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SOGI問題:対応が適切でもカミングアウト後に起こるトラブル

改正労働施策総合推進法が施行され2年が過ぎようとしており、大企業では労働者の
性的指向・性自認に関する対応が実際に発生するケースも増えていると思います。

 

そのような中、性的指向・性自認についてのカミングアウトを受け、アウティングに
十分気を付けながら適切な手続きを踏んで対応していたにもかかわらず、当事者と
トラブルになってしまった経験のある方もいるのではないでしょうか。

 

このようなトラブルを防ぐためには、カミングアウトを受けたあと、当事者への
進捗共有、また心理的サポートを意識的かつ定期的に行うことが望ましいでしょう。

 

ここでいう心理的サポートとは、当事者の情緒面に向き合うことを指しますが、
当事者の想いに同意したり、同情したりすることではなく、中立な立場として
当事者の気持ちを受け止めることをいいます。

 

それではなぜ、当事者への定期的な心理的サポートが必要なのでしょうか。

 

これをカミングアウトのあとに起きる2つのことを背景として説明します。

 

‐‐‐

1.カミングアウトを受けて、職場は当事者からの要望への対応に注力する
2.カミングアウト後も当事者の気持ちは揺れ動き、不利益がないか等不安になる

‐‐‐

これはそれぞれが当たり前のことのようにも見えますが、2つが揃ったとき、
トラブル発生のリスクが上がることがあります。

 


1.カミングアウトを受けて、職場は当事者からの要望への対応に注力する

カミングアウトを受けたあとの社内では、環境調整や処遇検討等、当事者の要望への
対応に注力しています。もちろんアウティングは防がなくてはならず、カミングアウ
トの内容に関わらず情報管理は徹底されるでしょう。

 

対応にあたる人は、情報の共有範囲を管理しつつ、会社としての経験が少ない上に
センシティブで解決策が明確ではない課題に対し、あれこれ思いをめぐらせながら
取り組んでいます。特に、扱いに細心の注意を要する課題であるということだけで、
対応者としては、相当負担が大きいものになります。

 

対応者が対策の検討や社内調整に時間や意識を割かれるため、結果として本人と連絡
をとるのは、進捗があった場合、事務的連絡がある場合、本人に改めて確認すること
がある場合など限られた場面になり、頻度も少なくなりがちになります。

 

そうなると、当事者は社内での検討過程を把握しににくく、今後の変化の見通しも
もちづらくなります。

 


2.カミングアウト後も当事者の気持ちは揺れ動き、不利益がないか不安になる

一方、カミングアウトをした後の当事者は、それ自体がゴールではないため、目的が
達成できるかを気に留めつつ、自身の環境に注意を払いながら過ごします。
アウティングが起きないか、期待する職場環境が実現されるか、不利益を被ることに
ならないか、など、様々な不安に襲われる当事者は少なくありません。

 

不安のあまり、まだ何も起きていない時点から、カミングアウトをしない方が良かっ
たのではないか、と後悔することも少なからずあります。
カミングアウト後の当事者は、以前は気にならなかった周囲の様子にも敏感になりま
す。そして、その少しの変化が自身のカミングアウトと関連しているかもしれない、
と心配に感じることも考えられます。

 

カミングアウト後、周囲の少しの変化に敏感になり、不安の高まった状態にある当事
者にとって、カミングアウトにより社内でどのような変化が起きているか、起きそう
であるかが分からないまま時間を過ごすのは、より不安が高まる要因となり得ます。

 

カミングアウトという双方にとっても大きな出来事のあとでは、その後、当事者の
心配な気持ちや漠然とした不安感などの感情の揺れ動きが起こることを、周囲の人は
もちろん当事者ですら見落としてしまいがちです。

 

会社としては適切に対応したつもりでも、カミングアウト後の当事者の不安定さへの
サポートがなければ、気づかぬうちに当事者の不安感が大きくなることがあります。
きちんと対応されていないのではないか、アウティングが起こっているのではない
か、業務上の不利益を被ることになるのではないか等、不安感が不信感に変化し、
トラブルが生じる可能性があります。

 

センシティブなテーマであることにより、
会社としては構えた対応となることが多いでしょう。

 

だからこそ、並行して当事者とのコミュニケーションを通常よりも意識的かつ定期的
に、会社の意見や自身の感情は入れず、中立的な立場で行うことが大切です。

 

(アソシエイトコラボレーター  種市 冴美)

  • 安全衛生・メンタルヘルス
  • 人材採用
  • その他

公認心理師/臨床心理士
【専門領域】障がい者雇用の企業支援、精神障がい者の採用・定着・育成支援

精神科クリニックのディケア、小児専門クリニックでのアセスメント、公立学校でのスクールカウンセリングの研修を経験。その後、加えて教育現場でソーシャルワーカーとして事業に携わっていた。そのほか、私設カウンセリング室にてカウンセリング業務に従事。

種市 冴美(タネイチ サエミ) コラボレーター

種市 冴美
対応エリア 北海道・東北(青森県) 関東(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県)
所在地 渋谷区

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