佐藤将 連載コラム「ニッポンが世界を元気にする」④
4.なにげにガンバっているご褒美(ごほうび)に
『最近、褒めてあげたことないですね・・』
日本企業のマネージャさんたちの声。「いやー時間が無くて」、「次から次にトラブルが起きるから」、「目先のことに追われて」、「一応、毎月チームミーティングをしてますが」、「指示だけ出して」、「フォロースルーはできてなくて」、「え、褒めたこと?・・ないですね」、「逆に叱ってばかりで・・」。
『ねぎらいの言葉ひとつでも、いいんです』
日本企業の若いスタッフさんたちの声。「え、褒めてもらったこと?・・ないですね」、「別に褒めてもらわなくてもいいんですけど」、「自分、がんばっているとは思わないし」、「ただ他に現場でがんばっている方々に、もう少し上は感謝の気持ちがあっても」、「まわり、みんな頑張っているので」、「"ねぎらいの言葉"一つでもうれしいかも・・」。
『最近、周りの人に、"ねぎらいの言葉"をかけたこと、ありますか?』
なにげに頑張っている人に、
なぜかいつも忙しい人に、
現場で汗かいて働いている人に、
大事な仕事で苦労している人に、
最近、昇進した人に。
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20世紀は、「近代合理主義」が花咲いた時代であった。
経済的、合理的、効率的であることを追求することこそ、近代的であり、理知的であり、洗練された文明国市民の使命である。それが、自分たち西側の資本主義社会のよって立つ精神であり、「運命はあらかじめ決められている」という思想の中で、「神様のご褒美」を求める人間を救済する美徳であった。
それが、20世紀の資本主義をドライブさせたことは間違いない。
日本においても、昭和の敗戦後、「近代合理主義」の精神は、多くの知識人によって奨励され、経済効率最優先路線の中の一つの絶対基準とされていった。
果たせるかな、「近代合理主義」の過度の追求は、いつの間にか、人間をリソースやキャピタルといった物質(マテリアル)へと貶(おとし)め、細分化・標準化されたシステムの中で、神様のご褒美(マネー)を求めて働くビジネス・マシーン(歯車、アンドロイド)と化していった。
人間を人間疎外(ニヒリズム)から救済しようとした思想が、人間を疎外するという皮肉。
「褒めたり、ねぎらったり」という行為が、業績アップに貢献するというサイエンスはない。それを実証するデータもシステムもない。もしかしたら、そんな事をしている暇があったら、仕事に集中して生産性をアップした方がよいのかもしれない。
けど、21世紀も、それでいいのでしょうか?
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かつて、海外で働いているとき、若い世代の同僚が持つ、繊細な気遣いに驚かされた。誰かが、ちょっとでも気を落としていると、「ハーイ」、「オーライ?」と、とても細やかな表情で、声を掛け合っていた。時に、ちょっとした態度や仕草で、声に出さずとも、ケアしあっていた。
振り返れば、昔、海外日系企業の方達とお仕事をさせていただいた時も、そんな細やかな気遣いできる方々で溢れていた。
今日、急速にグローバル化する日本だけど、そうしたヒューマンな部分を、どれだけ持てているだろう?
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先月の事。徹夜明けで疲れ切った同僚が、一仕事を追え、残業をしていると、別のチームの若いスタッフが、何気なくお菓子の差し入れをしに来た。
なぜだろう、今のニッポンの若者たちには、昔の(今の70歳以上)の日本人が持っていた「気遣い」や「繊細さ」、人間的な「潤い感(ウエット感)」がある。それを表現するのが上手な子もいれば、そうでない子もいる。けど、みんな、お互いへのケアができ、無言(サイレンス)で伝えるコミュニケーション能力も備えている。それは、海外で筆者が見た若者達と通ずる。
もしかしたら、21世紀の今日、「合理主義」と「ヒューマニズム」という本来矛盾する概念を、東西の何か新しい概念で統合することができたら、新しい時代のルネッサンスはもっと加速化されるのかもしれない。
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ご褒美(ほうび)は、日本語で、「ほめて、うつくしい」と書く。
ほめて、与えること(Giving)。ほめたたえること。
人間が、人間に対して行うもの。
人間だけが、お互いの運勢を、今日より明日、少しよくすることができる。
世界中のみんな(人間)に、
"Congratulation" -
- モチベーション・組織活性化
- グローバル
- リーダーシップ
- マネジメント
- チームビルディング
海外最前線でのコンサルティングを数多く手掛けてきたのち、2013年3月にジェイフィールに参加。これまでのキャリアの半分以上が海外。
グローバル環境下でのチェンジマネジメントや組織再編、現地幹部マネジメントや人材育成などを手掛けてきた。現在は、「日本と世界の若者を元気に」の実現のため、新たな経営の"形"と時代の"生き方"をともに考え、変えていける人・場づくりをリード。
佐藤 将(サトウ ショウ) コンサルタント
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所在地 | 渋谷区 |