役職定年は廃止すべきだ
役職定年が発生する原因
主に大企業で役職定年制度を導入している企業が多くあります。この役職定年制度とは一定の年齢に達したときに役職を降りるという制度です。
この制度は管理職の活性化という観点で評価できる部分もあります。また実力能力はあるがポストがないので管理職になれない中堅の不満を解消するという効果もあります。
この制度が多くの企業で採用されている原因は明確です。
そもそも管理職を目指す総合職の社員が多いということと、昇格が甘いということです。100のポストがある企業で、40歳で役職に就くと仮定します。定年を60だとすれば管理職に在籍する期間は20年となります。
したがって管理職への昇格者は毎年100/20年で5人ということになります。しかしながら多くの企業は計算に基づいて総合職を採用して来ませんでした。ポストに比して極めて多くの管理職予備軍を採用しました。
近年はバブル経済時の大量採用などです。ポストが100しかないのにその管理職予備軍を大量採用し、甘い昇格を続けた結果管理職に就任できなかった社員が大量に発生したからです。中長期を見据えた合理的な採用を行って来なかったと言えます。そのためこのような制度が発生してしまいました。
役職定年の問題
役職定年制度を入れるといくつかのメリットはありつつも重大な問題が発生します
まず一つは役職定年後の社員の扱いです。今まで部長課長などの役職を担っていた社員が一定の年齢で役職を外され、給与も2 、3割ダウンします。モチベーションは5割ぐらいダウンするのではないでしょうか。またこの社員は本来一般の社員と同じ仕事をするのですが、同じ職場にいれば扱いも困ります。また管理能力が高くとも実務ができない人もいます。
全員というわけではありませんが多くの役職定年後社員は戦力として使いづらく、またその給与には全く見合っていません。企業が新たに発生させたパフォーマンスの低い社員群と言えます。無駄な人件費が発生し、気を使う職場になり、そして戦力として計算できないモチベーションが低い社員が発生してしまうのです。
また近年実力主義が注目を浴びています。さらに65歳までの雇用義務、70歳までの雇用努力となり、高年齢者社員の活性化が重要な問題となりました。高齢者の活用は年齢でなく実力で処遇するというのが原則です。
さらに差別の撤廃をすることが企業に課せられたひとつの義務です。この役職定年は高齢者活用に逆行し、差別という倫理的問題があるということを再認識しなければなりません。安易に役職定年を入れる企業が多いですが、メリットは少なく局地的です。デメリットは大きく、企業全体の問題となります。
役職定年は廃止すべき
役職定年を発生させなくするには、自社のビジネスモデルを達成するのに必要な理論人員数・人員構成モデルをつくらなければなりません。
日本の企業は適正人員管理という、仕事にどれぐらいの職種別レベル別人数が必要かという、人事管理で最も重要な管理ができていません。
まず根源的な問題を解決すれば将来的に役職定年は発生しなくなります。業績の良い時に新卒社員を大量に採用し、逆に業績が悪いときには新卒社員の採用を少なくするという判断をしている企業があります。短期の業績が良いからといって大量に総合職を採用する必然性は全くありません。総合職は将来の企業のコア人材として活躍する人材であるため、業績が悪くなっても理論人数通りに採用しなくてはなりません。採用を控えるというのは将来のコア社員を減少させることになり、企業の存続に大きな影響を与えます。
定年制度一つとっても今の経営者および人事部門の合理性、科学性が欠如していると言えるでしょう。実力主義を徹底し、年齢差別はやめ、全員が戦力として活躍する。このような企業になるためには即刻役職定年は廃止すべきです。
*YouTube番組DigDeep人事「役職定年制はやめるべき」を参考に執筆
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