リサーチクエスチョンに対するみんなの仮説とは

こんにちは。株式会社ジェイフィールの重光です。
前回のコラムでは、「リサーチクエスチョン」(=研究のテーマ、問い)から「仮説立案」までのプロセスを解説させていただきました。
チームで研究を行う際に、なぜ事前に、個々が抱いている「仮説の背景や土台にある思い」や、「根拠となる(参考にした)情報や事例」をあらかじめチーム内で共有しておく必要があるのかの理由を説明しました。
個人ではなく、チームだからこそ、多角的でユニークな仮説検証が期待される訳ですが、だからこそ事前に「すりあわせ」が必要なのです。
これを怠ると、研究を進めていく過程で、チーム内で不和が起こったり、研究テーマを見失ってしまう可能性があるのです。
今回のコラムでは、先日行われた「第3回マネジメント研究会」で、3つのチームが立てた「仮説」と、皆さんがその「仮説」に至った思考背景を紹介していきます。
■Aチーム
Aチームは、マネジメントシェアリングが組織運営にどのような効果があるのか定量的に測りたい、との思いから、リサーチクエスチョンを「効果的なマネジメントシェアリングを生み出す因果関係とは?」としていました。
そして今回、その答えの仮説を「【誰】にマネジメントシェアリングを提案し、理解してもらうために【何】をすると、【どういう】効果がある。その理由は【具体的な根拠】である」と、したようです。
これは、マネジメントシェアリングを導入する際の意思決定者(=【誰】)に、既に他企業、組織などで実証済の効果、成果を示すことで、組織への導入をしやすくし、広げていきたいという思いがあるようです。
■Bチーム
Bチームはマネジャーがイキイキと働いている職場こそ、多様性を認め、イノベーションも生まれる活気のある職場であるとの思いから、リサーチクエスチョンを「多様性を尊重することで生み出される新しい価値とは何か」~経営に資するマネジメントシェアリングのあり方とは?~ と、しました。
そして、仮説は「マネジメントシェアリングのあり方により、様々な新しい価値が生まれる」との方向で、「価値」の定義や、そもそも誰の何をシェアすることなのかの議論が行われました。
「マネジメントシェアリングのあり方」は、「マネジメント業務を単純に2つにシェアするのではなく、それぞれが持っているものを持ち寄るイメージの方が、新たな価値が生まれそう」との意見があり、同年代の課長同士がシェアするよりも、年配者と若者のように世代や年代の違う人がシェアした方が良さそうだとの画期的な意見も生まれました。
「私たちが考えたいマネジメントシェアを例えるなら、お菓子のキットカットを2つに割ってシェアするというのではなく、それぞれが個性という異なる味を持ち寄って、これまでにない味のキットカットをつくるようなイメージなのかもしれないですね」との意見には、「なるほど、そんなイメージかもしれないですね!」と笑い合う姿が印象的でした。
■Cチーム
Cチームはそもそもマネジメントシェアリングの定義が曖昧であるので、まずは定義を明らかにし、その上で「理想的、汎用的なマネジメントシェアリングのモデルを探求していく」とのリサーチクエスチョンを設定しました。そして、この答えの仮説は、AIを活用してマネジメントを様々な因子(パフォーマンス、コミュニケーション、ワークライフバランスなど)に分類し、「情報共有の量と質がマネジメントシェアリングにおいて重要な役割を果たす」としました。
マネジメントシェアリングを、組織の成長や人材育成につなげるには、マネジャー同士の情報共有をより細かい、深いレベルで行う必要があると考えたようです。
今後のアクションとしては、メンバーそれぞれが持っている問題意識の要素を縦軸と横軸に取った2次元マップを作成し、多角的に共有すべき情報を判断していくようです。
リサーチクエスチョン → 仮説 → 仮説検証の事例
チーム研究に沿って、リサーチクエスチョンから仮説検証への流れをご紹介しましょう。サンプル図は、チームCで一つのたたき台として出されたものです・・・『汎用できる「マネジメントシェアリング」のモデルとは?』というリサーチクエスチョンに対して、情報共有(引継ぎ)の最適システムをつくることで汎用性の高いモデルが出来るのではないかと考えました。
「情報共有(引継ぎ)」を、マネジメントタスクに応じた3層に分けて仕組化していこうというアイデアです。どのような職種、階層であれ、下記の3層レベルは、ある程度汎用性の高いモデルで、このように分類することで、シェアする内容、方法が明確化出来そうです。
1)デジタル化出来るもの(見ればわかるもの)
2)デジタル化、言語化しづらい内容で、会話しながら共有・伝達できるもの
3)想定外、未知の事態への対応。双方の意見を出し合いながら解決するもの
情報共有を3層化してみようと思った背景としては、マネジメントにおいて重要なものは、3)の「想定外、未知の事態への対応」で、ここに可能な限りの時間と労力を使うことが「マネジメントシェアリング」の成否を大きく左右すると考えたからです。
一方で、それ以外の1)2)はそれぞれの組織で「定型」をつくり、なるべく時間をかけずに粛々と情報共有をすれば、3)に注力出来るはずです。
この思考に至ったのは、病院内で、入院患者に関する看護師の引継方法の事例を耳にしたからです。1)患者の基本情報はカルテ(デジタル・情報化)にあり人を介さず行う、2)患者の容体、変化など細やかな情報は短時間で立ったまま行う対面ミーティングで行う、3)今後の治療計画は医師も入ったカンファレンスで行われる。タイムシェアが当たり前で引継ぎがうまく行われているドイツの企業では、デジタルで情報を共有するとともに、週1回同じ日時にシフトに入って時間を共有しているようです。
このようなステップで仮説を立てられたら、それを検証するため次のアクションとして
1)他社、他業種での先行事例の調査、ヒアリングを行う(医療の現場も検討)
2)自分達が業務の引継を行う際の経験を棚卸してみる
などをして、「情報共有の仕組化」について参考になりそうなものを調査します。
これは1つの事例ですが、「リサーチクエスチョン」の答えをみつけるための思考の道筋をつけていくことで、研究テーマを見失わず、仮説 → 検証が行われます。
次回以降も、是非御参考に!
- モチベーション・組織活性化
- マネジメント
- コーチング・ファシリテーション
- チームビルディング
- コミュニケーション
良い感情の連鎖を起こすことで人と組織の変革を支援するコンサルティング会社「ジェイフィール」の取締役
ジェイフィールでは3名の取締役でマネジメントシェアリングを実施中。ミンツバーグ教授との出会いからリフレクションラウンドテーブル(R)を日本に導入。 第1回HR Award 受賞。主な著書「ミンツバーグ教授のマネジャーの学校」他
重光直之(シゲミツ ナオユキ) 株式会社ジェイフィール 取締役 / 経営チームメンバー

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