障害者権利条約の批准とその後の対応
2013年に「障害者の雇用の促進に関する法律」の一部改正が行われ、
雇用側の企業にとって、新たなハードルが設定されました。
5年に一度の雇用率見直しにより、障害者の法定雇用率が15年ぶりに2.0%へ引き上げられています。
今回のコラムでは、法律の改正の背景にある障害者権利条約の批准とその後の対応について
お伝えします。
障害者権利条約は、障害者の人権や基本的自由の確保などを定めた国際条約であり、
日本も2014年に批准し、条約国の仲間入りを果たしました。(2014年10月現在、151か国が締結済)
2013年の障害者雇用に関する法律の改正には、この条約批准が大きく影響されていると考えられ、
その意味で2013年は、これからの日本の障害者雇用の方向を示す、大きな転換点の年になったと
捉えて良いでしょう。
2016年4月に施行される法律改正に向けて、企業に求められる対応として、
① 障害者に対する差別の禁止
② 合理的配慮の提供義務
③ 苦情処理・紛争解決援助
の3項目に分けて、
厚生労働省は、今年6月16日に、指針とQ&A、事例集を発表しました。(厚生労働省のHP参照)
そもそも、障害の有無を超えて、差別禁止は憲法でも保障されている人権擁護のルールであり、
また合理的配慮は「障害のある人たちに必要な環境を提供する」と考えれば、当然の措置であり、
必要な投資であると思われます。
一方、企業の人事部門は別として、多くの企業人にとって、障害のある人達とは、やはり縁遠く、
どのように接して良いか戸惑うのが実情と考えれば、基本的な気づきと対応は、
あらためて強調しておくべき事項なのでしょう。
ハローワーク経由の障害者の就労状況を見ると、求職者・就職者とも、3障害の中で精神障害のある
人達の割合がトップとなっています。これらの精神障害者(発達障害者を含む)を、
今後の障害者雇用における主たる採用対象として、企業が採用戦略を考えるとすれば、
障害理解から始まる障害者受け入れの環境整備は、必然のこととなります。
社会体験が乏しく、社会のルールが必ずしもきちんと身に着いていない精神障害者。
病気が故に、時に日常勤務に不安定さを示す精神障害者を、将来の貴重な働き手に育て上げる
企業の見識と力量発揮が期待されます。
新たな制度が誕生した後、時には雇用する企業と働く本人の間に新たな係争問題が
生じないとも限りません。あらためて企業に求められることは、障害のある人達の気持ちに
向きあいながら、彼らが安心して満足して働き続けられる職場づくりではないでしょうか。
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公認心理師/臨床心理士/シニア産業カウンセラー
【専門領域】障がい者雇用の企業支援、精神障がい者の採用・定着・育成支援
精神科・心療内科クリニックにて、医師との協働で会社員のメンタルヘルス相談等に関与。EAP事業会社にて企業のメンタルヘルス支援に従事。現在は、企業の人事部門に対する障がい者雇用のコンサルテーション、精神障がい者の現場管理職・本人支援を実施。
諏訪 裕子(スワ ユウコ) シニアコラボレータ―
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