キャリア開発とは?企業が個人成長を支援するメリット【前編】
キャリア開発とは、企業が自社の従業員を育成する手法の一種です。
昨今、組織外でのキャリア支援も含めて再注目されており、実際に多くの企業でキャリア自律を支援するためのキャリア開発の導入や検討がなされています。
一方で、これらの活動が必ずしも成功しているわけではありません。
本記事ではキャリア開発のメリットとリスクに着目し、特に次世代を担う20代から30代におけるキャリア開発を実施する際のメリットと注意点について前後編にて解説します。
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目次
【前編】
・キャリア開発とは?
ー「キャリア開発」と類似用語の違い
ー キャリア開発の目的と現状
・キャリア開発が再注目される背景
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【後編】
・キャリア開発のメリット
・キャリア開発でメリットを得られやすい企業
・キャリア開発のリスク
・キャリア開発を推進するための具体的な方法
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キャリア開発とは?
「キャリア開発」と類似用語の違い
キャリア開発とは、企業が自社の従業員を育成する手法の一種です。
キャリア開発とともに、「キャリアデザイン」や「キャリアパス」等、「キャリア〇〇」と示される言葉が多く存在し注目されている印象ですが、それぞれの意味の違いを下記にて紹介します。
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キャリアデザイン:スキルや役職といったビジネスに関することに限定せず、結婚やワークライフバランスといった個人的なビジョンも包括した「人生設計」のこと
キャリアプラン:仕事や働き方の将来像を実現するために作成する、具体的な行動計画のこと
キャリアパス:従業員が目標としている役職や職位に到達するために、経験やスキルを高めていく方法のこと主に企業側が従業員側に提示するものを指す
キャリアアップ:従業員自らのスキルを磨いて役職や仕事のレベルをあげていくこと
キャリア形成:職業経験や人生の中で継続して経験を積むプロセスのこと
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従業員は人生設計として大きな「キャリアデザイン」を描き、それを元に詳細な行動計画も含んだ「キャリアプラン」を作ります。このキャリアプランは個人の目線で作るため、自社にとどまらないものができる事もあるでしょう。
その際、企業側は従業員がキャリアプランを描きやすいように、自社における「キャリアパス」を提示することがあります。そして従業員は、提示されたものを参考にキャリアデザインとキャリアプランを考えます。
作成されたキャリアプランを元に日々の仕事を実践することで「キャリアアップ」を実現し、「キャリア形成」をすることが可能です。
それぞれ、似た響きですが、ぜひ意味の違いを理解したうえで使い分けていきましょう。
キャリア開発の目的と現状
キャリア開発の目的は、各従業員のキャリアプランの実現を支援することで、エンゲージメントを向上させ、育成を支援することです。
企業による従業員のキャリア開発という手法は1980年代には既に存在しており、目新しいものではありません。
今では、従業員1,000名規模以上の大企業で過半数がキャリア開発を実施しているとのアンケート結果もあり、言葉自体は定着しているといえます。
[出典]日本の人事部 人事白書2021より
ただ、キャリア開発と言っても対象とする年齢層によって実施すべきことが変わります。年齢層によって、今の従業員の能力や役職、今後のキャリアプランの幅や感じている思いに大きな違いがあり、キャリア開発における目的や注意するポイントが異なるためです。
特に今後の企業を牽引する存在であり企業間での取りあいが激しくなる20.30代の若手〜中堅は、将来の発展に直結する層です。
本記事では、次世代を担う20,30代の若手〜中堅層を対象としたキャリア開発に着目して整理します。
キャリア開発が再注目される背景
■いま、キャリア開発が再注目される理由
古くからあるキャリア開発ですが、昨今では「キャリア自律」という言葉とセットで注目されています。
キャリア自律は1990年末から2000年代にかけてよく取り上げられました。それ以前のキャリア開発では、仕事で必要とされる知識やスキル等、企業が必要とする能力の開発が重要視されており、訓練/指導型の教育が中心でした。
しかし、ビジネス環境の変化が早くなるにつれ、「企業主導での能力開発より、従業員自らが能動的に能力開発に取り組むほうが、企業成長に資する」という考えが生まれました。
この流れをうけ、従業員がキャリアプランを持ち、それを元に働くことを企業は支援するようになりました。つまり、従業員個人のキャリア自律を企業が支援する点が重要視され、それに伴いキャリア開発手法も変化していきました。
そして2020年以降、キャリア開発、キャリア自律支援という言葉が再注目されています。
これまでとの違いは、従来のキャリアは組織内(自社)を指していましたが、今は組織外(他社)までも含む点です。
2010年代の前半まで、企業が使う「キャリア自律」という言葉は組織内キャリアを前提として考えられていました。しかし、今では組織外キャリアの可能性も企業は考慮するようになっています。
この流れは、下記の出来事が要因として考えられます。
2016年、『ライフ・シフト-寿命 100年時代の人生戦略』が発刊され「人生100年時代」という言葉が日本で大流行し、複数のキャリアという可能性が個人の中に浸透しはじめました。
そして、2018年に厚生労働省が副業・兼業のガイドラインを制定することで複数のキャリアという概念が国として肯定されました。
2019年〜2020年には、経済界から企業による終身雇用の維持の限界と、企業内でのスキル育成による限界への言及がありました。これにより、企業として従業員が組織外キャリアを加味したうえで自律的にキャリア選択をすることに価値を見出すようになりました。
年齢層に適したキャリア開発へ高まる関心
各企業では、「ミドル/シニア層(主に40代以降の厚い層)」と、企業間の取り合いが激しい「若手/中堅層(主に20,30代の薄い層)」の2つの層を意識したキャリア自律支援への関心が高まっています。
たとえば、ミドル/シニア層では能力やパフォーマンスを現報酬に見合うものに伸ばすことや、報酬を適正化させることを目的としたキャリア開発が意識される傾向です。
一方、「若手/中堅層」では能力開発のスピード向上に加え、エンゲージメントを高め自社に魅力を感じてもらうことを意識したキャリア開発といったように、年齢層によって違いがあります。
実際、筆者も新卒や中途の方々の採用活動に携わる際、「入社後、社内外でどのようなキャリアを築けるか」、または「企業が従業員に対してどのようなキャリア支援をしているか」について言及する例が増えました。
若手・中堅層にとって、企業による従業員のキャリア開発施策が魅力付けに繋がっていることを強く感じます。
ここまで、キャリア開発やキャリア自律支援が、「組織外キャリア」も考慮にいれたうえで、近年改めて着目されるようになったこととその背景や実態について整理しました。
後編では、キャリア開発に取り組む際のメリットやリスクについて記載します。
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
- キャリア開発
WHI総研
入社後、首都圏を中心に業種業界を問わず100以上の大手企業の人事システム提案を行う。現在は各企業の人事部とのディスカッションと、それらを通じて得られるタレントマネジメント、戦略人事における業務実態の分析・ノウハウ提供に従事している。
奈良 和正(ナラ カズマサ) 株式会社Works Human Intelligence / WHI総研
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