社会保険料の会社負担分も見込んだ給与設定が必要
先日、ホームページをご覧になった企業経営者の方から、次のようなお電話を受けました。
「現在、社員は1名。会社として社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入しているが、経営が苦しく、500万円以上保険料を滞納している。保険料を支払う見込が立たず、これ以上滞納をしたくないので、社会保険を脱退できないか。」
法人の場合は、社員がゼロ、つまり取締役のみでも社会保険の適用事業所となります。つまり、法人である限り、適用から外れることは不可能です。そのため、少なくとも経営者は社会保険の資格を喪失することはできません。社員の方については、退職してもらって業務委託契約にするなどの方法をとれば、被保険者資格を喪失することができます。
まずは以上のような制度上の回答をしたのですが、当然ながらそれだけでは問題の根本的な解決にはなりません。
一番の問題は、経営が苦しいということです。毎月の売上の変動が激しい一方で、費用はほぼ固定費としてほぼ一定であり、近年は受注が減少傾向にあるために赤字が続いているとのことでした。
ビジネススキームを見直して、売上を向上させるのはもちろんなのですが、まずは早急なコストカットが必要です。その対象が、社会保険料だったというわけです。
ただ、社会保険料は加入するかどうかを経営者や社員が選択するものではなく、法律に則って決まるものです。したがって、社会保険料をコストカットの対象にはできません。
コストカットの対象は、固定費の多くを占める役員報酬・給与部分です。お聞きしたところ、なんとそのような経営状態においても、社員の給与を毎月40万円も支払っているということでした。
社員の方に現在の経営状態を十分説明し、業績回復の際には元に戻すことを前提に、給与を下げるよう勧めました。そして、新たな給与は、社会保険料の会社負担も含めて支払が可能なレベルに設定するようお伝えしました。
それだけでは経営全体の解決には至りませんが、まず経営改善の第一歩ということです。
最近は、企業にコンプライアンス(法令遵守)が強く求められるようになっています。そういった意味では、社会保険の加入を適正に行うこともその1つです。
特に、事業を始めて最初に社員を雇用する際には、人件費とは単に社員に支払う給与だけではないということを頭に入れておく必要があります。
健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険を合わせて、少なくとも社員への給与支払い額の約15%は追加で会社負担が発生します。これらが負担できないうちは、まだ事業がきちんと立ち上がっていないということなので、社員を雇用すべきではありません。
この条件をクリアして社員を雇用する際は、上記のような社会保険料の会社負担分が発生することを考慮して、給与水準を設定する必要があります。
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