第1回 個人主義で育った中堅社員を真のリーダーにするには-1
1.次世代リーダーとしての中堅社員の課題
今回は中堅社員をどうすれば真のリーダーに育てられるのかがテーマです。中堅社員と言うとかなり曖昧な対象になりますが、仕事の基本を覚え、各部門の中核として働き、次なる管理職候補として活躍している層がイメージとなります。年代的には、就職氷河期世代と呼ばれる世代に概ね合致すると考えています。特に就職氷河期でも後半世代(36歳~31歳 2014年3月現在)となります。
この世代によく見られる課題とは一体何でしょうか。とある研修でのことです。この会社では人材育成を促進するために中堅のリーダー層にも評価の中で5%を人材育成に重み付けするようにしています。しかし研修の中で多くの参加者が、「所詮5%なので最初から捨てています」と話し合い、共感をしていました。人を育てることについて研修内で議論しましたが、中々そこに意味や意義を感じられないようでした。
2009年の産能大の調査では、彼らに求める役割の順位が、①後輩の育成、②自業務の改善、③職場の活性化とシナリオ構築となっています。一方で中堅の現状の行動評価について、最も低いものとして、①業務の革新、②後輩の育成、③全体最適の視点となっています。逆に最も評価の高いものは、自業務の完遂がダントツの結果となっています。
概ね自業務の完遂には意識が高いものの、業務の革新、後輩の育成、全体最適など、自分の枠を超えた視点、行動ができない点に課題があると考えられます。
2.中堅社員のジレンマ
自業務の遂行を重視し革新意識や、その前提となる全体最適視点が不足している。そして後輩の育成ができない。このような事は成長段階での当たり前の壁とも捉えられます。バブル世代の管理職の壁とあまり変わらないように思われるかもしれません。ただ少し質が変わってきていると考えています。人材育成の方法が分からないという状況から、人材を育成する意味が分からないという状況への変化です。また同じく、業務の革新についてもその意識が低下していると思われます。端的に言うと、無意識の個人主義と効率主義がこの世代の課題と考えられます。
このような状況に至った背景について考えたいと思います。一つは就職氷河期の中で必死に入った会社で、入社時より厳しい成果主義の下で育ってきたということです。リストラのニュースを横目に見ながら、自分だけはと、まるで学校の偏差値のように目標管理の達成率にこだわって育ってきた世代と言えます。また彼らを評してロストジェネレーションと呼ぶ事もあります。会社と自分が一緒に成長し、処遇が徐々に良くなるといった価値観が信じられなくなった世代でもあります。自分は自分で守る。上司からの評価以上に転職価値、エンプロイアビリティを大切にしてきた世代でもあります。このような環境で育った中堅社員は、無意識の個人主義と効率主義に染まった状態となっています。ポイントは無意識と言うことです。当の中堅社員は正しく、当たり前の行動をしていると言う認識ですので、改善するには中々骨が折れることとなります。
世代分析は各社のおかれた環境に大きく違ってくると思います。セミナーでは皆さんの会社の状況について分析しながら議論が出来ればと思います。
3.中堅社員のマインドセット変革①
~つながりと経験でリーダーへのエンジンを獲得する~
こんな中堅社員を真のリーダーに向けて育成していくにはどうすればいいのか。大きくは2つの取り組みがあります。一つはリーダーに向けてのエンジンを搭載すること。もう一つは無意識の本当の自分に気づき、それをセルフマネジメントする力を養うことです。マネジャーを目指す入り口に立ち、まずは自分をマネジメントする力を身に付けるということです。能力向上と言うよりもマインドセットを変革し、リーダーとしての人間観、仕事観を醸成することを目的として取り組みます。成長と言うよりも成熟を促すというイメージかもしれません。
セミナーではいくつかの取り組みが共有できればと思います。一つはとことん部下(後輩)に向き合う経験をさせることです。OJTや人材育成のスキルアップをするのではなく、人に向き合い、成長を共有する喜びを体感させることが彼らの人間観に変化をもたらします。また、短期の数値ではかれる成果から解き放ち、マインドセットを揺さぶるような経験をさせることも効果的です。またこの世代を横で集め、絆を深めながら協働を通じ未来について語る機会を作ることも重要です。このようなプロセスを通じ、彼らの中で固まっていた固定観念と心の緊張が緩み、彼らの力や思いが解き放たれてくるのです。
4.中堅社員のマインドセット変革②
~深い内省を通じ自分の中のブレーキを取り除く~
新たなつながりや経験を通じ、協働すること、人を育てること、そして周囲を活かすことで、自分が活かされることを学んでいく事がマインドセット改革を行なう一つの道です。一方でもう一つの道があります。それは深く自分を掘り下げ、無意識レベルの自分に気付く機会を提供してくことです。
これはどちらかの道を選びましょうということではなく、学習、行動変容の両輪となります。詳細はセミナー当日、また後段に続く小森谷の論文をご参照ください。
以上
- モチベーション・組織活性化
- マネジメント
- コーチング・ファシリテーション
- チームビルディング
- コミュニケーション
アサヒビール株式会社、同社関連会社でのコンサルティング部門で活躍後独立。ジェイフィール設立より参画。
リフレクションラウンドテーブルのカリキュラム開発、展開や診断ツールの開発などを担当。多摩大学大学院博士課程前期修了、同大学・知識リーダーシップ総合研究客員主任研究員。雑誌掲載、寄稿、学会発表など多数。
片岡 裕司(カタオカ ユウジ) 株式会社ジェイフィール コンサルタント
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