第45回 年末調整の留意点~その2
いよいよ平成29年の年末調整の本番の時期がせまってきました。
前回に引き続き、今回も平成29年分の年末調整業務において留意しておくべき点について、みていきたいと思います。
平成29年度税制改正により、配偶者控除と配偶者特別控除の見直しが行われました。
大きな変更点は、配偶者控除と配偶者特別控除の控除額に対する本人の収入制限が導入された点です。そのため、改正後はやや複雑な制度になっています。
この改正は、平成30年分以後の所得税について適用されますので、平成29年分の年末調整業務には直接関係はありません。
ただし、来年1月以降の給与計算を行う際は注意が必要になりますので、給与計算の担当者はあらかじめ概要を把握しておいた方が良いでしょう。
それでは、配偶者控除と配偶者特別控除の改正についてみていきましょう。
<制度の概要について>
今回の改正で変更になったのは、以下の3つの項目です。
1.配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額の改正
これまでは、給与所得者と生計を一にする配偶者で、合計所得金額の見積額が38万円(給与等の収入金額が103万円)以下の人が配偶者控除の対象でした。
しかし、平成30年からは、給与所得者の合計所得金額が1,000万円(給与所得だけであれば給与収入1,220万円)を超える場合には、配偶者控除の適用を受けることができなくなります。
また、配偶者特別控除も改正され、配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下であれば配偶者特別控除の対象になります。平成29年までは、38万円超76万円未満でしたので、こちらは対象になる配偶者の範囲が広がったことになります。
配偶者特別控除により控除される金額は、配偶者の所得金額により段階があるのはこれまでと変わりませんが、さらに給与所得者本人の所得金額によっても控除額が異なる制度に改正されました。
したがって、対象となる配偶者の範囲は広がったものの、控除される金額は少なくなったり、あるいは配偶者特別控除そのものを受けられないケースも出てきます。
2.扶養親族等の数の算定方法の変更
給与を支払う際に源泉徴収する税額は、「給与所得の源泉徴収税額表」によって計算を行います。給与を支払う対象者が扶養控除申告書を提出していて、甲欄を適用する場合には、扶養親族等の数を算定する必要があります。
これまでは、控除対象配偶者(合計所得金額の見積額が38万円以下の配偶者)であれば、扶養親族等の数を「1」としていました。しかし、平成30年1月以降の給与の支払いでは、次の条件を満たす場合に限り、扶養親族等の数を「1」として算定し、それ以外の場合は「0」にしなければなりません。
1)所得者本人の合計所得金額が900万円(給与所得だけであれば給与収入1,120万円)以下であること
2)配偶者の合計所得金額が85万円(給与所得だけであれば給与収入150万円)以下であること
したがって、1)により扶養親族数が減る方、反対に2)により扶養親族数が増える方が出てくることになります。
3.給与所得者の扶養控除等申告書等の様式変更等
平成30年より「給与所得者の配偶者特別控除申告書」が「給与所得者の配偶者控除等申告書」に変更されました。配偶者控除あるいは配偶者特別控除の適用を受けようとする給与所得者は、その年の年末調整の時までに給与等の支払者に当該申告書を提出しなければなりません。
これまで「給与所得者の保険料控除申告書」と「配偶者特別控除申告書」は兼用様式として1枚の書類になっていました。今回の改正により、平成30年の年末調整からは「給与所得者の保険料控除申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」が別々の用紙になります。
前回と今回で説明したように、平成29年の年末調整業務は給与所得控除額が変更になった以外は前年までとほぼ同じです。しかし、平成30年からは、今回紹介をしたように配偶者控除と配偶者特別控除のルールが変更になっています。
この改正により、平成30年1月以降に支払う給与計算時には扶養人数の変更が必要になります。1月以降の給与計算をスムーズにすすめるためにも、平成29年年末調整業務の際に変更の対象者を把握しておくことをおすすめします。
また、法改正の内容を従業員が知らないケースも考えられます。給与計算担当者は、従業員に周知、確認した上で、平成30年1月の給与計算業務を行うようにしましょう。
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経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
川島孝一(カワシマコウイチ) 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問
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