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【前編】注目のアルムナイ制度とは?メリット・デメリットを解説

アルムナイ制度とは、退職者を再雇用するといったように、退職した人材をリソースとしてとらえ、活用していくことです。近年は採用難による人手不足から、採用制度として取り入れている企業もみられます。本記事では、アルムナイ制度が注目される背景やメリット・デメリット、またアルムナイ制度の導入ステップについて前後編で解説します。

_____________

前編目次
アルムナイ制度とは
アルムナイ制度が注目される背景
アルムナイ制度のメリット3つ
アルムナイ制度のデメリット2つ
_____________

後編目次
アルムナイ制度導入の5つのステップ
アルムナイ制度成功のためのポイント

_____________

アルムナイ制度とは
「アルムナイ」とは、卒業生・同窓生という意味で、企業を退職した元従業員のことを指します。企業におけるアルムナイ制度は、元従業員との関係性を維持しつつ、元従業員と組織を結びつける制度のことです。

 

アルムナイ制度が注目される背景
本章では、アルムナイ制度が注目される背景を解説します。

 

■少子高齢化と労働力不足

日本の労働市場は、少子高齢化の影響で労働人口が減少しています。リクルートワークス研究所のデータによれば、2030年に341万人、2040年に1,100万人分の労働力が不足するという予測があります。

このような背景の中、企業においてはどのようにして優秀な人材を確保し、生産性を高めていくかが大きな課題です。アルムナイ制度は売り手市場により、優秀な人材の確保が難しい状況の中で、外部から新たな人材を確保するより、元従業員にアプローチをするほうが、効率的であるといった点で注目されています。
※参考:リクルートワークス研究所 『未来予測2040』.リクルートワークス研究所公式HP.2023年3月.

 

■中途採用における採用難易度の上昇
総務省の労働力調査によると、転職希望者の数は10年間で623万人から968万人と急増しています。

しかし、実際に転職を果たしている人数は300万人前後であまり変化は見られない状況です。2022年では、転職希望者968万人に対して、実際に転職を果たしている人数は303万人でした。

このギャップには、660万人近く動いていない転職希望者、つまり「転職の潜在層」が存在することになります。労働力の確保が難しくなる中、アルムナイ制度は潜在層へのアプローチが可能と考えられる新しい採用手法の一つとして注目されています。

※総務省「労働力調査」統計名:詳細集計 全都道府県 全国 年次 
表番号:2-3-1、2-14-1 をもとに株式会社Works Human Intelligenceが作成

 

■政府資料による事例掲載

経済産業省「人材版伊藤レポート2.0実践事例集」にもアルムナイ制度に関する多くの事例が掲載されています。

アルムナイ制度は、キャリア自律、ダイバーシティ&インクルージョン、エンゲージメント向上の実現方法として、多様な人材を獲得するための一手法です。

アルムナイ制度では、一度退職した従業員は、退職後であっても貴重な人的資源であることは変わらないと考えることが必要とされています。

※参考:経済産業省.“「人材版伊藤レポート2.0実践事例集」”.令和4年5月

 

 

アルムナイ制度のメリット3つ

本章ではアルムナイ制度のメリットを3つ紹介します。

 

■メリット1:採用と人材育成にかかるコストの削減

1つ目のメリットとして、採用コストの削減がアルムナイ制度による採用の大きな魅力として考えられます。

アルムナイ採用の場合、企業側から退職者に直接声をかけて採用するケースが多いでしょう。転職エージェントの求人媒体を利用せずとも採用が可能なため、採用プロセスが大幅に簡略化され、必要な費用が低減します。

また、短いオンボーディング期間もアルムナイ採用のメリットの一つです。

一度退職した従業員であれば、企業の文化や業務フローにすでに馴染んでいるため、新しい従業員と比べて教育や研修の時間・コストの軽減に繋がると考えられます。

 

■メリット2:ブランディング・エンゲージメント向上

2つ目のメリットとして、企業ブランディングやエンゲージメント向上が挙げられます。

「再び働きたい」と考える退職者を受け入れる企業は、「働きやすく、人間関係が良好な組織」としてのイメージを外部に発信できます。これは、求職者へのアピールとなり、優れた人材の獲得が期待できるでしょう。

さらに、他の従業員のエンゲージメントを高める効果があります。たとえば、一度退職した従業員が、再就職先で自社での過去の経験を生かしたエピソードを共有することはよい方法です。自社の業務経験が市場でも高い価値を持つことを認識できます。

一方で、それでも自社に戻ってきたということは、他社と比較しても、自社で働きたいと思ったからに他なりません。他社と比較して、自社のどのような点に魅力を感じて戻ってきたのかを共有することで、従業員のエンゲージメントが高まることが期待されます。

退職者自体が、他企業での経験を生かし、新しい視点や提案をもたらすことで、組織の活性化やイノベーションを促進する可能性もあります。

このように、アルムナイ制度は企業の魅力を内外に伝える効果的な手段となるでしょう。

 

■メリット3:採用のミスマッチ減少・即戦力採用

3つ目のメリットとして、採用のミスマッチの減少や即戦力採用に繋がる点が挙げられます。

アルムナイ制度は、企業文化や組織風土をすでに理解している人材を即戦力として採用できるメリットがあります。一度、組織内で働いた経験を持つ人材は、業務内容や企業の方針に対する適応が早いです。

また、再雇用により、他社や外部での新しいスキルや知識を自社に持ち込むことも期待されます。採用のミスマッチのリスクが低減し、早期退職を防げる点も大きな利点となります。

 

アルムナイ制度のデメリット2つ
アルムナイ制度は、多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも考えられます。本章ではアルムナイ制度のデメリットについて、従業員と企業、それぞれの目線で解説します。

 

■従業員目線のデメリット:モチベーションの低下

前章で従業員のエンゲージメント向上に繋がると述べましたが、その一方で、従業員目線のデメリットとして、従業員のモチベーション低下のリスクも挙げられます。

退職者が既存の従業員に比べて好待遇で再雇用された場合、「自分は頑張っているのに、一度退職した従業員の方が自分よりも評価されているではないか」というネガティブな気持ちが高まってしまうことで、従業員のモチベーションを低下させてしまう可能性があります。

また、「一度退職しても、好待遇で再び働ける」という印象を与えた結果、退職へのハードルが下がり、人材流出やモチベーションの低下を招くリスクが増大する恐れもあります。

 

■企業目線のデメリット:アルムナイ採用の従業員を受け入れるための社内環境整備が必要になる

企業目線のデメリットとして、アルムナイ制度に伴い、社内環境の整備が必要となることが挙げられます。

アルムナイ採用を成功させるには社内の受け入れ体制の整備が必要不可欠です。
歴史的に「途中退職=裏切り」との概念が日本企業に根付いていたため、再雇用に対する不満や抵抗が生まれることが考えられます。

現代の多様な働き方の浸透とともに、退職者も新しい経験や価値観を持って戻ってくるため、これらを受け入れる風土作りが求められます。また、採用基準や処遇、配属先等を明確にすることで、不満の原因を排除することも大切です。

社内の理解と協力のもと、アルムナイ制度の導入を進めることで、多様な価値観の共存と企業の成長が期待できるでしょう。

___

つづく後編では、アルムナイ制度導入の5つのステップと成功のためのポイントをご紹介します。

  • 経営戦略・経営管理
  • モチベーション・組織活性化
  • 人事考課・目標管理
  • キャリア開発
  • 情報システム・IT関連

株式会社Works Human Intelligence /  WHI総研

大手不動産会社にて企業の寮や社宅の運用支援を通じた業務改革に従事後、Works Human Intelligence入社。保守コンサルタントを経て、多くの企業を見てきた経験を活かし、人事全体の事例・トピックスの研究・発信活動を行っている。

袋瀬 淳(フクロセ ジュン) 株式会社Works Human Intelligence /  WHI総研

袋瀬 淳
対応エリア 全国
所在地 港区

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細木聡子(株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士)

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2025/01/15 ID:CA-0005801 人事施策・研修実施のヒント