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専門家コラム

第58回 賞与における所得税の計算

先日、「すでに退職している従業員に対して賞与を支払いたい」という相談を受けました。社長曰く、「在職中に会社に貢献してくれたので、どうしても賞与を支払いたい」ということでした。
退職者に賞与を支払う場合、通常の賞与計算と異なる部分がでてきます。以前に、退職者に対する社会保険・雇用保険の考え方を取り上げましたので、今回は、所得税についてみていきたいと思います。

 

<所得税法上の賞与の定義について>

賞与とは、定期の給与とは別に支払われる給与等で、「賞与、ボーナス、夏期手当、年末手当、期末手当等の名目で支給されるものその他これらに類するもの」をいいます。なお、給与等が賞与の性質を有するかどうか明らかでない場合、次のようなものは基本的には賞与に該当すると判断されます。

(1) 純益を基準として支給されるもの
(2) あらかじめ支給額や支給基準の定めのないもの
(3) あらかじめ支給期の定めのないもの。ただし、雇用契約そのものが臨時である場合のものを除きます。
(4) 法人税法第34条第1項第2号(事前確定届出給与)に規定する給与(他に定期の給与を受けていない者に対して継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づき支給されるものを除きます。)
(5) 法人税法第34条第1項第3号に規定する業績連動給与

 

<在職者に賞与を支給した場合の所得税の取り扱い>

賞与を支給した場合の所得税の計算方法は、次の手順で行っていきます。

(1) 健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料を計算し、その合計額を賞与から控除する。
(2) 前月の課税対象額(社会保険料控除後の金額)と扶養家族数より所得税率を求める。
(3) 社会保険料控除後の金額に所得税率をかけて税額を算出する。

所得税率については「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使用します。給与計算をするときと同様に、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している場合は「甲欄」、提出していない場合は「乙欄」を使用します。
賞与の所得税率は、前月の給与額から健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料などの社会保険料を控除した課税対象額と扶養家族数に応じて決定されます。そのため、賞与の金額が一緒で、扶養家族数が同じであっても、前の月の給与が違えば、賞与から控除される所得税額は異なります。
たとえば、月々の給与が30万円と60万円の人に同額の50万円の賞与を支給したとします。前月の給与が60万円だった人の方が賞与に対する税率は高くなり、この2人の賞与の手取り額は前月の給与が少ない人の方が多くなる仕組みです。

 

<退職者に賞与を支給した場合の所得税の取り扱い>

原則として、賞与の所得税率は、前月の給与額から社会保険料を控除した金額で決定されます。しかし、すでに退職をしていると、前月の給与が支払われていないケースもあります。その場合は、以下の手順で所得税率を計算します。

(1) 健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料は、資格を喪失した日の属する月以降は不要なので、雇用保険料だけ計算し、賞与から控除する。
(2) 賞与から雇用保険料を差し引いた金額を「6」で除する。
(3) 「6」で除した金額を月額表に当てはめ、税額を算出する。

「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」ではなく、給与計算で使用する「月額表」により税額そのものを求めることに注意してください。なお、「給与所得者の扶養控除等申告書」は、退職日後は効力を失いますので、退職者に対する賞与は「乙欄」計算になります。

 

賞与に対する所得税の計算方法は、前月の給与があるかないかで対応が変わります。また、退職者に対しては「乙欄」計算になるなど特殊な取り扱いがあります。
イレギュラーな対象者に対して賞与を支払う場合は、確認をしながら業務を進めていった方がよいでしょう。


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コラム執筆者
川島孝一
川島孝一(カワシマコウイチ)
人事給与(ペイロール)アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問
経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
得意分野 法改正対策・助成金、労務・賃金、福利厚生、人事考課・目標管理
対応エリア 関東(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県)
所在地 港区

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