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『日本の人事部』HRクラブ 開催レポート

【第8回テーマ】

凸版印刷が考える目標達成に向けた管理職層の育成
~コミュニケーションスキルの重要性~

『日本の人事部』は、2011年2月25日(金)に、第8回「HRクラブ」を開催いたしました。

今回のゲストは、凸版印刷株式会社 人事労政本部 人財開発本部 課長の羽間信男氏。
第1部の講演では、凸版印刷の人財開発に関する考え方のほか、実際にどのように育成に取り組んでいるのか、そのプログラムの内容について詳しくご説明いただきました。続く第2部では、羽間氏がファシリテーターとなって、参加者同士によるディスカッションを実施。今回も、熱い議論や積極的な情報交換が行なわれ、大変な盛り上がりとなりました。本レポートでは、当日の模様をダイジェスト形式でご紹介いたします。

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【第8回 開催概要】

■ テーマ
凸版印刷が考える目標達成に向けた管理職層の育成
~コミュニケーションスキルの重要性~
■ 開催日時
2011年2月25日(金)18:30~20:30
■ ゲストスピーカー
凸版印刷株式会社 人事労政本部 人財開発本部 課長 羽間 信男氏

<羽間 信男氏 プロフィール>(はざま のぶお)1982年凸版印刷株式会社入社。関西にて商業印刷部門の営業を19年経験の後、東京の商業印刷の事業本部に異動。事業本部事業戦略本部販売促進部を経 て、2004年4月から本社、人事労政本部人財開発部にて新入社員研修、新任階層別研修、トッパンビジネススクールなどの企画、運営などを担当。

凸版印刷の人財開発の基本にあるものとは?

Photo 長年に渡り、人財開発に携わってきた羽間氏。その社歴の中でも、2000年は凸版印刷にとって大きなターニングポイントだったそうです。同社では創立百周年にあたるこの年を、「第二の創業」と位置づけ、同社を永続的に発展させるためのあるべき姿として「TOPPAN VISION 21」を策定したのです。「企業理念」「経営信条」「行動指針」が定義され、その後、それらをしっかりと従業員に落とし込む教育が開始されました。また、制度の見直しは、今も継続されているそうです。人財教育や人財開発において、また、色々な制度の構築にも「TOPPAN VISION 21」がベースになっていることはいうまでもありません。

羽間氏による同社の人財開発プログラムに関する解説は、まず、その全体像を見ていくことから始まりました。企業理念、経営信条に基づいた従業員が実践すべき行動特性としての「価値ある行動」、それらを実行するためには、「知識力」「課題発見力」「コミュニケーション力」などが必要であると考えたそうです。従業員一人ひとりがそれらを身に付けていくために、「人財開発が必要である」とのこと。同社ではさまざまな研修を幅広く行っていますが、今回は特に、「階層別」の研修について詳しく解説していただきました。

「階層別」研修におけるメインテーマ

Photo 同社では、「新任部長」「新任管理者」「新任監督者」新入社員育成の「ファーストキャリアプラン」などと階層を分け、その階層ごとに果たすべき主な役割を定義。それらを理解させ、意識を変化してもらうために、コミュニケーションスキルの習得を重視した研修を実施しているそうです。具体的にいうと、「新任部長」は「リーダーシップ」が研修のメインテーマ。また、「新任管理者」は「マネジメント」、「新任監督者」は「チームワーク」、「ファーストキャリアプラン」は「自立と自立」がメインテーマとなっています。

まずは、部長層の育成に関する考え方から、解説していただきました。部長の果たすべき役割とは「新しい利益の創出」であり、そのためには「ビジョンの構築」と「リーダーシップの発揮によるビジョンの達成」が必要だと考えているそうです。では、そのために部長層は何を強化していくべきなのでしょうか。羽間氏によれば、トップダウンで一方的に命令するのではなく、メンバーの自主性を重んじ、チームメンバーをサポートしていく「支援型」「奉仕型」のリーダーシップが求められるとのこと。また、そのために部長層に求められるのは、「ファシリテーション力」だといいます。

部長層の研修は、先述の「ファシリテーション力を身につけること」と、参加者同士がフィードバックしあうことで、「自分の強みと課題を理解すること」を目的としています。実際の研修では、ケーススタディを用いて議論を行いながら、ファシリテーションの難しさや重要性を改めて認識。議論を促進させるためのツールやテクニックを、取得していくそうです。また、組織内で「当たり前」になってしまっている「思い込み」に気づき、変化に対応した組織を形成できるように、工夫しているそうです。

課長(管理者)層の研修についても、詳しい解説がありました。課長層の課題は、「強力なマネジメント力の発揮による組織目標の達成」であり、「部下の主体性を引き出すこと」が求められるそうです。そこで、必要なのが「コーチング」のスキル。上司として部下の気持ちをうまく聞き出し、モチベーションを高めさせることが求められるそうです。

このほかにも、「監督者層」「若年層」の研修の内容のほか、「コミュニケーションスキル」の向上のための方法などについてご説明いただきました。最後は、参加者からの質問に羽間氏が答える質疑応答を行い、第1部は終了。1時間という限られた時間でしたが、羽間氏の講演を通じて、参加者は効果的な研修を行なうためには何をすべきか、改めて考える機会となったようです。

参加者が直面している「管理職育成」の課題とは?

Photo 続く第2部では、第1部の講演を受け、羽間氏がファシリテーターとなり、三つのチームに分かれてディスカッションを行いました。ディスカッションのテーマは「貴社でおこなっている管理職育成の目的と目標は何ですか」と「貴社の管理職育成に、経営陣はどのようなコミットをしていますか。そしてコミットを期待していますか」の二つ。ディスカッション後はチームごとに、話し合った内容について発表していただきました。

(以下、発表の内容から一部抜粋)

「研修を実施してはいるが、その目的が明確ではないのが大きな問題。何のためにやるのかを、明確にしていきたい」

「研修を行なっても、経営理念が末端の社員まで浸透していない。日々仕事を行なう中で、埋もれてしまっているようだ」

「どういう人材を育成していくべきなのか、経営陣と握り合えていないことが問題だ」

参加者からの声を受けて羽間氏が語った、次の言葉が大変印象的でした。それは、「人財育成の目的とは何か」については、固く考えなくてもいい。ただ、「会社の業績を伸ばすため」と考えればいいのだ。その目的を実現させるために、各階層の研修で何をするのかを考えることが重要だ――というもの。基本は全て「育成を通して会社の業績の向上に貢献すること」というシンプルな考え方に、多くの参加者の方が腹落ち感を得られたようです。

羽間氏の軽妙なお話しぶりもあって、大変明るい雰囲気で行なわれた、今回のHRクラブ。2時間という時間は、本当にあっという間に過ぎてしまいました。そこで今回も、居酒屋に場所を変えて、懇親会を実施。引き続き羽間氏との質疑応答や、参加者同士の情報交換が夜遅くまで続きました。

【参加者の声】

≪講演の感想≫

  • 「企業は人なり」。そのために人と人との関係性に着目され、さらには内制化した研修とのお話しに背中をおされました。(株式会社乃村工芸社 / 人事部 高橋寿佳)
  • 根本的な考え方から改めて教えていただき、ありがとうございます。社内に持ち帰って検討したいと思います。(マスコミ / 経営管理 課長)
  • 必須研修の内容を、コミュニケーションスキルで一貫させる方針はユニークだと感じました。分かりやすく、納得感が高い体系だと思います。(医薬品 / 人財育成部)

≪ディスカッションの感想≫

  • 他社の事例をうかがう機会はなかなかないので、大変ためになりました。ありがとうございました。(金融 / 総務人事マネージャー)
  • 各社の取り組み事例が聞けて、とても新鮮でした。(デジタルコンテンツ企業 / 人事)