中小企業経営者のための人事戦略入門-役割による人事制度全体像
本コラムは【第1回】で述べたように、秋山がみのり経営研究所ホームページに発表した記事を転載するものです。
「中小企業の経営者のための人事戦略入門」
【第12回】役割に基づく人事制度全体像と職能資格制度の構造的問題点
2005年10月27日に「目からウロコの人事戦略(実践編)」と題する講演会を開催いたしました。満員で開催させていただき、ご参加頂いた方々に改めてお礼申し上げます。
先月で1年間このコラムを執筆させて頂き、その区切りでの講演会でした。コラムは中小企業のための経営に直結した人事制度創りを出発点として、その設計のプロセスにおける経営ビジョン・経営哲学の重要さ、組織設計における役割・貢献責任の位置づけ、そして役割の重要度測定まで来たところです。そろそろ締めくくりの時期に来ています。
従来の講演会では概念的なところが多かったのですが、今回は一歩踏み込んで給与制度の具体例などを盛り込んでみました。表題の実践編を期待されてこられた方にどの程度ご理解いただけたか、不安も残りますが、幸いアンケートでは良い評価を頂けました。説明の内容はみのりが数多くの中小規模の企業に行なったコンサルティグを基にしています。
具体的な内容としては「役割に基づいた給与制度」と「人件費の管理」に関して具体例を交え説明させて頂きました。従来の職能資格制度に代表される年功的な賃金管理における問題として、人件費管理のための評価の強制配分、結果としての相対評価などを指摘しました。様々な会社で評価の仕組みを議論するときに、「絶対評価は無理だ」と言う意見を良く聞きます。この背景に人件費のテーブル管理があります。人事は現場における人事管理を効果的に行なうための仕組み作り・支援が目的のはずですが、いつの間にか現行の仕組みが前提となり、それを継続するために現場に無理を強いているようです。
例題としてある部における3人の課長の評価と昇給を説明しました。その部では3人とも今期期待通りの好業績で、部長が全てにA評価を付けたのです。ところが人事部から差し戻され、結果としてA,B,Cの3段階の評価に分けざるを得なかった。現実としてよくあるケースです。部長の悩む姿が眼に浮かぶようです。この会社ではその部長の悩みを解決するために、部長に対する評価者訓練と称するトレーニングを時間かけ実施しているのです。その内容はこのようなケースの場合どうやって差をつけ、どう3人を説得するかと言う、およそ現場の仕事の生産性とは無関係の内容です。好業績を出したにもかかわらず差をつけられた課長が納得するとは思えません。結論は相対評価だから仕方が無いというものです。
人事部は「今の制度ではこうしないと人件費管理が出来ない」と言います。確かに賃金テーブルで管理していると,一見数字が明確で便利のようです。社員への説明も簡単です。しかし人事の本来の機能は社員の動機付けではないでしょうか?自分たちのやり方に固執して社員があるいは評価者が不便・不利益を蒙るとしたら、本末転倒と言わざるを得ません。
そこで役割給の登場です。次回はこのコラムの締めくくりとして役割給の全体像を説明したいと思います。講演会で説明した内容の繰り返しとなりますが、再度ポイントを整理したいと思います。特に社員の動機付けには「絶対評価」が不可欠です。絶対評価を可能とする仕組みとしての役割給。そこには既に何回かにわたって説明してきた役割・貢献責任の定義・特定、そしてその測定など前提となる仕掛けがあります。
人件費の管理は役割給制度の中の昇給・賞与管理で出来る部分と、会社の経営全体の中で総合的に位置づけ管理していくやり方と二つのアプローチがあります。前者は人件費総額が与えられ、その中での効果的配分を目指すものです。次回はこの意味での人件費管理のやり方に触れます。総額が決まっていても、絶対評価が可能なやり方です。
後者は人件費総額そのものをどうとらえ、どう管理していくか、限りなく経営戦略・事業計画策定に近い概念です。今回のセミナーでは「付加価値分析による人件費管理」について説明をしました。付加価値率から労働分配率まで、自分の会社のあるべき姿をとらえ、長期的にどのような姿に持っていくか、そこから一人当たりの人件費レベルを考え、個々の社員の給与レベルを考える。このようなアプローチが人事部を「経営を支える機能」へと脱皮させる一つの足がかりになるだろうと考えています。このテーマは改めて機会を捉え説明したいと考えています。
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秋山 健一郎(アキヤマ ケンイチロウ) 株式会社みのり経営研究所 代表取締役
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