2つの要素
では、安心・安全な場をつくるためには何が必要なのでしょうか。
特に会議やミーティングの場では、私は以下の2点を共有することが必要だと考えています。
①場に参加するための、最低限のルール(グラウンド・ルール)
例えば、場に参加するための指針として、次のようなルールをよく使います。
・多様な意見を歓迎する
・意見は受け止め、批判をしない
・一人にではなく、みんなに話す
・ここで話したことは、口外しない(守秘義務)
こういったルールを、最初に全員が合意し、話し合いの前提としておく必要があります。
②本音を話すだけの価値があると参加者が思える後押し
もう一つ、参加者が本音を話すように「背中を押す」こともあわせて必要です。
話すことへのメリットを感じてもらうこともありますが、逆に危機感を覚えることで背中を押されることもあります。
・本気で何とかしたいと思っているという本気感
・この対話の先に、新しいものがあるはずという期待感
・このままではダメで、次のステップにすすまなければならないという危機感
いずれにしても、これらを共有することで「何のための場、話し合いなのか」に対する理解を揃え、皆の力が必要であることを発信し続けます。
「自由」という言葉は聞こえがいいですが、まったくの自由な状態ではなかなか人は動き出せません。
自由に動くためのガイドラインとして、この2点が求められるのです。
最初の1歩はリーダーから
特に、会社でこのような話し合いの場を持つ場合、「リーダーからの開示」が大きな後押しになることがあります。
メンバー内に上下の関係(役職者/非役職者や先輩/後輩など)がある場合、下位にいる人は上位者の意見に影響を受けやすいです。
リーダー自身が、自分が完璧ではないことを認めた上で、今考えている不安や大切に思っている本心を開示する行為(自己開示)が、メンバーの心理的なハードルを下げることにつながります。
そして、この自己開示には「返報性」という法則が働きます。
誰かが開示をすることで他のメンバーも心を開くといった形でお互いに影響し合いますので、最初にリーダーが開示をすることは場に大きな影響を与えることにつながります。
「場づくり」は全員の役目であることを忘れないで
しかし、きっかけを与えるのはリーダーであったとしも、安心・安全な場をつくるのは全員の役目であることを理解する必要があります。
一時的につくることができた「場」は、保持し続けないと崩れていきます。
先ほどの「返報性」と同じように、今度は離脱者が離脱者を生んでいきます。
「自分たちが場を作っていく」という覚悟をもってメンバーに参加してもらう。
そんなメッセージも「場づくり」に必要です。
【今回のポイント】
・本音で話すためには、「場をつくる」ことが必要
・「自己開示の返報性」によってきっかけをつくり、全員で「場」を保持していく
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早稲田大学アカデミックソリューションは、早稲田大学の関連会社として、組織の課題に合わせたカリキュラム編成と実践力を養う体験型学習を通じて、複雑で困難な時代に対応する「しなやかな人材・チームづくり」を支援します。
リカレント教育チーム(リカレントキョウイクチーム) 株式会社早稲田大学アカデミックソリューション コンサルタント、早稲田大学紛争交渉研究所招聘研究員
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