問題解決に必要な「創造的思考」

今回のコラムでは会議でファシリテーターが注意を払うこと、特に「アイデア」をどう出していくかを考えていきます。

 

そもそも、ファシリテーターが活躍する会議とはどんな会議か?

 

ファシリテーションは大きく言えば集団の問題解決を促進する能力である、と以前に述べました。
問題解決を進めるにあたり、メンバーのさまざまな意見を引き出し、まとめて、合意を得ること。
これがファシリテーターに期待されている役割です。

そのため、結論がすでに決まっている連絡型会議などではなく、みんなで答えを探す問題解決・企画創造型の会議が、ファシリテーターが最も活躍できる会議といえます。
ここで、「アイデア」をどう出すか(出してもらうか)がファシリテーターにとって重要なポイントになってくるのです。

 

「正解」がわからない問題への対処

 

昨今、私たちを取り巻く問題は、「唯一絶対の正解」をもつものばかりではなくなりました。
その代わり、この時、この場所で皆が納得する答え、いわゆる「納得解」を導き出すことが重要になっています。
納得解は絶対の正解ではありませんので、学校での学びのように「誰かに教えてもらう」ことはできません。
話し合いってその思いを共有し、共感のもとで「納得した答え」を導く、コミュニケーションをベースとした問題解決が必要です。

問題解決のフロー(問題の特定→原因の特定→打ち手の検討)を考えてみると、私たちは「打ち手に対する納得」のみを重要視しがちですが、実はそれだけではではありません。
問題解決の各ステップでメンバーの納得が得られているかを注意する必要があります。
問題や原因の特定で意見が一致しないと、打ち手を考える際に「そもそも何のためにやっているのか」を見失う可能性があるからです。

①問題はどこにあるか
②原因として考えられることは何か
③対策は何をするべきか

以上のステップそれぞれに対して、アイデアを出しながら納得解を導いていきます。

 

「広げて」「絞る」

 

納得を導くための思考として重要なことは、「幅広く考える」ことです。
そもそも考えられる答えは一つではないのですから、さまざまな可能性のもとに「アイデアを広げて検討」し、その中からメンバーが納得する答えを選ぶことになっていきます。

つまり、アイデアは「広げて」から「絞る」というステップが基本方針となります。

私たちは目の前の問題に対して「これが答えだ」と反射的に決めつけてしまいがちですが、この「反射的な答え」はいつもの思考によるいつも通りの答えに落ち着きます。
まずはその決めつけを取りはらい、自由に考えを広げていくことが大きな指針です。

 

「当たり前」が思考に制限をかける

 

私たちは仕事を行う上で経験や前例から多くのことを学んでおり、はじめは意識的に行っていたことも、何度か繰り返すうちにそれらを無意識下で行えるようになります。
「当たり前」を作って短時間で的確な作業をする、これは業務効率を上げるためにとても重要であることは間違いありません。

しかし、考えを「広げる」という点からすると、この「当たり前」が曲者です。
前例や経験を踏襲していればいいと思っていたら、そこに潜む問題が感知できなくなるからです。

自由に考えを広げるためには、「当たり前」に疑問を持つこと、つまり無意識で行っていることを意識下に戻し、いつもと違った思考で検討をしてみることが重要なのです。
この「当たり前」を疑問視できるかどうかが、ファシリテーターとしてのポイントとなります。

私たちを取り巻く状況は刻一刻と変化しています。
上手くいっているうちは問題ないように見えますが、現状維持だけでは変化に対応できず、緩い衰退を導くことになるのです。

 

思考を広げるカギは「場づくり」

 

もう一つ、思考を広げるためには、まずは「アイデアを歓迎する場」を作ることが重要です。
例えば、グループでアイデアを出すための「ブレインストーミング」では以下の4つのルールがあります。

 

①批判厳禁
アイデアを歓迎する態度を取り、アイデアの品評をしない
②質より量
アイデアは完全なものでなくてもよく、とにかく量を出す
③自由奔放にふるまう
アイデアは自由に発想し、突拍子もないアイデアやユニークなアイデアを歓迎する
④アイデアを結合し、改善する
メンバーが出したアイデアにうまく乗っかり、「それだったら……」と思考を広げる

 

一見当たり前のルールに思えますが、実はこれが結構難しいもの。
ブレインストーミングのつもりがつい「アイデアの品評会」になってしまうということがよくあります。
アイデアの評価は後に行うものとして、まずはアイデアを歓迎する場を作ることが思考を広げるカギとなります。

問題解決には物事を整理する「論理的な思考」も必要ですが、このように思考を広げてアイデアを出すこと、つまり「創造的な思考」をとることも、問題解決を進める上で重要なポイントです。

 

【今回のポイント】

問題解決には「創造的な思考」が欠かせない
思考を広げるために、まずは「アイデアを歓迎する場」を作る

  • モチベーション・組織活性化
  • コーチング・ファシリテーション
  • チームビルディング
  • コミュニケーション
  • ロジカルシンキング・課題解決

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早稲田大学アカデミックソリューションは、早稲田大学の関連会社として、組織の課題に合わせたカリキュラム編成と実践力を養う体験型学習を通じて、複雑で困難な時代に対応する「しなやかな人材・チームづくり」を支援します。

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