成人発達理論を活用した1on1研修
皆さんご存知のように、Googleが実施した「プロジェクト・アリストテレス」と名付けられた調査において、世界の180チーム(エンジニアリング系のプロジェクトチームが 115、営業チームが 65)を分析した結果、心理的安全性が労働生産性を高める重要な要素であると結論づけました。また、チームを成功へと導く5つの鍵として、「心理的安全性」「信頼性」などが大切だと発表されました。
組織運営において、「心理的安全性」「信頼性」が大事だということを、誰も否定しないと思います。一方で、これを読んでマネジャーが、「自分の組織は心理的安全性がない」「部下との信頼関係が築けていない」と自己洞察できる人は少ないように思えます。
弊社でマネジャー向けの1on1研修を行う際は、自分が統括している組織が、本当に「心理的安全性」「信頼性」があるかを理解してもらうために、次のような演習を行っています。
まず、心の構造を理解する
研修の冒頭に「心の構造」を解説しています。人は、思考とは別に生存本能を守る行動を選択することがあります。心の構造を理解することにより、ついつい起こしてしまう「反応行動」に自覚的になることが、コミュニケーションの質も変える一歩になります。
体の反応は、自分の意思に関わらず、体に起きる現象です。緊張するときは、頭で考えて緊張しているのではなく、また緊張を制御することもできないので、反応という表現を使っています。なぜ体の反応が起きるのかというと、人間は妄想的に最悪のストーリーを考えているからです。プレゼンテーションの場面などでは、質問されて答えられなかったり、頭が真っ白になったりなどの場面を無自覚に想定(妄想)しているからです。この妄想で感情が動きます。
一方で、その想定(妄想)が実現したときに、何が脅かされますか?と聞くと、自分の立場・自分のプライド・自分の時間・自分のプライベートなどが明らかになります。そこで、自分の深層にある欲求・価値観が明らかになります。この深層にある欲求・価値観が脅かされると妄想すると、体の反応から「反応行動」が引き起こされます。この無自覚な「反応行動」は、生存本能から起きるものなので、人間誰しもに置きます。
・本当は意見を述べたいけど、ついつい抑えてしまう。
・本当は説明を簡潔にしたいけど、ついつい長く話をしてしまう。
・本当は明確に意思決定したいけど、ついつい先延ばしにしてしまう。
・本当は〇〇さんと仲良くしたいけど、ついつい声をかけることに勇気が出ない。
などいろいろな反応行動があります。
自分の反応行動を挙げてみる
ここで、参加しているマネジャーに下記のような問いかけを投げています。
【問い】
部下育成の場面において、自分の意図とは異なる反応行動を列挙してみてください。「本当は・・・したいけど」と「ついつい・・・してしまう」という言葉で表現してみてください。
【受講者の回答例】
本当は良いところを見つけて褒めたいけど、ついついダメなところを探して指摘してしまう。
本当は部下の自主性を尊重したいけど、ついつい細かい業務指示をしてしまう。
本当はいろいろと部下の意見を聞きたいけど、自分の経験を話してしまう。
本当はやってもらいたいけど、時間ないと自分がやってしまう。
本当はじっくり部下の意見を聞きたいけど、時間がないので考え方を誘導してしまう。
本当は厳しくしたいけど、ついついやさしい表現をしてしまう。
本当は自分の思い通りの業務担当を決めたいけど、ついつい部下の意見を先に聞いてしまう。
本当は言いたいことがあるけど、ついつい我慢してしまう。
皆さん、「反応行動」にものすごく心当たりがありそうです。ついつい手や口を出してしまう派と、ついつい自分の想いを抑えてしまう派がありそうです。
自分の反応行動を部下はどうみているか?
ここで研修に参加しているマネジャーに投げかけます。
【投げかけ】
皆さんが部下だったら、上司の反応行動を見たら、どのように感じますか?
皆さんは、「信頼されてない」「任されてない」と感じますと回答されます。
ここで、ようやく、
〇自分が部下を信用していないことを表現してしまっていること
〇自分が部下の成長を阻害している要因であること
に気づけます。
そうして、自分が部下を信用していないことに気づけるからこそ、部下の意見に耳を傾けようと内的な変化が生まれます。
部下の話を傾聴することで、自分の内面の変化も起きることを体験
ここから、ようやくスキルの習得ができる準備が整います。
①議論と対話の違い
②リフレクションとは
③相手の世界観に立つ
などコミュニケーションスキルを身につけながら、部下の話を傾聴することで、自分の内面の変化も起きることを体験してもらいます。
(執筆:株式会社グローセンパートナー代表取締役 島森俊央)
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一部上場企業から中堅・中小企業、ベンチャー企業まで、人事制度導入や役員/管理職クラスの教育研修を通じ、企業の業績向上と社員活性化の実績多数
加藤洋平氏から直接、成人発達理論を学び、既存のビジネスから一歩異なる視点でアドバイスができることが特徴。新入社員から管理職まで全階層に心の成長を軸にした研修実績を重ね、人材育成や人事制度、1on1等へ、成人発達理論の活用の幅を広げている。
島森 俊央(シマモリ トシヒサ) 株式会社グローセンパートナー 代表取締役
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