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プロフェッショナルコラム

第79回 年末調整の変更点~その1

2020年分の年末調整は、法改正により、昨年と計算方法等に異なる箇所があります。今回は、年末調整の概要と、2020年分年末調整の変更点について説明します。

 

<年末調整の概要>

毎年行われる年末調整ですが、年に1回しか行われないため、仕組みは何となく把握していても、正確には理解をしていない方もいらっしゃると思います。2020年分年末調整の変更点の前に、概要をおさらいしておきたいと思います。

 

会社は、給与計算の際、「源泉徴収税額表」等に基づいて、給与や賞与から所得税を源泉徴収しています。ところが、この「源泉徴収税額表」の税額は、1年間の年収を想定して算出した概算の税額であり正確な税額ではありません。つまり、毎月、源泉徴収した税額の1年間の合計額と本来治めるべき税額とは一致しません。

その原因として考えられる主なものは、次の通りです。したがって、年に1回、年収が確定をした段階で所得税の過不足を調整する必要があります。

 

1)源泉徴収税額表では、1年を通して毎月の給与の額に変動がないものと仮定して税額が決められていますが、実際は年の途中で給与の額が変動する場合がある。

2)年の途中で扶養親族などに異動があっても、その異動後の月の支払い分から修正する

だけで、遡って各月の源泉徴収税額を修正しないことになっている。

3)配偶者特別控除や生命保険料控除、損害保険料控除などは、年末調整の際に控除する

ことになっている。

 

このような理由で月々の給与から控除されている所得税の合計額と本来納付すべき所得税は一致しないのが通常です。そこで、これらの差額を清算するために、1年の給与総額が確定する年末にその年に納めるべき税額を正しく計算し、それまでに徴収した税額との過不足を計算してその差額を徴収し、または還付することが必要になります。この清算の処理を「年末調整」といいます。

本来であれば、税金を納める社員本人が行うべきですが、一人ひとりが確定申告を行うと国の処理も大変なものとなってしまうのでこの作業を会社が行っています。社員にしてみれば、会社が税金の計算や徴収・還付をしてくれるので手間が省けますが、会社にすると社員の税金を間違わずに計算をして納付するという責任と作業負担が生じています。

 

<令和2年の年末調整の変更点>

2020年分年末調整はいくつかの変更点があります。変更点を順番に説明していきます。

 

1.基礎控除の変更

確定申告や年末調整において所得税額の計算をするときに、総所得金額などから差し引くことができる控除の一つに基礎控除があります。これまでは、すべての納税者に対して38万円の控除が認められていました。2020年分年末調整からは、合計所得金額に応じて基礎控除の金額が以下のように変わってきます。

合計所得金額 基礎控除額
2400万円以下 48万円

2,400万円超2,450万円以下 32万円

2,450万円超2,500万円以下 16万円

2,500万円超                      0円

このように、合計所得金額が2400万円以下の方は、基礎控除の金額が38万円から48万円に引き上げられています。一方で、合計所得金額が2400万円を超える方については、38万円よりも基礎控除額が低く設定されることになりました。

 

2.給与所得控除の変更

給与所得の金額は、給与等の収入金額から給与所得控除額を差し引いて算出します。この給与所得控除額は、給与等の収入金額に応じて、次のようになります。

変更点の比較のために2019年の給与所得控除の計算式も記載しますが、実際に所得税を計算する際は2020年の計算表をご使用ください。

 

2019年

給与等の収入金額 給与所得控除額

1,625,000円まで 650,000円

1,625,001円から1,800,000円まで  収入金額×40%

1,800,001円から3,600,000円まで 収入金額×30%+180,000円

3,600,001円から6,600,000円まで 収入金額×20%+540,000円

6,600,001円から10,000,000円まで 収入金額×10%+1,200,000円

10,000,001円以上 2,200,000円(上限)

 

2020年

給与等の収入金額 給与所得控除額

1,625,000円まで 550,000円

1,625,001円から1,800,000円まで 収入金額×40%-100,000円

1,800,001円から3,600,000円まで 収入金額×30%+80,000円

3,600,001円から6,600,000円まで 収入金額×20%+440,000円

6,600,001円から8,500,000円まで 収入金額×10%+1,100,000円

8,500,001円以上 1,950,000円(上限)

 

給与所得控除については、計算式の通り、引き下げが行われました。一方で、基礎控除は所得金額によっては引き上げが行われています。テレビや新聞等でも報道されていますが、年収850万円までは、増税も減税もされませんが、850万円を超えると所得税は増税されることになります。

次回も、2020年分年末調整の変更点について紹介をしていきます。


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コラム執筆者
川島孝一
川島孝一(カワシマコウイチ)
人事給与(ペイロール)アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問
経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
得意分野 法改正対策・助成金、労務・賃金、福利厚生、人事考課・目標管理
対応エリア 関東(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県)
所在地 港区

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