背景にある「思い」に着目する
組織として働く利点を最大限活かし、「集まった人たちが組織として機能しながら持続的に成果をあげる」状態を目指して、今回は次の問いを考えてみたいと思います。
【組織を考える問い】
私たちは、いつからお互いに反発するようになったのでしょうか?
誰かと一緒に仕事することを選び、企業や団体で働く私たち。
最初は協調的に仕事をしていても、だんだんと仕事に慣れていくといつのまにか「この人のせいで」とか「この人を変えなければ」と思うようになっていきがちです。
実は、ここには私たちが仕事を積み重ねることで培った「経験値」の落とし穴が存在しています。
私たちは仕事をする上で実にたくさんのことを考えなければなりません。
例えば報告書の提出を例に考えてみましょう。細かい点でいえば、この場面での報告であったらどのフォント・サイズで打つのか、タイトルはどうつけるのか、敬体/常態のどちらで書くのか、章立てはどうすべきかなどなど、たくさんの考える点があります。
こういった細かいことを、いちいち全て考えていたらいつまでたっても仕事が終わりません。
そこで、私たちは「経験」から最適だと思われるルートを導き出し、「ここだったらこんな感じ」という形で効率的に処理をしていくようになります。
さらに、その経験がどんどん積み重なってくると、これらは「常識」に発展します。
「この書類はこうあるべきだ」「この部分はこう書かなければならない」といった自分の常識(あるいは信念・メンタルモデルなどと言うこともあります)が根強く作られていき、他のやり方は「間違っている」と思うようになります。
こうなると、「自分/他人」の区別ができ、違うやり方は「排斥したい/こちらを踏襲させたい」と思うようになってきます。
私たちは効率的に業務を行うように進歩したはずなのに、その結果視野が狭くなってしまうのです。
この構造、実は業務のやり方だけにおこることではありません。
他者に対する考え方も同じように「常識」が作られていき、価値判断にまで影響を与えます。
仕事のやり方はこれがベスト、だからこのやり方を取らないあの人は「ありえない」。
一度決まったことに口をはさむのは「最低だ」、決める途中に意見を出す「べき」だった。
発端は業務のやり方の細かなはずだったのに、いつの間にかその人そのものの価値判断になってしまう。
これが繰り返されると、人間関係上にも強固な壁が生まれます。
こうして、私たちは「一緒に力を合わせていたはずなのに、相容れなくなる」という状況に陥るのです。
そして、この現象は悪いことに、近い存在であるほど小さな違いが許せなくなるものです。
例えば、「明らかに日本には慣れていない外国人」であると外見からわかれば、土足厳禁の場所にうっかり入ってしまっても優しく注意できますが、外見的に日本人、それも分別がつきそうな大人であれば、つい不快感を覚えてしまいがちです。
「日本人なら常識」「ここにいるならあり得ない」こういった思考が、反射的に湧き起ってしまいます。
もし同じ会社で働いている隣の部署の方が自分とまったく違うやり方をしていたら…私たちは自分の「常識」からその人を判断し、見えない壁を作ってしまうかもしれません。
だからこそ、私たちは価値のぶつけ合いをする前に、お互いに「自分が大切にしていることは何であるか」を知り、それを共有することが必要なのです。
相手は自分と違う、だからこそ「背景にある思い」を知る。
それがないと、お互いに理解し合うことはできません。
今回のポイント
・仕事上の効率を上げて行くことで、かえって見えなくなるものがある
・他者との違いを反射的に否定せず、その背景にあるものを考える
- モチベーション・組織活性化
- コーチング・ファシリテーション
- チームビルディング
- コミュニケーション
- ロジカルシンキング・課題解決
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早稲田大学アカデミックソリューションは、早稲田大学の関連会社として、組織の課題に合わせたカリキュラム編成と実践力を養う体験型学習を通じて、複雑で困難な時代に対応する「しなやかな人材・チームづくり」を支援します。
リカレント教育チーム(リカレントキョウイクチーム) 株式会社早稲田大学アカデミックソリューション コンサルタント、早稲田大学紛争交渉研究所招聘研究員
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