部下の持ち味を活かせる上司は「素敵な上司」
4月は、新人が入ってくる、昇格するとともに、組織変更や人事異動が行われるシーズンですね。
気持ちも新たに、新たな職場、新たな立場で頑張るぞ!と気合いが入ります。
異動や昇格は、これまでの自分にオサラバして、新たな自分を周囲に印象付ける絶好のチャンスでもあります。
今日は、新たな職場で「素敵な上司」として歓迎されるためのコツを、私の体験談よりお伝えいたします。
組織で仕事をしている人にとって、人事異動は一大イベントですよね。
枕草子にも、「除目に司得ぬ人」という。人事発表にまつわる人間模様を描いたところがあるくらい、本人にとっても、周囲にとっても、人生の大きな節目にあたります。
人間、新しい立場になったからと言って、そう簡単に変化できるものでは無いことは、経験者であればご存知だと思います。
でも、周囲の人は、新しい立場になったことで、そのポジションや役割に応じた言動を即刻期待するものです。
そして、前任者との比較も、意識するにしろ、無意識にしろ、してしまうのが常です。
このギャップが、昇進うつ、五月病の原因になることもあります。
昇格したポジションで、どのように振舞えばいいのか?
新しい職場で、部下たちにどのように接すればいいのか?
ここは、視点を「自分」から「相手」「部下」に変えてみることで、うまくいくこともあるのです。
私の体験談です。
パナソニック勤務時代に、それまで25年間過ごした事業部の経理部門から、
本社の調達部門に異動しました。
事業部と本社では、仕事の進め方が全く違いますし、経理と調達も全然違います。
これまでの専門スキルが発揮できない場面で、実務経験が無いところで、いきなり大きな影響力を発揮することを期待されたのです。
この時、私が取った行動とは。
「自分が職場に慣れるまでは、部下が持ち味を発揮しやすい環境を整えることに専念しよう」としたのです。
具体的には、赴任2日目に部下全員と1時間ずつ面談したのです。
社員も派遣社員も分け隔てなく、全員と面談しました。
面談の進め方です。
まず、私の自己紹介。そして、部下の自己紹介。
部下が担当している仕事を聞き出し、課題だと思うこと、難しいと思うところの意見を聞きます。
ここまでは、おそらく多くの人も同じように行っていることでしょう。
私は、このあとで「あなたは、どのように扱ってほしいですか?」と尋ねました。
表現方法はこのようなストレートな聞き方ではありませんが、趣旨としては、部下自身に、自分の得意な仕事の進め方と、上司(私)のフォロー方法を尋ねたのです。
最初は戸惑った部下たちも。
私の真意に気が付くと、いろいろな表現で自分のことを語り始めます。
「仕事に自信を持っていて、自由に仕事を進めたい。だから必要な指示以外は任せてほしい」とか。
「いつも不安に思っています。だから、毎朝と帰るときに仕事の進捗を確認して欲しい」とか。
それぞれの持ち味を、様々な表現方法で伝えてくれました。
この面談結果をもとに、当面の部下への接し方を把握した私は。
「物わかりの良い上司」だという評判を獲得することに成功しました。
もちろん、その後は部下を観察しながら接し方を修正してゆきましたが。
最初に受けた好印象は、私が退職するまでの3年間ずっと続いたのです。
そして、私の言うことは、割と素直に受け入れてくれる関係を構築できたのです。
上司であれば、自分の仕事の進め方やスタイルを、部下に押し付けることが職権上は許されています。
でも、新しい職場や昇進したばかりで、押しつけするとどうなるか?
偉そうだ、上から目線だ、などという、予想外の反発を食らうリスクがあります。
自分に自信があるタイプほど、こうした思考に陥りがちですね。
相手も様子をうかがっているスタート時期は、まずは自分のスタイルを封印して、
相手の持ち味を発揮させることに専念する。
仕事の状況や人物像が把握できてから、自分のやりかたを徐々に伝えていく。
「急がば回れ」の応用です。
上司とは、部下の能力、才能を発揮してもらうことで、組織としての成果を最大化するのが、もっとも重要な役割です。
自分より、相手、部下を尊重することで、得られるものは大きいです。
この1週間の過ごし方で、あなたへの在任中の評価が大きく左右されるのです。
ここは、慎重に事を運んでみませんか?
もし、あなたの周りに異動者・新任管理職がいらっしゃれば、この文章を転送していただいても結構です。
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高島 徹(タカシマ トオル) 株式会社決断力 代表
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