成長を止める"沈黙"と"思考の停止"
今年も4月にたくさんの新社会人が誕生しました。弊社の研修事業部では毎年お客様の新入社員研修を行っており、今年も沢山の新社会人とお会いさせて頂きました。
希望に満ち、これから会社の一員になるべく積極的な姿勢が見られ、研修を行う身としていつも気持ちを新たにさせてくれます。
弊社で行う企業研修は、新入社員研修だけではありません。入社3年目位までを対象にした若手研修や、係長・課長クラスを対象にした中堅社員研修、部長職以上を対象にした管理職研修など、様々な方を対象に研修を行っています。また、研修の内容についても、マナー研修から始まり、コミュニケーション系の研修、ロジカル系の研修、マネジメント系の研修など、お客様の課題に応じて実施をしています。
このように様々な研修を行っていると、いくつか気になることがあります。
その一つとして、参加者の役職が高くなっていく程に、研修中の沈黙時間が長くなるという傾向です。例えば、「○○○についてですが、どなたかご意見があれば挙手をお願いします。」と促しても、まず手が挙がることは少ないです。講師側から個別に指名をして発言をしてもらうことも行うのですが、それでも「・・・・・。」と下を向いて黙ってしまう方もいらっしゃいます。さらに次の方を指名しても「・・・・・。」と沈黙の連鎖が起きてしまうことも少なくありません。
もう一つこのようなシーンもあります。チームでディスカッションを行い、意見をまとめて発表する、というワークを行うのですが、ある方が発言した意見に対して「私も同じですね」「それで良いんじゃないですか」と続くと、他の方も口を揃えたように同意が続き、あとは時間が経つのを待つだけというチームを見かけます。
本来、研修というのは、会社が社員に感じる課題を解決するために実施されるものであり、新しい知識を得たり、何か気づきを得ることで成長を実感する場です。
では、なぜ沈黙をしてしまうのか。そして、どうして若手よりベテランのメンバーにそのようなことが起きやすいのかを考えてみたいと思います。
彼は決して"知らない"・"わからない"・"意見がない"から声を出せない訳ではありません。
経験を多く積んだ人ほど失敗や否定を恐れてしまいます。「間違えたらどうしよう」「こんなこと言ったら周りに笑われてしまわないか」という気持ちが、"恥ずかしい"という気持ちを生んでしまいます。また、彼らは黙っていればいずれ誰かが発言をするということ、沈黙の時間は誰かが止めてくれることを暗黙の中で期待をしています。 更に、研修という時間と場が、参加者である自分を"研修に参加しているお客さんなんだ"という意識で擁護してしまいます。これらのことが絡み合って沈黙をしてしまうのではないでしょうか。
しかし、これでは自分自身で自らを成長させるという道を塞いでいるにほかなりません。研修の主役は誰かというと、講師である我々ではなく、担当者でもなく、参加者なのです。
だからと言って、研修を提供する側が"研修参加者の意識が低いから良くない"と言ってしまったら、単なる言い訳になってしまいます。もちろん、そのようにならないように工夫を施すわけですが、より参加者の成長を促すのであれば、やはり受講前の意識付け(自分の成長の為であると言うこと)が大切であることは言うまでもありません。
もう一つ。他の意見に同調して終わってしまうケースを考えてみましょう。これは、考えることを止めてしまう=思考の停止状態です。どうして私たちは考えることを自ら停止してしまうのでしょうか。いくつか考えてみました。
現実逃避:早くこの場を終わらせたい、面倒な地雷を踏みたくない
"知らない"から"分らない":知らないからこそ考えるはずが、それを言い訳にする
権威依存:○○さんが言ったから、○○って決まっているから、とシャットアウトする
損得勘定:自分にとって無意味なことはやらない
このようなことは、やはりある程度経験を積んで来た人に起きやすいように感じます。
新入社員研修を行うときには、企業担当者が「失敗を恐れず主体的に行動して下さい」と声を掛けています。むしろ、これは既存の社員に向けて発するべき言動かもしれません。
考えることをやめた瞬間から成長も停滞してしまいます。思考の停止状態は、ある意味"ラク"を選択していると言えます。一度染みついた"ラク"は、習慣化されてしまうので、気を付けなければなりません。
最後になりますが、もちろん研修を実施する立場としては、沈黙や思考の停止状態にならないようにどうするかを考え取り組んでいます。普段の会議でも応用できる簡単な方法をご紹介したいと思います。
【3秒ルール】
研修や会議等、発言を促されたら必ず3秒以内で声を発しなければいけないルールです。
「回答する」とすると、正しいことを言わなければいけないという心理が生まれるので、最初のうちは「声を発する」で良いと思います。また、チームを作っている場合は、指名された方と同じメンバーにもこのルールを適用します。これにより、自分は関係ない(知らない)という意識を取り除きます。研修では、アイスブレイクとして簡単な質問で練習することで、場を醸成するように促します。
社員の成長、すなわちそれは企業の成長といえるでしょう。その為に研修担当の方は日々、様々な施策を検討されていることと思います。その一助を担う研修を実施する身としては、事前に想定される成長阻害要因を排除するよう努めていかなければならないと思っています。
人材開発コンサルティング事業部
大石英徳
- 経営戦略・経営管理
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株式会社アクティブ アンド カンパニー 代表取締役社長 兼 CEO
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大野順也(オオノジュンヤ) 株式会社アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長 兼 CEO
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