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パーパスドリブンとは?日本企業の取り組み事例6選を紹介

パーパスドリブンとは?日本企業の取り組み事例6選を紹介


現在、利益を追求する企業の活動が環境や社会に及ぼす負の側面が問題視されるようになり、企業経営は、それらへの配慮が必要となっています。
つまり、自社の利益だけでなく社会的な利益にかなった企業活動が求められています。
上記活動を行っていく上で知っておくべき概念が「パーパスドリブン」です。

この記事では、パーパスドリブンの重要性と、日本企業の取り組み事例についてご紹介します。


―パーパスドリブンとは

パーパスドリブン(purpose driven)とは、直訳すると「目的(や意図)に駆動された」という意味があります。企業経営においては「パーパスを起点とした」課題解決の考え方であると定義できます。

企業経営における「パーパス」とは、自社の社会的な存在意義を踏まえて理念を明確にすることと、その概念を言語化して端的な言葉として表現したものを指します。

顧客に自社のパーパスを伝えるためには、サービスや商品に反映することが重要です。
サービスを生み出す過程でのさまざまな課題をパーパスドリブンで解決することで、企業とステークホルダーと社会が一体となり、価値のある持続的な事業を展開できるのです。


パーパスドリブンが注目される理由・重要性

「パーパスドリブン」は、米国財界ロビー団体「ビジネス・ラウンドテーブル」による宣言がきっかけで知られるようになりました。この宣言は、株主資本主義からステークホルダー資本主義への転換を示唆したものです。

それ以降、日本では以下の問題が発生しました。

●VUCA時代
●価値観の多様化
●環境への貢献や持続性を求める社会(SDGs)
●ミレニアル世代以降の消費傾向

これらが原因で、既存のビジネスモデルからの転換を求められています。
また、現代では従業員の帰属意識が薄れたことで、離職率が高くなりやすく、企業組織のマネジメントにおいては以下の内容が重要視されています。

●企業内の一体感の醸成
●企業内外ともに利益もたらす
●これによって経営を持続可能なものとする

その結果として、パーパスドリブンが注目されています。


―パーパスドリブンの4つの要素

パーパスドリブンの考え方には、4つの要素があります。
経営陣の独りよがりな利益追求があっては、パーパスドリブンは成り立ちません。顧客はもとより、株主・従業員、企業を取り巻く社会にとって価値のある考え方が重要です。
ここでは、パーパスドリブンの考え方について解説します。

(1)社会的視点
パーパス以前の経営理念に社会的視点はなく、経営に必ずしも求められるものではありませんでした。顧客へのサービス、従業員の幸福などのような範囲を対象とすることが一般的でした。

パーパスドリブンでは、自社の強みや目的を考える際に社会的な視点を持つことが必要です。
社会の利益に合致し、社会に何をもたらすかを明確にすることが重要です。

(2)パーパスの共有
トップやマネジメント層だけが経営の意義(パーパス)や理念を確認するのではなく、すべての従業員・株主・顧客と共有することが重要です。

組織とステークホルダーにパーパスを共有し、浸透させることで、

●従業員が日々の業務課題に対して個々に判断できるようになる
●株主が企業の方針に賛同しやすくなる

というような効果が得られます。

(3)ステークホルダーからの共感
ステークホルダーの代表的な立場は、顧客・従業員・取引先・株主です。パーパスドリブンの経営においては、これらの立場の人々から共感されることが必須といってよいでしょう。

企業活動に社会的な意義があり、ステークホルダーが納得したり希望が持てる状態を作り出すことで、共感を得ることが重要です。

(4)収益性との一致
社会貢献は、従来は利益度外視でもよく、むしろ、そういうもののように捉えられていました。
宣伝や広報の一環として社会活動を行うというような、パフォーマンスに近いものでした。
しかしそれでは、業績が悪化した場合には、社会貢献活動を縮小することになりかねません。

企業が社会性を維持しながら経営を持続可能にすることが重要です。そのためには、通常の企業活動そのものが社会的に評価され、価値が高まり収益が上がることが必要です。


―日本企業の取り組み事例6選

パーパスドリブンは海外から入ってきた概念で、海外の世界的企業の事例はよく知られています。
しかし、日本企業にも採用される動きが広がり、実行して成果を上げている事例があります。
ここでは、パーパスドリブンの成功事例として知られているものについてご紹介しましょう。

事例(1) ライオン株式会社
ライオンのパーパスは「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する (ReDesign)」です。
このパーパスを起点とした中長期経営計画「Vision2030」を策定しました。
創業以来の取り組みの「習慣づくり」を改めて確認する意味合いのパーパスです。

習慣づくりとは、具体的には「歯みがき習慣の定着」があります。行政や医学会、学校などと連携して歯みがき習慣を根付かせる活動を実行した結果、1日2回以上歯みがきをする人が大幅に増え、小学生のむし歯率が大幅に低下した成功例があります。

事例(2) 花王株式会社
花王のパーパス「豊かな共生世界の実現」です。このパーパスを起点とした中期経営計画「K25 Vision」「未来のいのちを守る」を策定しました。

「環境問題」「高齢化」「パンデミック」「多様化の影響」など、自社が重視する社会課題を明確に定義したうえで、地球環境や人の命を守る価値のある活動として「何ひとつ、無駄にさせない。」など5つの約束を表明しました。

花王が展開する各種のブランドにはブランドパーパスを掲げ、それぞれの製品・サービスがSDGsに貢献することをアピールしています。
顧客は、自らが手にする製品のブランドコンセプトから、その目的をうかがい知ることが可能です。

事例(3) キリンホールディングス株式会社
キリンのパーパスは「社会課題の解決に取り組むことで社会と共に成長する」です。 このパーパスを起点とした長期経営構想「KV2027」に取り組む指針としての「CSVパーパス」を策定しました。(CSV:Creating Shared Value)

「健康」「コミュニティ」「環境」の3つのパーパスを策定し、酒類メーカーの責任として、アルコールの有害摂取の根絶に向けた取り組みを実行することを表明しています。

事例(4) マツダ株式会社
マツダは、パーパス・プロミス・バリューの3つを企業理念として掲げています。
パーパスは「前向きに今日を生きる人の輪を広げる」で、このパーパスを起点とした長期経営計画「2030 VISION」を策定しました。

2030 VISIONは「"走る喜び"で移動体験の感動を量産するクルマ好きの会社になる。」として、カーボンニュートラルや安全・安心・自由な移動が叶う社会をめざしています。

「走る歓び」から顧客の「生きる歓び」へ。歓びにあふれた社会・世界・未来を作る取り組みに共感するすべての人々に寄り添う姿勢を明確にしました。

事例(5) 株式会社LIFULL
LIFULLは、企業理念「あらゆるLIFEを、FULLに。」をもとに具体化したブランドパーパスを策定しました。

「まだ手付かずの問題でも、視点を変える発想で豊かさに変わっていくはず。そしてあらゆる人が、当たり前に無限の可能性の中から自分の生きたいLIFEを実現できる社会へ。」
このパーパスを起点として、コンセプト「しなきゃ、なんてない。」を設定。既成概念に縛られない自分らしい生き方を実現するためのサービスを展開しています。

事例(6) タカラベルモント株式会社
タカラベルモントのパーパスは「美しい人生を、かなえよう。」です。
このパーパスを起点に5つの行動指針「タカラベルモント ウェイ」を策定しました。

1.美と健康の本質・可能性の追求
2.「らしさ」を大切に
3.変化や失敗を恐れずチャレンジ
4.オープンマインドと愛情を持って仕事に向き合い続ける
5.知識・技術を惜しみなく提供して顧客の課題を解決し共に成長すること

パーパスが示す在り方を実現するために、具体的な取り組みとして行動指針を定めて実行することが重要です。
このように、自社に関係するあらゆる立場の人が人間として共感する言葉を用いることが、パーパスの浸透に大きく寄与するでしょう。


―まとめ

日本企業の取り組み事例を挙げて、組織のマネジメントに必要なパーパスドリブンの考え方をご紹介しました。
パーパスドリブンに求められる要素は、

1.社会的視点
2.パーパスの共有
3.ステークホルダーからの共感
4.収益性との一致

が挙げられます。
これらが満足できるものであれば、企業は社会における自社のユニークな価値を、徹底的に追求して持続的に成長できるでしょう。
日本企業の取り組みを見ても、価値へのこだわりがパーパスや行動指針に現れています。


※本コラムは村上が、タナベコンサルティングの長期ビジョン・中期経営計画策定の情報サイトにて連載している記事を転載したものです。

【コンサルタント紹介】
株式会社タナベコンサルティング
取締役 ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
ストラテジー&ドメイン(東京)担当
村上 幸一

ベンチャーキャピタルにおいて投資先企業の戦略立案、マーケティング、フィージビリティ・スタディなど多角的な業務を経験後、当社に入社。豊富な経験をもとに、マーケティングを軸とした経営戦略の立案、ビジネスモデルの再設計、組織風土改革など、攻守のバランスを重視したコンサルティングを数多く手掛けている。高収益を誇る優秀企業の事例をもとにクライアントを指導し、絶大な信頼を得ている。中小企業診断士。

主な実績
・ライフスタイルメーカーの経営戦略構築支援(経常8%超の高収益体質へ変革、純資産比率は一桁から40%台へ向上)
・専門商社の成長戦略構築(増収増益基調の成長を実現し、同分野No.1ポジションを確立)
・教育系中小企業の経営基盤強化支援(売上7億から100億へと成長させ、東証一部上場へ)
・東証一部上場の業界最大手エンターテイメント流通企業の中期経営計画策定
・東証一部上場の業界最大手戸建分譲住宅企業の中期経営計画策定
・創業160年超の老舗中堅食品卸売業の中期経営計画策定・実行支援
・創業150年の老舗中堅酒類卸売中心のコングロマリット企業の中期経営計画策定・経営改革支援
・創業140年の老舗建設会社の経営改革支援

  • 経営戦略・経営管理
  • モチベーション・組織活性化
  • キャリア開発
  • ロジカルシンキング・課題解決
  • リスクマネジメント・情報管理

VUCAの時代に挑む成長戦略の立案。
長期ビジョン構築~中期経営計画策定まで企業の実情に即したコンサルティングで成長と変革をサポートします。

理念を実装させるパーパス経営の確立から、成長戦略をベースとした長期ビジョン、中期経営計画の策定、実行具体策の実装、グローバル戦略や新規事業開発などのサステナブル経営に必要不可欠なコンサルティングを提供。

タナベコンサルティング ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部 コンサルタント(タナベコンサルティング ストラテジードメインコンサルティングジギョウブ コンサルタント) コンサルタント

タナベコンサルティング ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部 コンサルタント
対応エリア 全国
所在地 千代田区

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