新入社員 の成長と定着に向けておすすめしたい3つのこと
先日、学卒者を対象とした新入社員フォローアップにて「ロジカルシンキング」の研修を担当したときのことです。演習の一つに、バラバラのお品書きから似た要素を集め、要約(見出し)を付けるという練習ワークがありました。お品書きの要素はよくある居酒屋メニューで、従来は学生時代に利用経験がある人が多くイメージしやすいことから設定していました。しかし、ワークを提示後すぐに質問がありました。「「もろきゅう」って何ですか?」など、お品書きの内容についてです。
そのタイミングで講師が「居酒屋に行った経験のある人」と挙手を促すと、驚くことに、手が挙がった人は3割程度でした。つまり、お品書き内容のイメージがしにくく、要約もしにくいという訳です。そこで、居酒屋をイメージする必要はなく、並んだ要素に要約を付ければよい、と指示を補足し進めてもらったところ、従来は「(すぐに出る)クイックメニュー」などの要約がついていることが多かった要素が「前菜」と表現されていました。
2020年~2022年の約3年間、COVID-19により様々な活動に大きな制約が設けられました。集まることはしにくくなり、食事も黙食。学生は、学園祭や修学旅行など、他者と交流し一つのことを協力して行うような行事ができず、クラブやサークル活動、アルバイトなどの課外活動も制限されました。2023年になり行動制約は解除され、2024年はあらゆる分野でイベント等が行われるようになりました。
一見これまで通りの活動に戻ったようにも見えますが、2020年~2023年に受けた制約は、「居酒屋」の利用経験のように、見えないところでギャップを生み出しています。上記以外にも、ここ数年の新入社員研修、新入社員フォローアップ研修などでは、1つ1つは大きなことではないのですが、運営側が「おや?」、「あれ?」、「え?」と感じる事象が頻繁に起きています。
2024年は、退職代行問題が話題になるなど、早期離職やメンタルヘルスの問題もあるため、新入社員育成に携わるOJTリーダー育成のプログラムや現場指導のプログラムへの参加が増加しています。参加者の方に伺うと「どう接していいか悩む」、「自分が想定していた反応と異なる反応がかえってくるので戸惑う」というご意見を多数お聞きします。
以上のようなことを背景に、これから新入社員の入社時教育を担う人材育成担当者の皆様に3つおススメしたいことがあります。
1.現場ヒアリング
2021年以降に新入社員を受け入れた職場に、新入社員世代と関わる中で、新入社員の強みと違和感があったことなどのヒアリングはされているでしょうか。もしされていないようでしたらとてもおすすめです。同時に、新入社員側にも上司や先輩とのかかわりの中で、よかったことと、違和感があったことをヒアリングできると、どこにギャップがあるかが把握しやすくなります。
2.入社時教育の見直し
現場ヒアリング結果をもとに、入社時教育の見直しを図ります。例えば、当方担当の公開セミナーなどでは、2025年4月のプログラムでは、チームワークで取り組む演習の時間と量を増やす予定にしています。その理由は、学生時代にチームワークで何かを成す機会が大幅に減ったことから、チーム(組織)活動ができるように、バリエーションを増やしてほしいというリクエストをいただいたためです。
参考までに、2019年と2024年に、同じ演習の実施結果で比較すると、2019年は、平均的に30分でできていた演習が、2024年は40分~45分程度かかるようになっています。但し、振り返って改善案を検討してもらい応用してもらうと、次にはしっかりできるようになるので、「学生時代の経験の不足」を「訓練の繰り返し」で補うと、比較的早い段階で習得できるのが、今の新入社員世代の強みだと感じます。
3.OJT担当者との連携
過去の新入社員に関する現場へのヒアリング結果と、今年の入社時研修時の様子から、強みや苦手なことの共有を図り、対応ポイントを伝えておけると、指導での心理的負担を軽減することができます。
日常的に一番多く関わることとなる指導者との連携が、新入社員の成長や定着に最も大きく影響します。受け入れ前の事前情報共有をしておくことで、受け入れ後のフィードバックも得やすくなり、課題が生じた際には対応しやすくなります。
今回ご紹介した点をより具体的に施策に落とし込むために、Six Stars Consultingでは人材育成ご担当者様を対象に、2025年新入社員の育成に関して外してはいけないポイントとして研修企画や運営の要所をお伝えするワークショップや、OJT担当者セミナーもご用意しております。是非、この機会にご活用ください。
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原田 由美子(ハラダ ユミコ) 代表取締役(人材育成コンサルタント、キャリアコンサルタント/国家資格)
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