何気ない新入社員の呼び方
3月も中旬を過ぎると、来年度の新入社員の受け入れ準備もおおよそ終盤に差し掛かっている頃だと思います。
この新入社員を、どのように呼ぶか、呼んでいるかですが、どことなく各社の文化が表れているように感じています。例えば、「20XX年入社」というように"入社年度"で呼ぶ会社もあれば、ただ単純に「今年の新人」と呼ぶ会社もあるでしょう。この呼び方ですが、比較的新入社員の採用を始めて間もない会社の中には、「1期生」「2期生」といったように、同社における入社時期の暦年で呼ぶ会社もあります。何気ないこの新入社員の呼び方ですが、入社する新入社員に対してちょっとした影響を及ぼしている場合があります。
この「1期生」「2期生」という呼び方は、新入社員の採用を始めて、比較的まだ間もない会社に多く見られる現象です。この呼び方で新入社員を呼ぶことで、知らず知らずのうちに年功的序列を形成している場合があるのです。例えるなら、長男と次男といったよう呼び方にも通じるところがあるのかもしれません。
新入社員「1期生」というと、初めての新卒採用ということもあり、各社は結構なコストや労力をかけて、採用活動を行う場合も少なくないのではないでしょうか。また入社時の教育に関しても、いわゆる"手塩を掛けて"行う傾向があるようにも感じます。何かにつけて「新卒1期生なんだから」「新卒1期生かぁ」など、職場の他の社員も、「1期生」であることに注目する傾向もあるようです。更に2期生が入ってくると、「1期生」に加えて「先輩」という言葉も加わり、新卒「1期生」に対する注目や期待が膨らんだりもします。
これらの環境によって、「1期生」は自尊心を掻き立てられ、「2期生、3期生の先輩」として更に成長していくわけで、良いことばかりのように感じます。しかし、ここで問題になってくるのが「2期生」「3期生」です。彼彼女たちも後輩が入社してくることで「先輩」として成長していきます。しかし、「2期生」「3期生」と呼ぶことで、「1期生」との間に意味のない年功的な序列を生み出し、「1期生」を超えることはない(超えられない)という既成概念を植え付けることに繋がっている場合もあるのです。少し大袈裟に聞こえるかもしれませんが、弊社が過去にサポートさせて頂いた会社の中には、「2期生」が「1期生」と同じように2年3年と社歴を積んだ時に、それぞれの世代層における資格取得の速度を比較すると、取るべきとしている資格の取得速度が遅くなっていたという事実もありました。また「2期生」であることを理由にして、「1期生」と比べて劣等感を感じているということもありました。
部下をマネジメントする上での原理原則のひとつに、"他者と比較して評価をしない(褒めない・叱らない)"というものがあります。"評価する(褒める・叱る)時には、本人の成果や結果、また行動そのものを評価する(褒める・叱る)"ことがマネジメントには求められます。つまり、対象となる本人そのものと向き合い、本人が生み出した成果や結果、また行動にフォーカスして評価をしなければいけません。社歴や経験年数に基づく成果は、評価の対象に値するかもしれません。しかし、言わずもがなですが「X期生」という、意味のない年功的序列は評価の根拠には値しません。入社時期の暦年で新入社員を呼ぶことで、知らず知らずのうちに、意味のない年功的序列を形成し、本人のがんばりとは関係の無い、 "色眼鏡"を通して新入社員を見てしまっている場合もあるのです。
比較や序列を強調して、競争心を掻き立ててマネジメントする方法もあります。しかし、個々のタレントを育成していく、また多様性を受けれいていくという観点から考えると、その人そのものにフォーカスを当てて、マネジメントすることが求められます。
あなたの会社では新入社員をどのように呼んでいますか。新入社員の呼び方はもちろんのこと、何気なく普段使っている言葉を見直すことで、部下の活動の成果や結果、また管理職のマネジメントが部下に与えるインパクトを変えることに繋がるかもしれません。
代表取締役社長 兼 CEO 大野 順也
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大野順也(オオノジュンヤ) 株式会社アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長 兼 CEO
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