技術系職場によくあるアンコンシャスバイアス

働く女性の中には、ライフイベントである「出産」「育児」によってそれまで築き上げた
キャリアが分断されてしまうのではないか、という不安を抱えている方が少なくありません。
実際に、職場で育児中の女性社員がルーティンワークや負担の少ない業務を
請け負っている様子などを目の当たりにしてしまうと、そう思うのも仕方のないことかもしれません。
これは、主に男性目線で組織運営されている技術系会社で起こりうることではないかと
私は思っています。
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■技術系職場によくあるアンコンシャスバイアス
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現在、女性活躍推進プロジェクトやダイバーシティ経営コンサルティングなどで
関わらせていただいている企業様は技術系企業に特化していることもあり、例えば、
「育児中の女性社員は大変だから、軽い仕事を任せた方が本人のためだ」
といった“アンコンシャスバイアス”を持っている
男性管理職の方も中にはいらっしゃいます。
もちろん本人は全く悪気なく、女性部下のことを第一に考え辿り着いた結論でもあります。
私自身、入社当初は女性のライフイベントを迎えるにあたって同じような悩みを抱えていたので
周囲の先輩に相談したことがありました。
ところが、返ってきた答えが
「大丈夫だよ、出産育児の期間は、一旦プライベートを
優先するというふうに頭を切り替えていいんだよ」
こう言われて、そうなんですねと頷きながらも
「私は仕事をしたいんだけどなあ・・」
とモヤモヤした気持ちが残った思い出があります。
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■自己肯定感の低さゆえの「不安と恐怖」
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あれから何十年と経った今、世の中は少子高齢化で労働力人口が減少し、
先が見えづらい時代となって私が当時言われたようなことを言う人は少なくなったかと思います。
しかし、男性優位の視点で運用されている、特に技術系職場においては、
「育児中の女性は大変だから、無理しないでいい」
と、ごく自然に思っていたり、それが女性社員も望んでいると信じて疑わない
上位役職者がまだおられる可能性があるかと思います。
その一方で、私が感じていることの1つに、女性に多く見られる“自己肯定感の低さ”が
周囲の男性上司に「今はとても女性部下に無理させられない!」
という判断をせざるを得ない状況を作り出しているのではないかということがあります。
例えば、今年スタートした技術系職場の女性活躍推進プロジェクトにおいて、
約60名の女性社員ひとりひとりと個別面談を実施した結果、
それぞれやる気に満ち溢れていて、すばらしい仕事ぶりであるにも関わらず、
「自信がないのです」
「褒められても素直に受け止められません」
「できると言われて任された仕事でも、
完璧にできる確信がないから不安で仕方ないです」
「達成できるか分からない仕事の目標を立てること自体が恐怖で・・」
という気持ちをほぼ全員が抱えていた実態が明らかになりました。
ちなみに、この女性活躍推進プロジェクトを依頼してくださった
男性人事部長の方からは以下のように言われていました。
「うちの女性社員はビジョンを描けなくて
いまいちやる気が見られないんですよ」
自信がなく、不安に押しつぶされそうな気持ちでは
前向きな表現や態度を取ることは到底できない女性社員と、
それを「やる気なく、目標設定もままならない」と見えたままを受け取らざるを得ない
男性上司との間には、思考のズレが起きてしまい、結果として
アンコンシャスバイアスを引き起こしてしまっているのではないかと思うのです。
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■不安と恐怖に打ち勝つために~キャリアビジョンを描く
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女性社員が不安と恐怖に苛まれたまま
「任せてください、私がやります!」とは到底言えるものではありません。
では、この状況をどう打開すればいいのでしょうか?
私の経験から効果的な方法の1つとして今回ご紹介したいのは
●将来のキャリアビジョンを描いてみる
ということから始めることです。
実際に思い描いたことができるかどうかはまず横に置いておくのがポイントです。
今の環境の中で、最も理想的な働く未来を思いっきり描いてみることから始めてみては
いかがでしょうか。
例えば・・
・子育てと仕事を両立しながら、プロジェクトのリーダーになる
・スキマ時間を活用して難関資格試験にチャレンジする
・他部署の女性社員と情報交換できる交流会を立ち上げたい
・スキルを活かしてチーム貢献し、いずれ希望の部署から声をかけてもらう・・etc.
あえて制限を外して、自分のキャリアビジョンを考えることで
自ずとモチベーションが上がってきますし、ワクワクしながら
「じゃあ今の私にできることは何だろう?」
と無理なく前向きな思考に切り替わることで、
具体的な行動をイメージしやすくなります。
人事担当者や女性部下を持つ管理職の方は、本人のキャリアビジョンを描くサポートや、
そのきっかけとなる機会の提供と同時に、“会社が求める期待”や“チームの目標・ゴール”
といったものを併せて伝えることで本人の成長とチーム成果の両方を
引き出すことにつながるようになるかと思います。
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■上司は、部下のキャリアコンサルタント
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私は大企業の管理職時代にこんなことを言われました。
「上司は、部下のキャリアコンサルタントであるべきだ」
この言葉には以下のような意味が込められており、
今も私にとっては重要な指針の1つとなっています。
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上司はチームメンバーに会社の明るい未来を見せて、
会社が求めている成果に合致するキャリアビジョンを
描けるように部下をサポートし、最終的には部下自らが
仕事を見出して、自力で成長しつづけるよう育成する。
これは人事だけの仕事ではなく、上司の仕事でもある。
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出産・育児によってキャリアが分断されてしまうような
考え方や働き方のままでは、その会社自体の存続が
難しい世の中になっているのは言うまでもありません。
人事担当者や上司の立場にある方が、
キャリアコンサルタントという位置付けで
社員ひとりひとりのキャリアビジョンを引き出し、
会社が求める成果とうまく合致させながら
成長促進させることが、与えられた重要な役割として
求められているのではないかと私は考えています。
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■“理想の未来を描く”のパワーは絶大!
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かくいう私も女性であり、更年期によるホルモンバランスの
乱れなどもあいまって、今回ご紹介した女性社員の方のように
どうしようもなく不安で仕方ない気持ちになることもしばしばです。
つい先日も、不安に陥りそうになったのですが
社員と一緒にブレストしながら理想の状態を描いていたら、
「これはかなり役立つノウハウになりそう」
「弊社のファンが増えちゃうかも!?」
と大いに盛り上がり、不安はどこかに吹っ飛んでしまって、
今は実行したくてソワソワしています・・!
“理想の未来を描く”のパワーは私にとっても絶大です。
このコラムを書いたプロフェッショナル
細木聡子(ホソキアキコ)
株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまで延べ7,700人以上の技術系企業の女性管理職育成に携わる。技術系企業のジェンダーギャップ解消を突破口としたダイバーシティ経営推進を支援。

細木聡子(ホソキアキコ)
株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまで延べ7,700人以上の技術系企業の女性管理職育成に携わる。技術系企業のジェンダーギャップ解消を突破口としたダイバーシティ経営推進を支援。
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまで延べ7,700人以上の技術系企業の女性管理職育成に携わる。技術系企業のジェンダーギャップ解消を突破口としたダイバーシティ経営推進を支援。
得意分野 | 経営戦略・経営管理、モチベーション・組織活性化、キャリア開発、リーダーシップ、マネジメント |
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対応エリア | 全国 |
所在地 | 千代田区 |
このプロフェッショナルの関連情報

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