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伸びる人の条件〜不甲斐ない自分に怒れたらチャンス〜

幸いにも人材育成を専門にした仕事で13,000人の方と関わらせていただき、OJT担当としては約50名の方と苦楽を共にさせていただきました。

そんな私が最近、多くの人材育成担当者や経営幹部の方と話す話題の一つに、『結局、伸びる人の条件とは?』というものがあります。

この問いに1年くらい向き合いました。OJTで使用したノートやコーチングのログを分析し直し、お客様である人事の方や、実際に“化ける”という表現がふさわしいほど成長を遂げた元部下達と議論をしました。決してアカデミックな根拠は無いのですが、実務経験者として伸びる人を育てるためのヒントになれば嬉しいと思い、記載させていただきます。

目次

  1. 伸びる人とは、不甲斐ない自分を具体的に怒れる人
  2. 伸びる人の3条件
  3. 伸び悩む3大パターン
  4. 育成担当者が伸びる人に向き合う上で心得ること

伸びる人とは、不甲斐ない自分を具体的に怒れる人

まず【伸びる】という表現の定義は、あるメンバーが1年の間に「自分も周囲もこんなに成果を出せるとは思っていなかった」という状態に変容することを表しています。

「最初の頃と比べて化けたな」
「あの人は一皮むけたな」
「あんなに活躍するとは思わなかったな」

こうした評判が立つ人材のこととイメージしてください。

単刀直入に結論から申しますと、伸びる人とは不甲斐ない自分を具体的に怒れる人だということがわかりました。

パッと見、この種の人たちは以下のような特徴があります。

1.納得しないことに対して痛いほど本質を突く
2.動きが止まらない(何かしら自分の意志で実行していてる)
3.怒っていながらも感情をコントロールしていて冷静さがある
4.最初はおとなしく見られ、凄さが周囲に伝わっていない

私が見てきた伸びる人の初速というのは、だいたいスロースターターです。むしろ最初から持論をバリバリ展開し続けて圧倒的に信頼を勝ち得ている新入社員なんて見たことがないです。(もしそんな人ばかりを採用できるなら人材育成の必要性は少ないでしょう。)

では、最初はおとなしい印象だったのに化けた人にはどんな条件があったのか。実際にまとめてみました。

伸びる人の3条件
 

1.具体的に負けた経験を持っていて、負けを認めている
2.自分のマインドの未熟さに怒りを向けている
3.師匠が存在していて相談している

1.具体的に負けた経験を持っていて、負けを認めている
【伸びる人】
自分史上最大の負けについて具体的なエピソードで語ることができます。また、そうしたエピソードはたいてい明るくコミカルで、さっぱりとした印象を与えます。重要な点は何かに言い訳をするのではなく、「自分の何が負けだったのか」を認めていることです。

【伸び悩む人】
負けたという経験をあまり話しません。もちろん「失敗談を教えて下さい」と聞けば答えます。ただ、どこかストーリーが不明瞭だったり、結論「自分は悪くなかった」という印象を与えがちです。

2.自分のマインドの未熟さに怒りを向けている
【伸びる人】
伸びる人はたいてい怒りを顕にします。しかし、決して他者や物にあたることはなく、自分の中に向けられています。周囲から見ると「強烈な悔しさ」なのですが、本人の中では怒りと冷静さが入り混じり、「なぜ自分はあのときにその判断をしたんだ」と追求する態度が見られます。

【伸び悩む人】
あまり怒りの感情が見られません。「悲しい」だったり「恥ずかしい」だったり、時には「無」の境地であるケースもあります。また失敗に対しての原因分析が甘く、論理が飛躍して「結局こうなる運命だった」とか、「条件が違えば自分はできるんだ」と結論づける傾向が見られることもあります。

3.師匠が存在していて相談している
【伸びる人】
伸びる人は自分から師匠を持っています。自分から相談して技術面でのトレーニングをしてもらったり、とりとめのない話を聞いてもらったりしています。仲良しクラブや愚痴の飲み会とは違う点は、師匠と【ネクストアクション】を握っている点です。

【伸び悩む人】
問題を自己流で解決する傾向があります。相談すれば済むような問題も、自分で一から本やネット記事を調べて対処します。その姿勢自体は称賛に値する素晴らしい探求なのですが、『仕事には相手の都合がある』ことを考慮せず、漫然と自分の納得感の醸成のために時間を費やす傾向が見られます。

伸び悩む3大パターン

一方で、伸び悩む人には現状・過去・未来について口ぐせが見られます。

1.「いろいろダメ」が口ぐせ:現状の問題をぼかすパターン
2.「もともとダメ」が口ぐせ:過去のセルフイメージが低いパターン
3.「どうせダメ」が口ぐせ:未来が傷つかないよう保身に走るパターン

1.いろいろダメ
課題の原因を精査せずに「結局、いろいろなことがダメなんです」と結論づけるケースです。課題の本質が明らかにできないため、同じような事象を繰り返し、成長が停滞しているように見えてしまいます。

2.もともとダメ
セルフイメージが極端に低い人の口ぐせです。自虐的に笑いを誘っている目的があるかもしれませんが、つまるところ「いろいろダメ」と似ていて、課題の原因がわからないままということがあります。したがって成長が停滞しているように見えてしまいます。

3.どうせダメ
セルフイメージが高い人でも見られる口ぐせです。周囲からの自分への期待値を敢えて低く設定することで傷つかないようにする【保身】な態度であることがあります。したがって成長が停滞しているように見えてしまいます。また、プライドが高い傾向があり、成果の事実からそのプライドが傷つけられると【被害者意識】や【他罰的】に他者を攻撃することもあります。

育成担当者が伸びる人に向き合う上で心得ること

結局、育成担当者自身が変化をして成果を出し続けることです。口だけの育成論や、昔の武勇伝を語ってもメンバーは伸びないでしょう。

1.基本を語る
2.自分が変わる
3.育成マニアにならない

1.基本を語る
成果を上げるための基本原理を極めてシンプルに語ってあげることが重要だと思います。あれやこれやと見聞きした情報を詰め込むのではなく、10年後も20年後も変わらないであろう基本を繰り返し伝える。ゆえに、育成担当者自身が日々持論形成を行わないと、伸びるメンバーも伸びません。

2.自分が変わる
実際に伸びたメンバーと話をしてわかりましたが、伸びた人は師匠を選んでいます。「自ら変わり続ける」人を選んでいるということです。自分は昨年と比べて何が伸びたのか?という自問自答を浴びせること。これが伸びるメンバーを育てる第一歩なのかもしれません。

3.育成マニアにならない
伸びた人は具体的な成果とそこに至るプロセスに自信と持論を持っています。簡単に言えば、仕事が人を育てるのです。一方で育成マニアになって心理的な診断を数多く提供したり、フレームを埋めることが目的化してしまったシートの記入を義務付けたり、集まることが目的となった会議に招集するなど、残念なケースがまま見られます。

育成担当者こそ、シンプルに成果を出す時間とその支援をどのように行うか。ここに注力したいものです。

メンバーが「怒り」を見せたらチャンス到来。ぜひ育成担当者の自己研鑽によって、伸びる人を一人でも多く輩出していただきたいと、心の底から願っています。

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「縦割り組織」を「共創組織」に変える“問いのデパート”

外資+国内、大手+ベンチャー、あらゆる組織風土の経験を生かした【対話型ファシリテーション】に強みがあります。大手企業のイノベーション事業、パーパス浸透からプロ野球選手のコーチ業まで、人と組織の活性化に実績があります。

堀井悠(ホリイ ヒサシ) アンドア株式会社代表取締役

堀井悠
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