メンタル不調者の発生、人事が考えるべきポイント!
メンタルヘルス対策が注目を浴びる中、人事・総務の担当者の方が、メンタル疾患について、特に「新型うつ」などを中心に、勉強されています。精神疾患は誰にでも起こりうる病気。とりわけ「うつ病」において生涯有病率13%-15%と言われ、自分がならなくても、周囲でなった人がいる、そんな身近な病気です。そして一旦、発病すると回復するまでに、体の病気よりも長期間かかることも特長です。ある調査によると、休職して復職するまでの期間は6ヶ月が頻度としては多いという結果がでました。しかし、治療とリハビリによって回復する可能性が十分にあります。人事・総務担当者が病気への理解を深めることはとても良いことで、産業医としても大変助かります。
以前、とある会社で担当者の方から
「この人は、うつ病ですか?それとも双極性障害ですか?新型うつですか?」
と質問を受けました。
従業員のことを理解しようと大変熱心で、その姿勢には感心したのですが
病名ばかりに関心を奪われていると、思わぬピットフォールに陥ります!
担当者は不調者の様子を上司からの報告などから、よく把握していて、あながち間違いではなく的をえていることも多いのですが、精神疾患の診断名をあれやこれやと分類することは、人事の職務を超えています。
人事として診断書に基づいた病名を把握しておく必要はあります。
病気によって多少会社の配慮が変わってくることもあるでしょう。しかし、その扱い方が問題なのです。
不調者を病気で分類すると不思議と安心しがちですが、会社は診断する場所ではありませんし、病名で分類するだけでは、大事な問題を見落とす恐れがあります。
また、診断書の診断名は、同様な病態であっても主治医の配慮や本人の意向を汲んだ病名になっていることが多く、「うつ病」「抑うつ状態」「適応障害」「自立神経失調症」などさまざまです。そのひとつひとつを会社側で区別する必要はありません。診断書の病名が曖昧な場合は、産業医の意見を参考にするか、産業医がいない企業は、不調者本人の了解を得た上で、主治医へ問い合せるのも一つの方法です。こんなときこそ、ぜひ御社の産業医を活用してください。
では不調者が発生した場合、人事が考えるべきポイントをご紹介します。
多くの産業医も下記のポイントで事例を分析しています。
●事例性
職場での問題は何か、勤怠不良や作業効率の低下、業務への支障、職場や同僚への影響
例)仕事が手につかない、ミスが多い、遅刻、周囲が困っているなど
●疾病性
健康への影響があるか、不調な症状があるか、病気の可能性があるか
例)抑うつ、不安、不眠、休養を要する状態など
●業務起因性・作業関連性
発症に業務が大きな要因になっていないか
症状の悪化に、業務の作業が関連していないか
労災認定基準に示されているような事柄がないか
例)長時間労働、大きな異動、昇進、長期の出張、上司とのトラブルなど
●個人の問題
本人の性格、家族関係、私生活での大きな変化など
●管理状況
上司、担当者が把握できているか
●全体的なリスク
職場にとっての損失
裁判や労災などのリスク、
自殺、長期化など個人にとってのリスク
●社内の規定(不調者発生時のルール)
できるだけ例外をつくらない
● 産業医面談
関与してもらい、医学的な見地から意見をもらう
●最終的な落としどころをみつける
本人と業務内容の適合性や、このまま業務を続けられるのか業務継続性を検討し、制限勤務、休養、配置転換など落としどころをみつけていきます。
この中でも、まず最初は「事例性」・「疾病性」・「業務起因性・作業関連性」の観点が重要です。
事例性では問題解決の焦点を個人の病気ではなく、職場の問題と考え、これをいかに減らすかが一つの目標です。
疾病性では、病気の可能性があるならば、産業医に評価を依頼し、医療機関への紹介や診断書等による病気の把握を行います。個人情報保護に配慮しつつ、会社側の安全配慮義務を果たすために必要な範囲で把握します。作業関連性では労災や民事上の損害賠償等の視点で会社の責任を把握します。これらを管理職と担当者間で共有し、従業員の健康を守り、会社としても責任を問われる可能性を少なくするような対応を検討していきます。ほとんどのケースは「事例性の発生」として人事に情報が入り、産業医による評価の起点となりますが、突然診断書をもってきて「疾病性の発生」から入ってくることもあります。
職場では精神疾患名を気にして分類するのではなく
評価や対応に困ったときは、特に事例性、疾病性、業務起因性・作業関連性のポイントで見ていくと、担当者としてメンタル不調者の対応が適確に行えるはずです。皆様のメンタルヘルス対策にお役に立てれば幸いです。
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