新卒採用

2020年に始まった新型コロナウイルスの流行を受けて、新卒採用はオンライン対応やスケジュールの変更など、大幅に変化しました。最近は売り手市場が続いており、企業間の競争が激化しています。ますます困難を増す新卒採用活動において、競合に勝つために企業は何をすべきなのでしょうか。田中氏が2023年における新卒採用の三つのポイントを解説します。タナケン教授の解説記事のほか、より理解を深めるための記事やセミナー、お役立ち資料もご用意しています。この機会にぜひご確認ください。

新卒採用とは

「新卒採用」は、主に大学生を毎年4月、定期的に採用する採用手法のこと。企業が持続的に成長・発展していくには、新卒者を定期的・安定的に採用し、育成する必要があります。しかし、少子化に伴って労働力人口が減少している現在、新卒採用は売り手市場であり、採用の困難さが増しています。

タナケン教授に聞く、いま、何をするべきか

ハイブリッド採用の戦略設計

新卒採用の選考フローにおいて、オンラインとオフラインの使い分けを戦略的にデザインしていく必要があります。会社説明会、適性検査、一次面接、グループディスカッション、二次面接、最終面接(役員面接)の選考フローの中で、三つの選考方法があります。一つ目は、すべてオンライン、二つ目は、すべてオフライン(対面)、三つ目は、オンラインとオフラインのハイブリッド。多くの学生が望んでいるのは、ハイブリッド選考です。

オンライン選考は便利ですが、「最終までオンライン選考だと、本当に自分が必要とされているのか感じられない」という学生の声もよく耳にします。オンライン選考は就職活動の負担を軽減しますが、一度も社員とリアルでのコミュニケーションを取らないで入社することには不安も感じているのです。

一方で、すべての選考をオフラインで受けた学生からは「テクノロジーに柔軟に適合できないようでは、入社してからの働き方が心配」という声も聞かれます。

オンラインとオフラインを適切なタイミングで、戦略的にデザインしていくことが、これからの新卒採用のポイントといえるでしょう。特に学生が望んでいるのは、一次面接、グループディスカッション、最終面接の3回をオフラインにするハイブリッド選考です。

新卒採用は、選考ではなく次世代育成

私が新卒採用の担当者であれば、「選考ではなく育成」という視点を大切にします。

学生のモチベーションが下がる会社説明会は、担当者が一方的かつ単調に会社情報をプレゼンするタイプのものです。学生は「資料を読めばわかるし、動画で共有してもらえれば倍速で視聴するのに」と感じながら聞いています。

ポイントは、「次世代育成」という視点で会社説明会の内容を構成していくことです。

私がインタビューを実施したある企業では、次世代育成としての新卒採用をすでに実施していて、会社説明会を双方向で開催しています。業界や業種が抱える問題を共有し、これからの社会変化の中で企業として何ができるのかを一緒に考えていくような構成になっているのです。

面接やグループディスカッションも、次世代育成プログラムにすることが大切です。できるだけその場で、ビジネスパーソンとして求められる作法を的確にフィードバックします。丁寧なフィードバックをしてくれる企業に対して、学生は好印象を持つからです。

一方で、選考結果を数週間も待たせた上、形式的な「お祈りメール」を送ってくる企業のファンになる学生は一人もいません。

「新卒採用は次世代を育成する重要な機会」という考えのもと、学生に接することで、学生がファンになってくれる可能性が高まります。新卒採用では縁がなく別の企業に入社しても、数年後、中途採用のときに戻ってくることも少なくないのです。

複線型のキャリア形成支援

ジョブ型採用が注目されていますが、新卒採用においてこれから特にポイントとなってくるのが「複線型のキャリア開発支援」です。

採用の過程で、入社後のキャリア形成について伝える必要があります。入社して新人研修を受けるまで、どんな部署に配属されるかわからない、というのではいけません。

どの部署を希望するのか、入社後にどのように働いていきたいのかを、面接で聞いていくことが理想です。また、社内公募制、副業・兼業など、自律型のキャリア形成が可能な制度があるなら、学生に伝えるといいでしょう。学生からは「副業禁止なので、エントリーしない」という声も聞かれます。

入社後のファーストキャリア形成においては、社内の仕事にコミットし、ビジネストレーニングを積み重ねることが重要です。学生はその点も理解しているので、社内でトレーニングを重ねながら、その先にどんな複線型のキャリア形成が可能なのかを伝えるようにするのです。

上記の3点を意識して、新卒採用を戦略的にデザインしてみてください。

田中研之輔さん
田中 研之輔さん
法政大学 キャリアデザイン学部 教授 / 一般社団法人プロティアン・キャリア協会 代表理事

たなか・けんのすけ/法政大学 キャリアデザイン学部 教授 専門:キャリア論 一橋大学大学院社会学研究科博士課程を経て、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員をつとめる。博士(社会学)。大学と企業をつなぐ連携プロジェクトを数多く手がける。著書31冊。企業の取締役、社外顧問を35社歴任。

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