一人の学びをチームの学びと成長につなげOJTを成功に導く仕掛
先日、弊社の「OJTリーダー育成セミナー」のフォローアップが終了し、多くの方にご参加いただきました。ご参加くださった皆様、大変感謝いたします。
このセミナーに参加された皆様のご意見から各社共通する問題が見られました。その問題解決のためにどのように研修を活かしチーム全体の学びと成長につなげていくかをお伝えしていきます。
セミナーに参加された皆様の多くが、ご自身の変化が周囲に好影響をもたらすこということを実感され、その良い変化をさらに加速させたいという思いを感じられたようでした。
その一方で、セミナーの中で新人育成担当をされているOJTリーダーの参加者様が「一人では難しい」とおっしゃっていたのも印象的でした。また別の参加者様からは、同じ職場のOJT担当者が新人を「使えない」と言っているのを聞いてがっかりした、というお話も伺いました。
こうした問題を解決するには、どのような取り組みが有効でしょうか。
【OJTで起こりやすい問題―周囲の協力が得られない】
前回のコラムでは、「育成はOJTリーダーが主体となって行いますが、リーダーだけに育成の責任を持たせるのではなく、同じ部署や職場のメンバーに対してチーム全体で育てていく意識をもってもらえるように、周囲との連携を図っておくこと」とお伝えしていました。
実際のOJTでは、「この部分は私が教えるが、別の部分は他のメンバーが教える」ということもよくあることです。
複数のトレーナーが専門ごとに教える場合や、チームでOJTを行う場合、OJT育成担当者に限らずチーム全体で関与を促進するマインドセットが求められます。
しかし、今回のようにせっかくセミナーでOJTによる育成のポイントを学んでも、一人の学びをチームの学びとしないと、そこで成長は止まってしまいます。
【ご存知ですか?「伝達研修」】
理想はわかっていても、実際は仕事で忙しい中、同じ研修やセミナーを全員が受けるということは現実的ではありません。得た知識を共有するために改めて勉強会のような時間を取ることは難しく、研修のたびに報告会を開くというのでは、研修やセミナーに参加すること自体がおっくうになってしまいます。
そこで効果的な方法の一つとして「短時間の伝達研修」があります。
「伝達研修」は一人が学んだことを職場に展開する方法です。研修と言っても学んできたことをそっくりチームに伝えるわけではなく、短時間で朝礼やミーティングの時間を使って行います。
「短時間の伝達研修」の進め方(5分から15分)のイメージは、
・研修やセミナーの参加者が、プログラム全体を紹介する。
・特に印象に残った点とその理由を紹介する。
・職場のメンバーに意見や感想を求める。
このようにして「伝達研修」を行っていきます。
【学びをチームへ還元する】
例えば朝礼を活用する場合、研修参加者が参加した研修のプログラムの概要をサッと紹介した後、「新入社員意識調査では理想的な上司や先輩に求めるものは仕事について丁寧な指導をすることらしい」と学んできたことの中で気になったことを発表したり、ミーティングを活用する場合は、ミーティングの中で発表時間を組み入れ「この間の研修では新入社員の居場所づくりの話が出て興味深かった」など語ってもらいます。
このように研修で学んだ一部を共有し、共通認識や共通言語化をしていきます。
それに対して「他にはどんな調査結果があるのだろう」や「居場所ってどんなことすれば出来るのですか?」などメンバーから質問や反応を引き出しさらに学びを深める機会をつくります。
また、研修参加者が、学んだことを振り返りアウトプットすることで知識を定着させ、モチベーションを持続させるメリットもあります。
【人材育成担当者としての「仕掛け」方】
「伝達研修」をするにあたっては研修やセミナーを企画する人材育成担当者が「事後課題」として設定しておいた方が取り組みやすいという面もあります。
研修を企画した人材育成担当者から参加者に対して研修やセミナーに参加する前に「研修後に「伝達研修」を行ってください。その実施後に人事に報告書を提出してください。」ということフォーマットをつくり案内をしておきます。合わせて、参加者の上司にはその時間を設けてもらう意図と方法を伝えておきます。
はじめての取り組みは現場からいろいろな声が上がるかもしれないですが、研修やセミナーをやりっぱなし、「伝達研修」を任せっぱなしにしないためにも、環境づくりや周りからの支援も重要です。習慣化されていくまで粘り強く取り組みます。
今回のOJTセミナーのように、チームとして共通認識や共通言語を持つことのメリットがあるようなセミナーは、「短時間の伝達研修」によって、お互いに関心をもって聴く姿勢も身につけられ、新人メンバーへのヒアリングや伝え方への訓練としても期待できます。
人材育成に関する研修やセミナーに関わらず、学んだことをメンバーと共有することはチーム全体の知識の底上げも出来るでしょう。
【まとめ】
チームでの育成を成功させるために、一人の学びをチームの学びとして還元し共通意識・共通言語を持つことでチームのコミュニケーションを活性化させ問題解決や人材の成長大きく貢献することができます。
『研修を受ける⇒知識の共有(を他のメンバーに行う)⇒メンバーの反応(フィードバック)を得る⇒共通の認識・言語を持つ(同じ方向を向いて取り組む)⇒新しい問題や効果の発見をする』というスパイラルしていくことでチームの結束と成長は促進されます。
お互いの学びや仕事に関心を持ちリスペクトの精神を示す風土づくりは一朝一夕にできるものではありません。一人の学びをチームの学びに還元する「短時間の伝達研修」のような小さな一歩を積み重ねることで、チーム全体の結束を高め、メンバーの成長につながる大きな成果をもたらしてくれます。
なお弊社では「OJTリーダー育成セミナー」「新任マネージャ(次期管理職候補者)育成セミナー」を行いますが、その中で「伝達研修」についても紹介し、職場で共有を図る意図とポイントをお伝えします。
良い循環のスタートとして人材育成や関係性の構築、組織力強化のためのマネジメントなどを学んでいただければ幸いです。ご興味のある方はセミナー案内もご参照ください。
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