マイクロマネジメントから脱却するヒント
今回は「マイクロマネジメントの弊害」について
私自身の実例を元に、一緒に考えていきたいと思います。
マイクロマネジメントとは・・・
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上司が部下に対し、細かく管理してしまう
「過干渉」のこと。仕事の進め方、メールの
書き方など詳細に指示したり、業務進捗を
逐一報告させるといった傾向がある。
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■マイクロマネジメントでは部下が育たない
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マイクロマネジメントをしている本人は
そのことに無自覚であったり、むしろ自分は
部下の指導をしっかりしていると信じている
傾向にあると言われています。
マイクロマネジメントをする管理職の元で
仕事をする人は、判断や決断をする機会を
取り上げられているのも同然だと言えます。
つまりマイクロマネジメントには
【部下が育たない】という弊害が
常にあるということに他なりません。
また、現代は、VUCA(ブーカ)時代(※)
と言われています。
※VUCAとは、
V(Volatility:変動性)
U(Uncertainty:不確実性)
C(Complexity:複雑性)
A(Ambiguity:曖昧性)
これら4つの単語の頭文字をとった造語で、
「先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態」
を意味します。
さらに知識労働時代である以上、
多様な意見を融合して、
これまでにない発想で価値を生み出すことが
求められているかと思います。
だからこそ、ダイバーシティ&インクルージョンの
推進を企業課題として捉えている組織が
多いかと思うのですが、その弊害となる
マイクロマネジメントが未だ残る組織では
早急な脱却が必要であるかと思います。
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■部下に仕事を任せるのが不安?
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管理職などマネジメントする立場にあれば、
部下育成は最も重要な取り組みの1つです。
「部下が思うように動いてくれない」
「安心して仕事を任せることができない」
「部下のミスは自分の責任になるから、
細かく指示を出すのは仕方ないのでは」
こういった考えを持っている方も
少なくないかもしれませんが、
チームで仕事をして、最大のパフォーマンスを
発揮していくためにも、
「本当にその仕事を自分がやるべきかどうか?」
ということは、管理職は常に自分自身に
問いかけて欲しいと私は思っています。
そんな私自身も、管理職になりたての頃は
「自分がもう1人いればいいのに」
と思っていたような、マイクロマネジメントの
典型例のような状態でした。
全て自分が把握していないと気が済まず、
細かく指示を出して、部下を監視するように
いつも殺気立ってマネジメントをしていたものです。
部下全員に背を向けられてから
ようやく気づき、反省と試行錯誤を通して
少しずつ部下一人一人の力を引き出して
チーム成果を出せるようになってきたのですが、
さらに大きく意識が転換する出来事がありました。
それが、
「相手は必ずこの仕事をやり遂げると心から信じる」
ということでした。
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■実例:部下を信頼できるようになったきっかけ
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私は、一時的にある2つの部を掛け持つ
部長の立場にありました。
なぜかミスがとても多い部で、任された
当初は正直「参ったなあ」と思っていました。
急遽部下が倍以上の人数になり、毎日毎日
私の決裁印をもらうために
長い列をなしていました。
部下それぞれの業務内容は、自分自身の
専門外で、経験もなかったため、
1つ1つの業務の内容を理解していたとは
言えませんでした。
あまりの忙しさに対応しきれなくなったことが
きっかけではあったのですが、もう限界だと
思った時、部下にこんなふうに伝えました。
「わかりました。あなたの話し振りからも
きっとこの案件は大丈夫だと思います。
信頼しているので、決裁を通します。」
その部下は、ノーミスで案件を実行したことが
なかったのですが、この時はミスなく
実行して成果を上げてくれたのです。
その後、部下に理由を聞いたところ
「細木さんが信頼していると思ったら
それに応えなければと思ったんです」
と言ってくださったのです。
私はその言葉に
「部下の自律性を育てるためには
何よりも信頼が不可欠なのだ」
と気づかせてもらったのでした。
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■組織のMMVから自分の判断軸を持ち、
周囲と共有するということ
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部下は、続けてこう言っていました。
「今までは、どんなに一生懸命考えても
重箱の隅をつつくみたいに細かくチェックされて
ダメ出しをくらっていました」
「どうせ突き返されるし、だからと言って
案件が進められないと困るから、
そのうち“どうしたら上司を騙せるか”
という気持ちばかりになっていたんですよ」
それから、私はさらに信頼して任せることの
大切さを学ばせてもらい、最終的には
一人一人がノーミスで案件を実行して
大きな成果を出せるほど成長していきました。
もちろん、私も業務内容が分からなかったものの
自分なりに理解するよう努力し、その上で、
「これがもし失敗したとしたら、
自分の立場でフォローできるか?」
という判断基準を持って、部下から情報を
引き出すようにしていました。
失敗すれば、お客様にご迷惑をかけてしまうかも
しれませんが、自分がフォローすることで
巻き返しができるのであれば、失敗を通して
「このままではいけない」と本人が真剣に
全力で成長することにつなげていくことが
最終的に全方位的に良い成果をもたらすと
考えていました。
*
このような経験から、マネジメントをする上で、
自分の判断軸を持ち、それを周囲が理解し、
納得して日頃の行動に反映できるくらいまでに
共有することが重要だと思っています。
つまり、組織のミッション・ビジョン・バリュー
(MMV)を元に判断軸を決めれば、同じ方向を
向いて、それぞれの業務に邁進できることに
つながると私は確信しています。
ぜひ、人材育成に直接携わっている人事部の方や
管理職の方には、マイクロマネジメントに
陥っていないかを今一度チェックしていただきながら、
真に社員一人一人の成長につながる施策を
検討・実行いただきたいと願っています。
- 経営戦略・経営管理
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◆技術系企業D&I突破口となる次世代リーダー・女性管理職を育成
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまでのべ5,000人以上の技術系企業のリーダー・管理職育成に携わる。専門は技術系企業に特化したD&I推進コンサルティング。
細木聡子(ホソキアキコ) 株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士
対応エリア | 全国 |
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所在地 | 千代田区 |
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