第29回 雇用保険料と介護保険料の免除
さまざまな企業の給与計算業務をチェックしていると、雇用保険料と介護保険料の誤徴収がたまに見受けられます。誤って徴収する金額は、1か月分であれば少額かもしれませんが、これらの誤りは発見されるまでの期間が長くなりがちです。気が付いた時には、誤りが積み重なり、結果的に大きな金額になっていることもあるようです。
それ以前の問題として、給与計算業務はたとえ一度のミスであったとしても、従業員の信頼を損なうことにつながります。担当者は正しい知識を持たなければなりません。
今回は、雇用保険料と介護保険料の徴収が不要になるケースについてみていきます。
<雇用保険料が免除になるケース>
4月1日の時点で64歳に達している労働者は、雇用保険料が免除になります。しかし、高齢者が少ない会社では、そのまま雇用保険料を徴収しているケースがあるようです。この雇用保険料の免除は、64歳の誕生日の月からではないことに注意が必要です。
なぜ誕生日の月から免除にならないのかというと、労働保険料(労災保険料と雇用保険料)の申告が「年度(4月1日~翌年3月31日まで)」で行われることになっているからです。どうも「年度の途中から免除になると、申告業務が煩雑になってしまう」というのが理由の一つのようです。
ただし、短期雇用特例被保険者や日雇労働被保険者は免除の対象にはなりませんので、64歳を超えていたとしても雇用保険料は継続して徴収してください。
それでは、雇用保険料の免除について、具体的にみていきましょう。
平成28年4月30日で満64歳になる方の場合だと、平成28年4月1日時点では満64歳に到達していないので、本年度中は雇用保険料をそのまま徴収します。この方の雇用保険料が免除になるのは、平成29年4月分からになります。
なお、4月1日生まれの方は3月31日時点で「64歳に達した」と判断されます。たとえば、平成28年4月1日生まれの方であれば、誕生日の属する平成28年度から雇用保険料は免除となります。
また、今年は雇用保険法の法改正がありました。
平成29年1月1日以降、現行は雇用保険の適用除外となっている65歳以上の雇用者についても、雇用保険の適用の対象になります。この方たちは雇用保険の被保険者にはなりますが、すでに64歳に達していますので、保険料は免除になります。
ただし、今回の法改正により、平成32年度より高年齢者の雇用保険料の免除がなくなり、64歳以上の方についても雇用保険料を徴収するようになります。
実務的にどのような対応になるのか、まだ厚生労働省から発表されていませんので、給与計算の担当者は、今後の動向について注視していく必要があります。
<介護保険料を徴収しないケース>
40歳以上になると、65歳に達するまでの間、健康保険と併せて介護保険料の徴収が開始されます。こちらは、雇用保険料と違い、40歳の誕生日の「前日」が属する月から徴収が始まり、65歳の誕生日の「前日」が属する月の「前月まで」保険料を徴収します。
前日や前月などややこしいですが、特に「1日生まれ」の方は注意が必要です。
上記の期間であっても、一定の要件に該当すると、介護保険料を徴収しなくて良い場合があります。あまり知られていない制度ですが、下記のいずれかに該当する従業員がいる会社の実務担当者は、しっかりと確認された方が良いでしょう。
1)転勤により日本国内から外国へ転居した場合
2)介護保険施設、特定施設等に入所した場合
3)入管法の規定による3か月を超える在留期間が決定等されていない場合
このいずれかに該当したとしても行政は把握することができないため、介護保険料の請求を止めるには届出をする必要があります。
年金事務所に提出する書類の名称は、「介護保険適用除外等該当・非該当届」になります。添付の書類等も必要になりますので、実際に手続きを行う際は年金事務所等に問い合わせをしてから進めた方が良いでしょう。
給与計算ソフトを使うことによって、年齢による保険料の徴収漏れや誤徴収はある程度防ぐことが可能です。
しかし、法律的な知識や法改正の情報等が必要になる場合もありますので、給与計算担当者はつねに情報収集に努めるように心がけましょう。
- 法改正対策・助成金
- 労務・賃金
- 福利厚生
- 人事考課・目標管理
経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
川島孝一(カワシマコウイチ) 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問
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所在地 | 港区 |