必要なのは英語力アップより、対応力
今週のコラムは、英語力と一緒に身につけたい「対応力」についてご紹介します。
もう10年近く前のことですが、工業大学の大学院で英語コミュニケーションのカリキュラム設計を担当していました。プロジェクトを請け負い、依頼主の教授に初めてお会いした時、彼女が指導する院生たちが抱える課題に関する切実な思いを共有してくださいました。
「うちの院生たちはみんな奨学金をもらって研究しているくらいですから、みんなとても優秀です。研究内容も素晴らしいものが多いです。でも国際学会に行くと何も伝えられずに帰ってきてしまう状況をなんとかしたいんです。」
院生たちの研究内容を見てみると、がんの早期発見に役立つ画期的な手法や画像解析技術など、当時としては先進的な研究内容がほとんどで、彼らが作ったポスタープレゼンテーション資料には専門的で高度な英語が用いられていました。最難関大学突破のための受験勉強を通ってきていますし、普段読む論文もほぼ全て英語ですから、少なくとも読み書きにおいて彼らの英語力は決して低くはないのです。では何が原因で、国際学会で研究成果をアピールできないのか。
実は、彼らの多くは英語で質問されれば、きちんと英語で答えられるんです。ただ、話を切り出したり、自分が最も伝えたいメッセージに誘導したりといった会話の舵取りができないだけだったのです。
必要だったのは対応力
「英語をただ話す」のと「英語を使ってある目的を達成する」のは、似ているようで全く異なります。前者は、おおげさに言えば、文法のルールに則って単語を並べれば達成できるのです。でも後者は、使う単語やフレーズ、話ぶりによって相手や会話に与える影響を把握した上で自ら会話のイニシアチブを取る必要があるのです。相手の英語力や、話題に関する専門知識の有無によって話し方を適宜工夫しなければ伝わりません。
そこで、会話に割って入る、話の腰を折らずに話題を変える、技術的なことを言ったらすかさず言い換えをするなど、「伝える」という目的を達成するために必要な「英語でできること」を体得している人が、誰とでもコミュニケーションが取れる人物と言えます。Bizmatesではこの能力を「対応力」と呼んでいます。
対応力は、リスニング力、語彙力、流暢さなどで構成されるいわゆる「英語力」とは別の力で、「会話を前に進める力」と言い換えることもできます。これは、英語力を問わず身につけ、行使することができる力です。
実際に、院生たち向けに対応力を中心に練習・習得する4ヶ月間の英会話カリキュラムを作成し実施したところ、英語初級者ですら、みんな堰を切ったように積極的に英会話に参加し、活発な議論も行えるようになりました。彼らは元から英語の知識も専門知識も豊富。熱心に取り組んでいる研究内容という、本当は話したくて仕方のない興味関心事もあるのです。必要だったのは、さらなる英語力アップではなく、対応力でした。
語彙を増やす、リスニング力を向上させる、といった、いわゆる英語力アップはどうしても時間がかかりますし、時間をかけて達成していくものです。でも対応力習得は、場面毎の対応の仕方を知っているか・知らないか、他人が対応している様子を見たことがあるか・ないか、その対応を自分でやったことがあるか・ないかの問題なので、英語力アップほど時間はかからなく、即効性があります。
もし英語学習で伸び悩んでいるとしたら、もしかしたら、英語力アップではなく対応力アップに意識を切り替えると解消するかもしれません。
…続きはまた次回のコラムで!
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日本のビジネスパーソンに圧倒的に支持される、ビジネス特化型オンライン英会話
大手英会話スクールで英語教師として10年勤めた後に、同社や出向先の大学院で英語コミュニケーションコースのカリキュラムと教材開発を担当。
その他、著書として理系英会話アクティブラーニング書を二冊出版。
竹原 悠介(タケハラ ユウスケ) ビズメイツ株式会社 プロダクトスペシャリスト
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所在地 | 千代田区 |
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