G研報告:幹部グローバル化の課題は英語力強化にアリ!
先週、第119回グローバル人材育成研究会(G研)
「幹部グローバル化の課題は英語力強化にアリ!ハーバード・ビジネス・スクールのリーダー育成最新動向」を開催した。
■第一部では私から、トップリーダーに必要な英語力に加え、
エグゼクティブ・エデュケーションが人材育成の手段として注目される理由をお伝えした。
そもそもトップリーダーに必要な英語力とは何を指すのか?
1.英語力そのもの
ビジネススクール派遣では最低でもTOEIC800点は必要である。
800点に到達していたとしてもビジネススクールの授業では、60%の理解というのが私が聞き取った平均値である。
2.英語の勘(足りない分は勘で補う)
全体のロジックから会話の内容を理解するセンスを磨くことが重要。
例えば、英語でジャーナルを読む、TEDなどのMOOCで日々スピードと表現に慣れる、頻繁に使われるイディオムを理解しておく、などが必要となる。
3.MBAフレームワーク・用語
英語力が高くても、MBA用語・フレームワークが理解できていなければ、ビジネススクールのクラスにはついていけない。
例えば、Value Proposition、Business model innovationなどの用語を英語で説明できる力は、トップリーダーには必須である。
では、どのようにトップリーダー達の英語力を短期間で上げるかについては以下を提言している。
1. キュレーション型プログラム
一人一人の目的とゴールに合った学習方法や教材・素材を、枠のない、オープンなリソースから選んで個別化する。
キュレーション型プログラムを行うことで、「こうあらねばならぬ」という義務感ではなく、内面からの目的意識を醸成する。
また、「やらされ感」ではなく、自由に、新たなアイディアを試していくことができる。
ほどよく高い目標に向かって少しずつ上達していく過程、「フロー状態」になる。
物事に没頭した状態になり、それが楽しみに繋がっていく。それがキュレーション型である。
2. ベストマッチのコーチング
過密なスケジュールをこなす役員にありあわせの英語レッスンは全く合わない。
有能なコーチをつけ、協働作業で個人個人にあったプログラムと講師を作り上げていく。
「非常に役に立った」と思わせることの出来る専門コーチをつけることで、モチベーションを最大限に引き上げることが可能となる。
後半では、なぜ、今、エグゼクティブエデュケーションが注目されているのか4つの理由についてご説明差し上げた。
・グローバルリーダー育成の場として(世界トップの教授 X グローバルエリート)
・優秀人材のリテンション
・後継者育成
・クロスボーダーM&Aの増加
しかし、エグゼクティブエデュケーションに派遣できる「真のリーダー候補」を見つけることは容易ではない。
では、どのようにしてリーダー候補を育成するか?
多くの企業で実施いただき一番効果的なのが、
半年~1年間でグローバル人材に必要なマインドセット、ビジネスコミュニケーション、経営学などを英語で学ぶ「選抜人材グローバル化プログラム」である。
例えば、これを5年間継続すると100人のグローバル人材を育成することができる。
よく耳にするのが、
「今期はビジネススクール派遣対象者がいたが、来期は英語力などを勘案すると候補者がいない!」という話だ。
リーダー候補人材をプールしておかなければ、すぐに枯渇してしまう。
常に派遣できるリーダー人材を確保しておくことは強い組織を作りつづけるためには重要である。
■第二部では、ハーバードビジネススクール(HBS)のディレクターであるPhilippe Labrousse氏、
HBS日本リサーチセンター長 佐藤信雄氏よりグローバル人材育成のトレンド、プログラム内容詳細、ケースメソッドについてお話しいただいた。
最新の研究データによると、
例えば、リーダー育成に1.5倍の投資をしている会社は、競合の利益より3倍になっているという。
リーダー人材の育成は、グローバルで生き残るためには必須であることは明確である。
「リーダーとは、組織の問題解決のためにあらゆる手段を講じ続ける人」だとPhilippe氏は言っていたが、私も全く同感だ。
組織の問題はどんどん複雑になっており、決断のスピードがますます重要になっている。
また、佐藤氏よりなぜHBSでは、ケースメソッドを取り入れているかお話しいただいた。
ケースメソッドには、唯一絶対の正解はない。
また、限られた情報の中で決断しなければいけない。
レベルも経験も高い受講者同士から互いに学びあうことで、最高の結果が出てくることがある。
また、今回は特別にHBSのプログラム参加者である
AGS Four Winds Japan マネジメント・ディレクターのBen Garcia氏より
リビンググループでの体験談、ケースメソッドからどのような学びがあったか共有いただいた。
リビンググループとは、ケースを一緒に読み進め、ディスカッションをする8名からなるグループである。
衣食住を共にし、日々互いに意見をぶつけ合うことで、最後には友情も深まり、
プログラムが終了したあとも仕事で困った時は互いに連絡を取り合い相談しあったりすることも多いという。
Garcia氏は、2009年にHigh Potential Leadership Programに参加、
また2011年にはシニア・エグゼクティブ向けのプログラムGMP(General Manegment Program)に参加している。
GMPとは、機能部門マネージャーから熟達したジェネラル・マネージャーになるためのプログラムであり、
部門横断的に様々な経験&知識を持ったグローバルで活躍する参加者との活発な意見交換を通して、
判断力が強化されるだけでなく、ジェネラル・マネージャーとしての自信、リーダーシップ力を高める内容となっている。
1日3つのケーススタディ読んでくることが日々の宿題として出される中、
8名のリビンググループを上手く活用し、このケースはA氏が読む、あのケースはB氏が深く分析してくるなど、
個人の負担を減らし役割分担を決めながらケースを読み進めたという。
実はHBSでは、わざと1日3ケースという個人ではこなすことの出来ない量の課題を出している。
そうすることで、分担することの大切さ、チームワークの重要さを学ばせているという。
GMPは5つのモジュールからカリキュラムが構成されており、
モジュール3では実際に学んだ内容を実践するために一度日常生活に戻るという仕組みをとっている。
Garcia氏は、モジュール3での体験を”消火ホースから勢いよく様々な情報が溢れだし、
新しい眼鏡で世界を見ているようだった!"と話していた。
今まで気にも留めていなかった例えば、レストランでのカスタマーサービス、クリーニング店での宣伝方法、電車のオペレーションなど、
GMPで学んだことが次々と思い出され、日常生活での様々な状況においても分析するようになったという。
また、より物事をポジティブに捉え、難しい課題に対してもチャレンジしていく気持ち、
また部下のモチベーションを上げることにも今まで以上に積極的になった。
GMPで、「正解がない」ケースを、世界各地からの多様なクラスメイトと一緒にスピーディーに深く議論することで、
自分のリーダーシップが変化・深化・進化していったのだ。
Garcia氏の経験談、またHBSのリーダー育成の最新動向を聞き、改めてまさにビジネススクールが、”Transformational Experience”と言われる所以であると心から感じた刺激的な1日であった。
- 経営戦略・経営管理
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「グローバル&自立型人材育成」をミッションとし、プログラムの企画・開発・コーディネートを手掛け、講師としても活躍!
海外のトップビジネススクール(HBS・LBS・IMD等)、国内外のトップトレーナー(HRDコンサルタント、コミュニケーション・異文化・語学スペシャリスト等)との協働で、400社以上の企業向け人材育成に携わっている。
福田 聡子(フクダ サトコ) グローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ株式会社 代表取締役社長
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