第2回 需要創造型経営と集団性格
前回は、現在の市場環境で業績を上げ続けていくには、「需要創造型経営を可能にする創造的な人と組織作りに取り組むことであり、肯定的な能力観を持ってマネジメントすること」とお話ししました。
今回は、「創造的な組織作りに必要な能力を日常的に磨くこと」について考えたいと思います。
創造的な組織に必要な能力とは、市場の情報を基に、新たな価値を創造し続けられる組織の能力のことを言います。
では、どのような能力が必要になるかを整理しておきましょう。
1)自分や組織の中にある経営資源の強みを活用して、何に貢献するのかを意志決定する能力
2)組織の総合力を引き出す能力
3)自分と組織の戦略的思考力
4)自分と組織の情報活用能力
5)多様な価値観との共創型のコミュニケーション能力
6)市場のニーズ(デザイアー・ニーズ・ウォンツ)を満たす価値をコンセプトとしてまとめる個人と組織のコンセプト創造能力
7)チームで知恵を開発するファシリテーション能力
8)自分と組織のモラル意識を高め、自らのメンタルヘルスを良好にする能力
9)自分と組織の専門的技能を磨く能力
これらの能力を日常的に磨くことが、創造的な組織作りに必要な能力を高めることになるのです。では、日常的に磨くための「実践のポイント」を考えてみたいと思います。
創造的な組織の能力向上実践のポイント
創造的な組織に必要な能力を日常的に磨くには、四つのポイントとマネジメント上の一つの基本を実践するとよいでしょう。
1.「自分が属する組織の強みは何か」
「強み」を考えるには、組織美点に着目する必要があります。これは、自社観(わが社はこういうものだという事実認識)や、自分が属する組織観(わがチームはこういうものだという事実認識)を見直すことになるのです。自社や自分が属している組織の美点が見つかると感情的に前向きになり、強みにつながる能力を磨こうという気持ちが生まれてきます。
次に、自社や自分の組織が提供している価値(サービス・商品)の中で、「お客様は何を買っているのか」を考える機会を作ることです。自社や自分の組織が提供する価値(サービス・商品)がどのようにお客様に喜ばれ、感謝されているか、その情報を整理することで、組織の強みを第三者的に発見する機会になります。
さらに、これらの強みを伸ばすための課題を整理することです。そうすれば、自分がさらに磨くべき専門技能やチームとして取組むべき成長課題が特定されます。
2.お客様のニーズ(デザイアー・ニーズ・ウォンツ)に対し、「どのような価値(サービス・商品)を提供して役立ちたいのか」をチームで考える機会を作る
お客様のニーズを「顕在化しているニーズ(デザイアー)だけでなく、見え隠れしているニーズ(ニーズ)を推察し、将来必要になるであろうニーズ(ウォンツ)の仮説を立てること」をチームで考えてみることが、情報活用能力を磨く第一歩になります。チームで取り組むことで、個人で考える以上にさまざまな角度や価値観から、ニーズを捉えることができ、個人の情報感度の幅を広げることにもつながります。
3.お客様のニーズ(デザイアー・ニーズ・ウォンツ)の仮説に対し、「どのような価値(サービス・商品)を提供すれば、そのニーズを充足できるのか」をチームで解決策を作る
組織には個人の能力以上に多様な価値観やそれに基づく知恵があるものです。チームで解決策作りに取り組むことによって、チームの多様な知恵を引き出し、コンセプトとしてまとめる能力も磨かれていきます。
4.お役に立った喜びの情報をチームで共有化する
チームで立てた解決策を実践し、検証することで、どの仮説の成功確率が高いのかが分かるようになります。そして、お客様に支持された理由を共有化すれば、自社や自分の組織に自信が持てるようになり、「何に役立ちたいのか」という意志決定に確信が持てるようになります。
このように、チームで強みを分析し、ニーズ仮設を立て、解決のコンセプトを作り、検証し、お役立ちの喜びを共有化していけば、創造的な組織に必要な能力が日常的に磨かれていくのです。
マネジメント上の基本の一つは「横の統制」を活用することです。
マネジメントには「縦の統制」と「横の統制」があります。「縦の統制」とは、指示・命令などの指揮力でメンバーを動かす方法で、「横の統制」とは、集団活動を活用する方法です。
組織の創造的能力を高めるには、「縦の統制」だけではなく、「横の統制」を上手に活用することです。
メンバーはリーダーの意向だけでなく、横のメンバー同士の影響を強く受けるからです。
例えば、チームで知恵を出して解決策を作り、検証して学ぶことが当たり前という価値観と行動様式がある集団にいると、メンバーは自然にその集団の価値観と行動様式に合わせようと努力するようになります。しかし、このようなプラスの影響だけでなく、マイナスの影響が出る場合もあります。それだけに、集団に共通する良い価値観と行動様式を育てておくことが重要です。特に、創造的な組織作りに必要な能力を作るには、「市場をより良くすることに役立つ。これに結束してチャレンジすることが当たり前」という集団の価値観と行動様式を作ることです。
なぜならば、企業活動とはお客様のニーズ(デザイアー・ニーズ・ウォンツ)に対して、ライバル以上により良くそのニーズを満たす価値(サービス・商品)を提供することが活動の原点となります。これらは、「何に役立つのか、どのように役立つのか」を考え、行動する「お役立ち」の価値観と行動様式が基本となります。
そして、提供価値(サービス・商品)が市場に信頼され続けるためには、常に新たな価値の創造や提供に挑戦し続けるという「挑戦」の価値観と行動様式が必要になります。
さらに、組織活動では個人の活動よりもより大きな知恵と力を継続的に出すことを選択しています。従って、「協調」の価値観と行動様式が基本となります。
これら三つの価値観と行動様式(挑戦・協調・お役立ち)を高めることを基本に、「横の統制」を活用した集団活動を意図的に活用することで、日常的に組織の創造的な能力を強化できるのです。
== まとめ ==
組織の創造的な能力を日常的に高めるための四つのポイントと一つのマネジメントの基本について述べてきました。社員が、個人としても、組織としても強みを活かし、市場の新たな価値創造に向けたお役立ちに結束してチャレンジする。そして、その成果やお役立ちの喜びを動機づけの中核にしたマネジメントをすれば、組織の三つの価値観と行動様式(挑戦・協調・お役立ち)を高め、創造的な組織の能力が強化されて、創造的な組織作りが可能になるのです。
- 経営戦略・経営管理
どこよりも どこまでも お役立ち。
人が変わる 企業が変わる。
「人は変わることができる」その信念から、すべてが始まります。
自分が周りの人や社会の役に立てるという「お役立ち使命」を自覚することが、考え方や行動を変え、その人にしかできない仕事を実現していきます。
その考え方を根幹に、ビジネス現場で人が変わり、企業が変わる手法を開発して、ご提供し続けています。
葛西 浩平(カサイ コウヘイ) 株式会社ジェック 代表取締役社長
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