縦横斜めの「関係の質」
組織の状態を改善するためにわれわれが大切にしている
ことの一つに縦横斜めの「関係の質」があります。
「タテ」とは、上司と部下の間の関係性で、「横」は
同じ部署や事業所の同僚ということになります。
そして「斜め」は他部署の上司や仲間、もしくは
他の事業所など日常的には接することが少ない人や部門との関係性ですね。
これらの関係性を糸にたとえると、働く人たちは
3本の糸で支えられているイメージになります。
2本が切れても大丈夫かも知れませんが、3本すべてが
切れてしまうと体を支えることが出来なくなります。
つまり「退職」という方向へ向かってしまうんですね。
これを防ぐためには、糸が切れないように本数を増やしたり、
一本をより太くする=関係の質を高める必要があると考えられます。
様々な方法でこの関係の質を高めることを支援していますが、
時折、こんな質問を受ける事があります。
「関係の質」って、仲良くしろと言うことでしょう?
ビジネスというのは厳しいものだから、そんなふわふわした状態で
仕事がうまくいくとは思えないのですが・・・
社員に対して、マネージャーや経営者は常に厳しく
あらねばならないという考え方ですね。
ここには一つの誤解があります。
それは「関係の質」に対する認識なのですが、関係性にはいくつかの段階があります。
1stステージは一般的に「仲が良い」と言われる状態で、
ここでは互いに相手の機嫌を損ねるような会話が交わされることはありません。
常識に沿った線で話が進み、礼儀正しい話し合いになりますが、
「ホンネ」で話していない状態になります。
そのため、何かの問題が本質的に解決することはあまり期待できません。
関係の質が高まると、次のステージに進みます。
2ndステージでは率直に「ホンネ」が語られることになり、
時には失礼と感じられる発言や激しい言葉の応酬があったりしますが、
とても多様な側面が語られることになります。
ただ、この段階に達しても他責的に相手を攻撃しているだけだと、やはり問題は解決しません。
問題が「隠される」方向に向かうことも少なくなく、
より複雑化する場合もあります。
さらに相互理解や相互信頼を深めて関係の質が高まると、
互いの話に心から耳を傾ける姿勢が生まれてきやすくなり、3rdステージに到達します。
ここでの話のトーンは相手をやっつけるのではなく、
それぞれが内省的になると、違和感のある意見や対立する
立場に対して寛容さが大きくなり、問題の本質が話し合われることができるようになります。
製品にクレームを受けている開発部長と営業部長の会話をシュミレーションしてみます。
1stステージの場合、互いのホンネが語られません。
互いの傷をなめ合うようなという感じでしょうか。
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開発部長「営業部も大変だよね、分けのわからないクレームで走り回らないと行けないんだから」
営業部長「そうなんですよ。このお客さんは、ほんとに細かなことをいつも大げさに言ってくるので
困ってるんですよ。開発部には作り直してもらうことになるのでお世話をかけますが、頼みますね。」
開発部長「仕方がないですね。社長の方にはちゃんと話を通しておいてくださいよ」
営業部長「もちろんですよ。お客さんの担当者が間違っていたということにしておきますから」
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あ~、書いていてなんだかイヤになってきました。
でも、私もサラリーマン時代に実際にこういう会話があったような気がします…
関係の質が高くなって2ndステージに上がるとどうなるでしょうか?
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開発部長「われわれは営業部が受け取ってきた要求・仕様書通りに作っているのにクレームと言われてもね」
営業部長「でもこの部分の設計はどうみても良くないし、それでクレームになったんだよ」
開発部長「われわれも気になっていたので作る前に図面を見せましたよね。どうしてそのときに言ってくれなかったんですか」
営業部長「営業マンが複雑な図面をぱっと見て、そこまで気がつくわけがないじゃないか。
なぜそのときにここが気になるとちゃんと説明しくれなかったんだ」
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よくありがちな会話のパターンかも知れませんが、
この状態で仕事をしているとしんどいことが多くなります。
ただ、互いに責任を相手に押しつけようとしていますが、
思っていることを率直に言葉にしているという意味で
1stステージより一歩前進していると考えられます。
ではさらに関係の質が高まって互いに内省的になる
3rdステージではどんな会話になるでしょうか。
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開発部長「設計者が気になる部分をちゃんと説明していなかったことがまずかったね。」
営業部長「いや、うちの担当者が図面を読み取るスキルを高めていなかったことが原因だと思う。」
開発部長「これからは設計者が気になるポイントは確認して図面に赤字で書くようにするよ」
営業部長「営業マンにも図面の読み方講習をしようと思うけど、設計から人をよこしてくれるかな」
開発部長「もちろん、よろこんで応援するよ。いつから始める?」
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組織変革が進んでいくと、こんな感じの内省的な対話が増えてきて、
問題が解決しやすくなると同時に、問題が起きにくい組織に変化していきます。
そうして、組織のトップも仕事が愉しくなり、
組織にイノベーションが起きることに繋がります。
組織をこの状態に向けて整えていくことが
「関係の質を高める」ことなんですね。
質問です。
みなさんの組織では、みなさんが内省的に対話が
できる風土が育っていますか?
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
- モチベーション・組織活性化
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- コミュニケーション
経営者や社員と一緒になって取り組むスタイルがとても好評で、
「こんな研修なら、また参加したい!」という声を多くいただきます。
社員数30名のソフト開発会社から、6000名の東証一部上場企業など主にものづくり企業の組織変革の支援に従事。支援した企業の組織力・業績の向上、従業員満足度の向上、離職率の低下、労働生産性の向上などを実現している 。
森田 満昭(モリタ ミツアキ) 一般社団法人エミライフ創研 代表理事
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