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第9回 離婚時の年金の分割制度

厚生労働省が発表している『平成25年 人口動態統計の年間推計』によると、平成25年中に結婚をしたカップルは
「66万3000組」となっています。一方、離婚したカップルも「23万1000組」いるそうです。
この統計でもわかるように、従業員が離婚をするというのも今や決して珍しいことではありません。会社は、離婚をした
従業員の手続き(氏名変更や住所変更等)をすることになりますが、意外に従業員から聞かれて回答に困ってしまうのが
年金のことです。
年金の複雑な計算ができる必要はありませんが、制度の概要ぐらいは知っておいた方がよいでしょう。
今回は、離婚による年金の分割について見ていきましょう。

【国民年金法の被保険者とは】
離婚による年金分割は、平成19年4月1日からスタートした合意分割制度と平成20年4月1日からスタートした3号分割制度があります。
離婚による年金分割制度の説明をする前に、少し国民年金法の被保険者を説明しておきます。

国民年金法には、第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者の3つの種別があります。
第1号被保険者とは、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者のことを指します。主に大学生や自営業者などが
「第1号被保険者」に該当します。
第2号被保険者とは、被用者年金各法の被保険者、組合員又は加入者のことを指します。主に厚生年金に加入している
サラリーマンなどが「第2号被保険者」に該当します。
第3号被保険者とは、第2号被保険者の配偶者であって主として第2号被保険者の収入により生計を維持する者のうち
20歳以上60歳未満の者のことを指します。主にサラリーマンの妻がこの「第3号被保険者」に該当します。
よく誤解があるのが、サラリーマンが「厚生年金の保険料だけが給与から徴収されているので、国民年金の被保険者ではない」と
いうものです。サラリーマンは上述のように第2号被保険者、その被扶養配偶者は第3号被保険者として国民年金にも加入しています。
サラリーマンが厚生年金の保険料を負担することにより、本人はもちろん、その配偶者も国民年金の保険料を負担したことになるのです。

話がそれましたが、合意分割及び3号分割は、第2号被保険者と第3号被保険者を対象にした制度になっています。
そのため、婚姻期間中に夫婦のいずれかが第2号被保険者になっていなければ、離婚をしたとしても年金の分割をすることは
できません。

【合意分割とは】
合意分割とは、離婚当事者の協議によって婚姻期間中の標準報酬総額の多い者(第1号改定者)が、
少ない者(第2号改定者)に対して標準報酬の分割を行う制度のことです。
この手続きを行うためには、離婚当事者間で協議をして婚姻期間中における標準報酬をどのように按分するのかを決める
必要があります。離婚当事者間で按分割合を自由に決定することができますが、第2号改定者から見て、
双方の標準報酬総額の合計の2分の1が限度になります。離婚当事者間で協議がまとまらない場合は、当事者一方の
申し立てにより家庭裁判所が按分割合を決定します。按分割合が決定された後、実際に標準報酬の改定が行われます。

合意分割手続きについて注意する点は以下の3つです。
1)原則として、離婚が成立した日の翌日から2年を経過した時は請求を行うことができません。
2)合意分割は、平成19年4月1日より前に離婚をした場合には適用されません。なお、施行日以降に離婚をした場合には、施行日前の婚姻期間を含めて、分割の対象になります。
3)合意分割の請求が行われたときは、同時に3号分割の請求があったとみなされます。したがって、3号分割の対象になる期間は3号分割に加えて、合意分割による標準報酬の分割も行われます。

【3号分割とは】
合意分割制度がスタートしてから1年後の平成20年4月1日に3号分割制度がスタートしました。条文上にも明記されましたが、『被扶養配偶者を有する厚生年金の被保険者が負担した保険料については、夫婦が共同で負担したものである』との考え方からこの制度が作られました。合意分割制度と似ている部分もありますが、相違点もあるので制度を考える上で注意が必要です。では、具体的に3号分割についてみていきましょう。

「3号分割制度」とは、平成20年5月1日以降に夫婦が離婚した場合、第3号被保険者の請求により、
『当該期間に係る厚生年金の被保険者の標準報酬の2分の1を被扶養配偶者に分割する』制度のことです。
合意分割と違う点は、合意分割は当事者間で按分割合を双方の合意の上で決定しましたが、3号分割は第2号被保険者の「合意がなくても」2分の1を分割することができます。また、標準報酬の按分割合は2分の1で固定されているため
当事者間で合意があったとしても按分割合を増減することはできません。

3号分割手続きについて注意する点は以下の2つです。
1)原則として、離婚が成立した日の翌日から2年を経過した時は請求を行うことができません。
2)平成20年4月1日以降の婚姻期間中の国民年金第3号被保険者期間における、相手方の厚生年金記録が分割の対象です。
(施行日前の厚生年金記録は分割されません。)
年金分割制度の事務手続きは、離婚のケースによって添付の書類が変わってきます。実際に改定請求をする際は、
最寄りの年金事務所に確認しながら手続きを進めていったほうが良いでしょう。

  • 法改正対策・助成金
  • 労務・賃金
  • 福利厚生
  • 人事考課・目標管理

経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。

川島孝一(カワシマコウイチ) 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問

川島孝一
対応エリア 関東(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県)
所在地 港区

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