ストレスチェック集団分析による高ストレス職場の見極めと介入
ストレスチェックで集団分析をする際、皆様の企業ではどの指標に着目し、各部署の状態を把握しているでしょうか。
一般的に、組織の中の高ストレス職場を見極める場合、
「総合健康リスク」、「高ストレス者割合」の2つの指標を参考にすることが多いかもしれません。
総合健康リスク(全国平均100)は、130前後になってくると、その部署では既に不調者や休職者が発生している可能性が高い印象です。
高ストレス者割合(平均10%程度)は、20%以上の場合、職場環境に何らかの課題が存在している可能性が高いと言われています。
上記2つの指標を参考にする場合、高ストレス職場の可能性を考え、注意すべきなのは以下の3パターンです。
(1)総合健康リスク、高ストレス者割合が共に高い。
(2)総合健康リスクは低いが、高ストレス者割合が高い。
(3)総合健康リスクは高いが、高ストレス者割合は低い。
(1)は、明らかに高ストレス職場と思われ、不調者の早期発見・早期対応、部署状況の悪化防止のためにも、早急な介入が必要となります。
具体的な介入方法としては、部署個別面談の実施がお勧めです。
部署個別面談については、以前のキューブメルマガvol.131(2023年12月配信)をご参照ください。
(2)は、高ストレス職場と捉えていいのか、一見どう理解したらいいか、難しいかもしれません。
総合健康リスクが低い=部署に課題なしと認識した結果、
各高ストレス者に面談勧奨はしても、部署自体へのアプローチは取られないこともあるのではないでしょうか。
今回は、(2)のパターンを掘り下げ、状況理解や対応について考えてみたいと思います。
そもそも、なぜ(2)のような一見矛盾した状況が生まれるのでしょうか。
これには、高ストレス者の判定方法が関係しています。高ストレス者の判定基準は各実施者によって異なりますが、
一般的には、「心身のストレス症状」の得点が高く出ている場合、もしくは、「心身のストレス症状」の得点はまずまずで、
同時に「仕事のストレス要因」と「周囲のサポート(の少なさ)」の得点が高い場合に、高ストレス者と判定されます。
この点を踏まえると、(2)の状況では、以下のようなことが起きている可能性が考えられます。
<心身のストレス症状のみ高い場合>
a、部署内で一部の人やチームに業務負荷が偏っているが、日頃の周囲のサポートは良い。
(例:新人が多い中にベテランが数人の体制、時期的にある担当業務の人達だけ繁忙期。)
b、会社の事情等で、部署の業務負荷は低いが、個人の状態は良くない。
(例:不調者や復職者が多く所属する部署での配慮、社会的要因や組織の方針転換等で業務が少なくなった。)
c、個人要因で高ストレスな人がたまたま部署内に多い。
(例:介護・育児・親子/夫婦関係といった家庭問題、身体疾患や持病との両立、ローパフォーマンスに悩む人等が部署内に多い。)
<心身のストレス症状+仕事のストレス要因と周囲のサポートの少なさがある場合>
d、一人職場やテレワーク、現場業務など環境面の影響で、サポ-トが少ないメンバーが部署内に一部いる。
(例:取引先に常駐、直属上司とPJが分かれているため、日頃サポートを得にくい。)
いかがでしょうか。
部署の総合健康リスクは、平均値をとるため、abdのように組織課題がある場合でも、数字上、隠れてしまうことがあります。
経年比較やクロス分析、高ストレス者面談から組織課題の一端が見えることもあるかもしれませんが、
可能な限り、管理職から現状や背景をヒアリングし、経過や必要な支援について確認していけるとよいと思われます。
cのように、組織要因というより個人要因が大きい高ストレス者に関しては、職場で出来ることには限りがあると考える方もいるかもしれません。
しかし、状態が長期化すると、仕事や周囲に間接的な影響を及ぼすことも懸念されます。
管理職が調整やフォローで苦心したり、部署内の不満が大きくなる等、後々部署状況の悪化に繋がる可能性もあるため、
早めの状況把握や専門家への相談を含めた対策の検討が必要です。
高ストレス職場の状況を正確に見極めるためには、定量・定性の両面から情報を整理していくことがポイントとなります。
管理職ヒアリングの際は、職場側を追求するのではなく、現状把握や原因分析のための対話をしていくことが大切です。
チームでサポートすることが、不調者の早期発見・早期対応や職場環境改善に繋がっていくと思われます。
(シニアコラボレーター 佐川 由紀)
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公認心理師/臨床心理士/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント
【専門領域】産業精神保健、ストレスマネジメント、認知行動療法
公立大学付属病院精神科デイケア、心療内科クリニックデイケアを経て、精神科クリニック外来業務、教育相談課スクールピア事業に従事。その後、EAP事業会社にてカウンセラーとして従業員からの相談、研修業務に携わり、企業のメンタルヘルスケアを支援。
佐川 由紀(サガワ ユキ) シニアコラボレータ―
対応エリア | 関東(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県) |
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