VUCA時代における人財教育~インバスケットとは②~
前回は、VUCA時代においては「問題解決型人財」の育成が組織の課題であること、そのために、「実践できる教育」、「アウトプットにつながる教育」、「自己管理ができるようになる教育」、そして「リモートマネジメントができる高度なマネジメント力を育成する教育」が今組織で求められている人財育成の特徴だとお伝えしてきました。
この教育ですが、実はインバスケットの性質といくつかの点で合致しています。
だからこそ、今多くの企業や団体でインバスケットが導入されているといってもよいのかもしれません。
そこで、今回はインバスケットの性質についてお話をしたいと思います。
インバスケットには3つの性質があります。
・シミュレーター
・テスト
・気づきのツール
それでは、この3つの性質についてお話をしていきましょう。
インバスケットで本番での失敗をふせぐ
まずは、シミュレーターというインバスケットの性質についてお伝えしていきましょう。
シミュレーターとは模擬体験ができるツールだということです。
そもそも人は成長をしていくために模擬体験を欠かすことはできません。
例えば、自動車免許を取得する際のドライブシミュレーターで運転の練習をした方も多いでしょうし、会社や学校の防災訓練を体験した方もいらっしゃるでしょう。
このように私たちは模擬体験を繰り返して、学習し成長しているといっても過言ではありません。
では、なぜ模擬体験が必要なのでしょうか?
それは本番で失敗をしないようにするためです。
自動車運転や災害時に失敗をしてしまうと人命にかかわるような取り返しのつかない事故につながりかねません。
そうならないように、模擬体験で失敗をしてどこがよくなかったのか改善をしていくのです。
大事なことは、模擬体験でうまくいくより失敗をすること。
インバスケットも同じです。
インバスケットは次ステップの模擬体験ができるツールです。
自分が係長、課長、部長など次のステップに上がったときにどこで失敗をするのかを知ってほしいのです。
そうすることで、自分が次ステップに上がったとき、どのような仕事が求められるようになるかがわかり、すぐに結果を出せるような準備が可能になるというわけです。
答えのないテスト
インバスケットの性質2つ目の「テスト」について考えていきましょう。
インバスケットはよく「答えのないテスト」だと言われます。
これは、業績が10%上がったか、目標達成が120%達成したかなど結果を評価するためのものではなく、結果に至るまでのプロセスを評価するためのものだからです。
これだけでは、少しわかりづらいかもしれません。
そこで一つ例を出してみましょう。
Aさんは高級外車を購入したそうです。
この高級外車を購入したという判断は果たして良い判断でしょうか?それとも、悪い判断でしょうか?
この高級外車を購入したという判断が良いのか、悪いのかはわからないと思います。
極論を申し上げると、Aさんが高級外車を購入して成功したと思えば良い判断になりますし、失敗したと思えば悪い判断になってしまいます。
このように結果が良いのか、悪いのかは検証がしづらいものなのです。
しかし、Aさんが高級外車を購入するまでに、相見積もりをとった、自分の収入をふまえて返済のシミュレーションをした、様々な車種を比較検討した、などのプロセスを検証することは可能です。
インバスケットでは、高級外車を買ったという結果ではなくて、買うまでにどのようなプロセスをたどったのかを評価しているので、答えのないテストだと言われているのです。
さらに申し上げると、インバスケットは回答のなかに仕事で必要なプロセスがどれだけふくまれているのかをチェックして数値化できるテストだと言ってよいでしょう。
インバスケットは最強の気づきツール
インバスケットの性質である「気づきのツール」について考えていきましょう。
大人が成長をするためには、自身で課題に気づき、それを改善するために行動を変えていく必要性があるようです。
インバスケットはこの気づきを与えて、成長を促進するための有効な教育ツールだと言われています。
それは、インバスケットが大人を効果的に教育していくために必要ないくつかの要素を兼ね備えたツールだからです。
その要素とは以下の4つです。
・参加したい教育
・アウトプット型教育
・実践できる教育
・学ぶ必要性を感じられる教育
まずは参加したい教育です。
これは面白いと思ってもらえる教育のことを指します。特に大人は強制的に学習をしてもらっても効果的に成長していかないそうです。そこで面白いと思ってもらえる仕掛けが必要になります。
インバスケットはゲームです。しかもインバスケット研修はワイガヤのワーク形式で進めていくので面白いと思う受講者が大変多いです。
ですから、この「参加したい教育」という要素とインバスケットは合致していると言ってよいでしょう。
次にアウトプット型教育についてです。
理論や知識を学ぶだけでは成長につながりづらいと言ってもよいでしょう。学んだことを実際に使えるようにトレーニングをすることが大事です。つまり、学んだことをアウトプットすることでその知識や理論ははじめて身につき、実際の職場や生活のなかで使えるようになるのです。
インバスケットはできたかどうかを試すアウトプット型の教育ツールなので、この要素とも合致しています。
三つ目は、実践できる教育です。
砂漠で遭難しているケースを使用して判断力を鍛えたり、宝探しを通してチームビルディングを学んだりする研修をみかけることがあります。
確かに面白い教育法なのですが、実際の職場で遭難したり、宝探しをしたりする場面に遭遇することはおそらく少ないのではないでしょうか?
つまり、こういった教育法は実践性という観点で課題がありそうです。
一方で、インバスケットは職場で起こりうるケースで構成されています。
例えば、上司と部下の板挟みにあって困っている、クレームがあった、困った部下がいるのでなんとかしないといけないなどのケースです。
このように職場で起こりうるケースを使ってトレーニングをしていくので学んだことが職場で実践できるのです。
最後に、学ぶ必要性を感じられる教育について考えていきましょう。
人は必要性を感じないと学習をしていかないそうです。特に大人は、その傾向が顕著だと言われています。
では、どのようなときに大人は学習の必要性を感じるのでしょうか?
それは、「自分はできていない」と思ったタイミングで学習の必要性を感じます。
インバスケットを受講者した9割以上の方が「思ったよりできていなかった」と感想をもらします。
「思ったより優先順位がつけられていなかった」、「表面的な処理で終わってしまった、もっとできたはずなのに・・・」などの感想です。
このように「できていない」と感じたときに、問題解決の手法やマネジメントなどの学習を始めていくのです。
このように、人が成長していく「参加したい教育」、「アウトプット型教育」、「実践できる教育」、「学ぶ必要性を感じられる教育」の4要素とインバスケットは合致しているので、「最強の気づきツール」と呼ばれる所以でもあります。
本稿では、VUCA時代における教育として活用されているインバスケットの性質についてお伝えをしてきました。
次回はインバスケットで具体的にどのような能力がトレーニングできるのかを考えていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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インバスケットのプロフェッショナル
インバスケット講師として管理職を対象としたマネジメント研修に定評があり、大手企業や官公庁での登壇実績を多数有する。受講者満足度は96%以上、のべ受講者数は8,000名を超える。
丸山 広大(マルヤマコウダイ) 株式会社インバスケット研究所講師
対応エリア | 全国 |
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所在地 | 大阪府堺市中区 |
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