人事評価の重要性と、課題を解決する3つのステップ
こんにちは。株式会社SmartHRでプロダクトマーケティングマネージャーを務めている北原と申します。
前回は人材マネジメントの基本的な考え方や重要性、推進方法をご紹介しました。今回は人材マネジメントの一要素である「人事評価」について、その重要性と多くの企業が抱える課題についてご紹介していきます。
これから人事評価制度を運用される方や、運用に課題を感じられている方にぜひご覧いただけるとうれしいです。
人事評価は経営目標を達成する手段
なぜ多くの企業は人事評価を行うのでしょうか。
給与や昇給・昇格を決める、異動など人員配置を検討する、など人事評価の結果は様々な場面で活用されます。つまり評価とは、「経営目標・ビジョンを達成する」ための手段の一つという位置づけになります。
企業の活動目的は「経営目標・ビジョンを達成する」ことであり、企業はそのためにはヒト・モノ・カネの資源を最適に活用・配分していく必要があります。人事はその中でも”ヒト”、すなわち従業員に、人事施策を通じて経営目標を正しく理解してもらい、自律して働いてもらう支援を行うことがミッションになります。
人事評価も、経営目標を伝える手段であり、経営目標を達成するために必要なスキルを育成し、納得感を持って働いてもらう手段であるといえます。
人事評価制度がないとどうなる?
人事評価がない、または適切に機能していない場合、従業員や評価者は経営目標に対する意識や行動が薄れていきます。
評価者は部下を育成するミッションを追っていない状態になるため、人が育たず、優秀な人材から辞めていきます。人が育たず組織が成長しないと、経営目標が達成されず、人事評価制度の作成にコストが掛けられなくなる、という悪循環に陥ります。
このような事態を防ぐためにも、早い段階で人事評価制度をつくり、人を育てる仕組みを構築しておくことが重要です。
1,067人への調査で分かった人事評価の課題
実際に人事評価を運用している企業では、どのような運用を行い、どのような課題を抱えているのでしょうか。
人事労務担当者および経営者、一般従業員1,067人を対象に実施した「人事評価業務」に関する調査(※)によると、人事評価を運用している企業のうち、システムで完結して運用ができている割合は3割程度、それ以外は紙やExcel・スプレッドシートやシステム、各種ツールとの併用で評価業務を行っていることが分かっています。
※SmartHR 「人事評価業務」に関する調査:https://smarthr.jp/release/28885
また、人事評価業務における課題として、
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評価者によって、評価基準のばらつきがある 62.6%
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配置や報酬、育成に活かせていない 52.3%
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評価シートの準備、配布、回収に工数がかかる 42.7%
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転記作業などのミスが許されないため、心理的負担が大きい 37.3%
といったものがあげられました。
人事評価の課題にある背景
なぜこのような課題が発生するのか、それぞれの課題に対して原因を考察していきます。
【評価基準のバラつき】
人事評価そのものの項目や基準があいまいであったり、経営目標との一貫性がないといった可能性があります。
人事評価制度そのものに原因がない場合、評価者本人の問題、もしくは評価を行うメンバー間に認識のズレがある可能性があります。具体的には、評価者自身が評価項目や基準に対する理解が不足している、または評価者のメンバー間で評価基準のすり合わせを行っていない、といったケースです。
【評価結果の活用ができていない】
活用までを見据えた設計がなされておらず、どのように活用すべきか定義ができていない可能性があります。
または前回の記事でもご紹介したデータの三大疾病(データが「ばらばら」で、「ぐちゃぐちゃ」で、「まちまち」に存在している状態)になっており、複数の情報と掛け合わせて分析できる状態にないことも考えられます。
例えば、評価者の結果に加え資格保持や研修の受講、試験の合格の有無などを合わせて最終判断をしたいが、それぞれ別のデータベースで従業員情報を管理しており、照合に時間がかかってしまう、またはできない、といったケースが当てはまります。
【業務の工数圧迫】
紙やExcel・スプレッドシートなど評価システム以外で運用している場合、
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評価の進捗・回収状況がわからず個別で確認が必要
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最新版のシートを複数人数でミスなく管理する
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入力内容に不備があった場合の差し戻し
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期日通りに回収ができなかった場合のリマインド
などの対応をしなければならず、工数が圧迫する傾向があります。
システムを導入していた場合でも、実施したいことがシステムで完結することができず、一部別ツールでの運用が残ってしまうケースもあります。
【繊細なデータを扱うことへの心理的負担】
評価結果と合わせて従業員個人の情報(過去の実績や評価結果、資格情報や異動情報など)を給与や昇給・昇格の判断に活用するケースがあります。個人の処遇に影響するためミスが許されず、担当者の心理的負荷が大きくなります。
「人事評価業務」に関する調査では、人数規模が大きい企業ほど紙やExcel、また複数の手段の併用は心理的負担が大きいことが明らかとなっています。扱うデータ量が多くなるほど負荷が大きいといえるでしょう。
人事評価で重要な「設計」「運用」「活用」のステップ
人事評価における課題を解消しながら、最適に運用していくためにはどうしたらよいのでしょうか。人事評価の設計、運用、活用それぞれでポイントをまとめてみました。
①人事評価の設計
人事評価を通じて経営目標を伝え理解してもらうには、人事評価制度が経営目標やビジョン・バリューに沿った行動を取るための指針となっていることが重要です。企業が重視する価値を直接的に評価要素として設けることで、企業が大事にしていることを明文化し、文化醸成を促すことができます。
また、5年後・10年後・中長期で経営目標を達成するために必要な人材を定義し、現在の人材レベルとの差分を埋める人材基準(理想と現状のギャップを埋めるための課題を明確化したもの)をつくります。その基準を人事評価の要素とすることで、人材育成の役割も果たすことができるのです。
このように経営目標からブレイクダウンした人事評価制度に整えることが重要です。
②人事評価の運用
さらに人事評価制度の設計とともに重要なのが、運用のフェーズです。
評価の実施期間中は、被評価者と1on1を実施し、育成方針や人材基準から不足している点をフィードバックして育成支援を行っていく必要があります。ここで重要なのが、1on1を含めて人事評価はあくまで経営目標を達成するための手段であり、評価自体や給与、昇給・昇格の決定が目的にならないよう注意することです。これにより、評価が完了した期末に発生するサプライズ評価(自己評価と評価者結果が大幅にずれること)を防ぐこともできます。
評価を集計した後は、評価会議を実施し、評価者同士で基準のすり合わせ、甘辛調整、育成方針のすり合わせを行います。評価者同士で基準が揃わない、人によって付け方に癖があるというのはよくある話なので、評価者がその癖をまず自覚することが重要です。
これらの過程・手続きを公開し透明性を担保して運用すること、また運用期間中にフィードバックを行うことで公平性が担保され、評価への納得感を醸成することができるのです。
評価が確定した後は、評価結果だけではなく、評価期間の業務に関する振り返りや次の期に期待をすることをセットでフィードバックすることで、育成を後押しします。
③評価結果の活用
繰り返しになりますが、人事評価の目的は「経営目標・ビジョンを達成する」ために必要な人材を育成し、従業員に自律して働いてもらうことです。
まずは企業としてどのような人材を評価していきたいのか、そのためにどのようなデータを取得すべきかを定義しましょう。また、それらデータと人事評価結果がひとつのデータベースに最新の状態で蓄積されるように構築しておくことで、管理工数が削減されミスも減ります。
このように、活用まで見据えたデータ定義とデータベース構築を行うことが重要です。
経営と人事が一体化して組織運営をしていく
ここまで人事評価の課題と原因、解決方法について説明してきました。
設計、運用、活用と人事評価のポイントは多岐にわたりますが、まず抑えておくべきは経営目標と人事評価制度・育成方針など各種人事施策に一貫性があるかを確認することです。土台となる人事評価に経営メッセージとブレがあると、従業員は何を目指すべきか迷ってしまいます。
従業員が人事評価を通じて経営目標を正しく理解し、自律して働いてもらうことが企業の成長に繋がります。成長し続ける組織をつくるためには、経営と人事が一体化して組織運営をしていくことが重要なのです。
さいごに
本記事では人事評価の重要性と運用のポイントをご紹介しました。
ポイントが多岐にわたり戸惑う点もあるかと思いますが、人事評価は最初から完璧な設計、運用、活用をすることは難しいので、運用で出た課題を振り返り、次の人事評価制度に反映、改善を繰り返していくことで徐々に自社に合った形をつくっていきましょう。
自社の人事評価の運用について考えるきっかけになれば幸いです。
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