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ナポレオンの遺物「男尊女卑社会」を変えたフランスの取り組み

性別を問わず誰もが活躍できる社会の実現に向けて、世界の国々が様々な取り組みを行っています。

 

日本でも、政府が203030という目標を掲げ、「2030年までに女性管理職比率を30%に引き上げよう」と取り組んでいます。

しかし、世界経済フォーラムが発表している「ジェンダー・ギャップ指数」における2022年の日本の順位は、残念ながら146カ国中116位でした。日本はまだ男女格差が大きい国であることが分かります。

 

一方で上位にランキングしているのは、多くがヨーロッパ圏の国であり、それらの国々は格差が少なく先進的であると評価されています。

 

さて、その中でも、近年、ジェンダー平等が急激に推進された国として、フランスが注目されていることはご存知でしょうか。

 

ナポレオンは史上最悪の女性差別主義者!?

西ヨーロッパの大半を支配した英雄として名高いナポレオン1世は、実は極端な男尊女卑の思考を持っていたと言われています。

 

ナポレオンが起草に深く関わったとされるナポレオン民法典は、妻の無能力、夫への従属を基調としていたと言っても過言ではありません。この法律が1804年に施行されてから、フランスの女性の地位は目まぐるしく低下し、女性蔑視の思想が定着したのです。

 

このような歴史から、今なぜ、フランスはジェンダー平等の先進国になったのでしょうか。

 

きっかけは1968年「五月革命」

フランスでは、1960年代後半から1970年代前半にかけて、社会活動および政治活動への女性の進出や、女性の権利、地位を守るための意識改革を求める女性解放運動が起こりました。

その中でも、1968年の五月革命が直接の契機となって、人工妊娠中絶の合法化、家父長制からの解放、雇用・職業における男女平等など、様々な分野において大規模なデモが行われました。この社会的ムーブメントがフランスにおける女性に対する意識を変えたといえます。

 

ジェンダー平等に加速をかけた「パリテ法」

1970年代に入ると、女性が社会的に劣っているとされるのは、社会制度(教育など)によるものだという考えが広まりました。

その後も、様々な分野で男女平等の動きは見られましたが、2000年6月に制定されたパリテ法は顕著な契機の一つと言えます。

 

パリテとは、フランス語で「均等」「対等」を意味する言葉です。

この法律は、男女間の権利や機会の平等を促進し、性別に基づく差別を防ぐことを目的に制定されました。具体的には、選挙の際「比例候補者名簿の記載順の男女交互」「政党候補者の男女同数化」が定められ、違反した場合、名簿は受理されず、また、候補者の男女差が2%を超えた場合は、国から政党に支給される助成金が減額されるといった罰則が設けられました。

 

このパリテ法がフランスのジェンダー平等に推し進めたとされ、現在では政治、経済など様々な分野で女性が活躍しています。

 

女性の社会進出と男性の育児参画

フランスの女性が社会進出できた理由の一つに、男性による家庭・育児への参加があります。

 

フランスで男性育休制度が施行されたのは2002年で、約70%という高い育休取得率を得ていました。2021年7月からは、最長28日間の休暇取得が可能となり、そのうち7日間は取得が義務化されました。また、一定の条件を満たせば休暇中の手当が保証されます。

さらに、7日間の取得義務に違反した企業には、1人あたり7,500ユーロ(約100万円)の高い罰金が科せられます。このことからも、国が本気で男性育休に取り組んでいることが分かります。

 

また、子どもが生まれる前後での育休取得を可能にしたため、早い段階で夫婦が育児に携わるようになり、子どもの成長後も男性の家庭への参加が促進されていると言われます。

 

男性の家庭・育児への参加が促されたことで、フランス社会は「女性は家庭にいるべき」の思想から抜け出すことができ、今日のような女性が安心して働ける国になったと言えます。

 

日本企業が取り組むべきこと

日本は家父長制の歴史が長かったため、男女が完全に平等に扱われるには今後も時間がかかることが予想されます。

 

社会や企業などで誰もが性別に関わりなく活躍できる風土を作るには、将来を担う若者世代と私たち自身が平等の意識を強く持つこと、そして、企業や国が風土と仕組みを変えるための体制を整えることの双方が必要です。

 

フランスでも、当事者である女性たちが、「このまま女性の権利・立場が低いままではいけない」という意識を強く持ち、デモ、ストライキなどの社会運動を起こしました。

 

その後、年月はかかりましたが、国が社会運動とその潮流を受け入れ、女性が男性と同様に活躍できる場をつくるための体制を整えてきた結果が今に繋がっているのです。

 

日本では、最近の取り組みもあって、すでにZ世代はジェンダーや女性活躍に対して感度が高いと言えます。しかしながら、企業風土や国の制度が間に合っていない箇所がまだまだあります。

 

世界各国に比較して日本での取り組みは始まったばかりで、制度が整っていないのも当然のことです。ですが、目に見える成果が少ないからといって、その場で足踏みをするのではなく、1人ひとりがこのままではいけないと思えるよう、あらゆる人に対して意識変革を促し、組織が実現しようとする取り組みを続けることが重要です。

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