失敗しないエンゲージメントサーベイの選び方 その2
人的資本経営の流れで注目される「エンゲージメント」。多くの企業が自社のエンゲージメントの状態を測定し、その向上に向けて、エンゲージメントサーベイ導入の検討を行っています。現在日本には多くのエンゲージメントサーベイがあふれていますが、その多くが正確に「エンゲージメント」の測定ができていないのはご存知でしょうか?本コラムでは、人的資本経営のバロメータとして、正しくエンゲージメントを測定できるサーベイを見極めるポイントについて、数回にわたり解説します。
前回のコラムは、エンゲージメントが注目される背景と、そもそもエンゲージメントとは何を指すのか、エンゲージメントの定義について解説しました。今回は、エンゲージメントサーベイに求められる要件について解説します。
エンゲージメントサーベイは単に人的資本情報として開示するために行われるべきものではなく、従業員のエンゲージメント向上に向けた継続的改善を推進するバロメーターとして利用される必要があります。(図1)
そのため、エンゲージメントサーベイは主に以下の2つの目的を有していると言えます。
1)エンゲージメントの現状を把握することで、改善のための打ち手を明確にすること
2)エンゲージメントを指標として、変革施策実施の効果を検証すること
このような用途を可能にするために、エンゲージメントサーベイは以下の要点を満たしている必要があります。
■エンゲージメントを測定すること
多くの企業において、これまでにも従業員満足度調査(ES調査)や組織診断サーベイが行われてきました。それらのサーベイでも組織の課題は把握できるため、改善策の検討や効果の検証に用いることは可能です。しかし、それらの改善策によってエンゲージメントが高められている保証はない(検証できない)ため、エンゲージメントサーベイには、従業員のエンゲージメントを確認するための設問を含んでいる必要があります。
■エンゲージメントに影響を及ぼす要因を測定すること
エンゲージメント向上に向けた施策を検討するためには、エンゲージメントの値の高低や変化だけでなく、それに影響を及ぼす要因が把握されなければなりません。エンゲージメントサーベイを行うたびに、ヒアリングをして原因分析を行うといった労力をかけることは現実的ではないため、一度のサーベイで原因分析までできる尺度を含んでいることが望まれます。そのためには、エンゲージメントに影響を及ぼす尺度が事前に把握され、設問に含められている必要があります。
■エンゲージメント向上によるアウトカム(効果)を測定すること
エンゲージメント向上による効果として、パフォーマンス(業績)の向上や離職率の低下といった成果につながることが期待されますが、そのような成果が現れるのには時間差があったり、他の要因も関連したりするため、成果に結びつく、従業員の「意識や行動の変化」が生じているかを把握することによって効果検証が可能になります。そのためには、成果につながる意識や行動を尺度として含めておくことが必要です。
上記のようなエンゲージメントの要因からアウトカムまでを含む尺度の因果関係に関して、企業ごとに自社で検討するのは容易ではありませんが、既に学術的に検証されたモデルが存在しています。その代表がワークエンゲージメントの研究に基づく、「仕事の要求度-資源モデル(J-DRモデル)」です。次回のコラムでは、このモデルについて解説します。
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日本において、1on1とOKRを含む、パフォーマンスマネジメントの重要性をいち早く唱え、多くの企業の経営者と共にマネジメント改革に携わる。
東京大学法学部卒業後、アクセンチュアにて、人と組織の変革を担当するチェンジマネジメントグループの立ち上げに参画。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナー、エグゼクティブコミッティメンバーを歴任後、アジャイルHRを設立。
松丘啓司(マツオカケイジ) 株式会社アジャイルHR 代表取締役社長
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