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第112回 有給休暇の買上げ

ときどき、「有給休暇の買上げをしてよいか?」「有給休暇を買上げるとしたらいくら支払えばよいか?」といった質問を受けることがあります。

今回は、有給休暇の買上げのルールと、計算方法について説明していきます。

 

<有給休暇の付与日数>

有給休暇は、勤務日数に応じて与えられます。週の所定労働日数が5日以上の場合、雇い入れられた日から6ヶ月勤務して全労働日の8割以上出勤していれば10日の有給休暇が与えられます。次に、そこから1年ごとに11日、12日と下記の通りに与えられる日数が増えていきます。

これに対して、週4日以下の勤務で、週の所定労働時間が30時間未満のアルバイトやパート従業員に対しては、週の所定労働日数に応じた有給休暇が与えられます。

 

週5日以上の社員、または週30時間以上のアルバイトの有給休暇の付与日数

勤続勤務日数/付与日数:6ヶ月/10日
勤続勤務日数/付与日数:1年6ヶ月/11日
勤続勤務日数/付与日数:2年6ヶ月/12日
勤続勤務日数/付与日数:3年6ヶ月/14日
勤続勤務日数/付与日数:4年6ヶ月/16日
勤続勤務日数/付与日数:5年6ヶ月/18日
勤続勤務日数/付与日数:6年6ヶ月以上/20日

 

週4日以下のアルバイトの有給休暇の付与日数

週労働日数/1年の所定労働日数(6ヶ月):4日/169日~216日(7日)
週労働日数/1年の所定労働日数(1年6ヶ月):4日/169日~216日(8日)
週労働日数/1年の所定労働日数(2年6ヶ月):4日/169日~216日(9日)
週労働日数/1年の所定労働日数(3年6ヶ月):4日/169日~216日(10日)
週労働日数/1年の所定労働日数(4年6ヶ月):4日/169日~216日(12日)
週労働日数/1年の所定労働日数(5年6ヶ月):4日/169日~216日(13日)
週労働日数/1年の所定労働日数(6年6ヶ月):4日/169日~216日(15日)

 

週労働日数/1年の所定労働日数(6ヶ月):3日/121日~168日(5日)
週労働日数/1年の所定労働日数(1年6ヶ月):3日/121日~168日(6日)
週労働日数/1年の所定労働日数(2年6ヶ月):3日/121日~168日(6日)
週労働日数/1年の所定労働日数(3年6ヶ月):3日/121日~168日(8日)
週労働日数/1年の所定労働日数(4年6ヶ月):3日/121日~168日(9日)
週労働日数/1年の所定労働日数(5年6ヶ月):3日/121日~168日(10日)
週労働日数/1年の所定労働日数(6年6ヶ月):3日/121日~168日(11日)

 

週労働日数/1年の所定労働日数(6ヶ月):2日/73日~120日(3日)
週労働日数/1年の所定労働日数(1年6ヶ月):2日/73日~120日(4日)
週労働日数/1年の所定労働日数(2年6ヶ月):2日/73日~120日(4日)
週労働日数/1年の所定労働日数(3年6ヶ月):2日/73日~120日(5日)
週労働日数/1年の所定労働日数(4年6ヶ月):2日/73日~120日(6日)
週労働日数/1年の所定労働日数(5年6ヶ月):2日/73日~120日(6日)
週労働日数/1年の所定労働日数(6年6ヶ月):2日/73日~120日(7日)

 

週労働日数/1年の所定労働日数(6ヶ月):1日/48日~72日(1日)
週労働日数/1年の所定労働日数(1年6ヶ月):1日/48日~72日(2日)
週労働日数/1年の所定労働日数(2年6ヶ月):1日/48日~72日(2日)
週労働日数/1年の所定労働日数(3年6ヶ月):1日/48日~72日(2日)
週労働日数/1年の所定労働日数(4年6ヶ月):1日/48日~72日(3日)
週労働日数/1年の所定労働日数(5年6ヶ月):1日/48日~72日(3日)
週労働日数/1年の所定労働日数(6年6ヶ月):1日/48日~72日(3日)

 

<有給休暇の買上げ>

原則として、有給休暇を金銭で買上げることはできません。これは、昭和30年11月30日に出された通達(基収4718号)によって示されています。

 

「年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて法第39条の規定により請求し得る年次有給休暇の日数を減じないし請求された日数を与えないことは、法第39条の違反である。」

 

この通達は、労働基準法で定められている要件を満たした場合に付与される有給休暇は、労働者の権利であるため、この権利をあらかじめ買上げ予約をすると労働者が有給休暇を取得できない、あるいはあえて取得しないことを選択することにつながるので、労基法違反になることを示しています。

 

この通達により、「有給休暇は買上げできない」と誤解されている方もいらっしゃると思います。しかし、例外的に次の3つのケースのいずれかに該当する場合は、有給休暇の買上げが可能です。

 

1)退職時に未消化で残っている有給休暇

退職後は、有給休暇の権利を行使することができないため、有給休暇を買上げることは可能です。

 

2)時効によって権利の消滅した有給休暇

有給休暇の時効は、付与された日から2年間です。時効によって消滅した有給休暇を買上げることは可能です。

 

3)労働基準法を上回って付与している有給休暇

法律で定められている日数を上回って付与された有給休暇についても、その上回る日数については買上げることが可能です。

たとえば、フルタイムで半年間勤務した場合で、15日間の有給休暇が付与された場合を考えてみたいと思います。法律で定められている日数は10日間となりますので、15日から10日を引いた5日間については、買上げが可能となります。

 

<有給休暇の賃金について>

年次有給休暇の賃金について、労働基準法は以下のように定めています。

 

「使用者は、有給休暇の期間または時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、平均賃金又は所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間について、健康保険法第99条第1項 に定める標準報酬日額に相当する金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。」

 

つまり、有給休暇の賃金は次のいずれかの方法で計算する必要があります。

1)平均賃金

2)通常の賃金

3)標準報酬日額(健康保険法)

 

しかし、有給休暇の買上げについては、有給休暇を取得した日の賃金には当たりませんので、上記以外の方法で計算することが可能です。たとえば、1日当たり10,000円とする方法も可能です。

 

<有給休暇の買取りと給与計算>

実際に有給の買上げをした場合は、社会保険料、雇用保険料、所得税を控除すべきかという問題が発生します。これは、買上げをした原因によって2通りの考え方があります。

 

1)賞与としての取り扱い

時効によって権利の消滅した有給休暇や労働基準法を上回って付与している有給休暇を買上げる場合は、賞与として支給することになります。

したがって、社会保険料、雇用保険料、所得税をその金額から控除することになります。

 

2)退職金としての取り扱い

退職時に未消化で残っている有給休暇を買上げる場合は、退職したことに起因して一時的に支払われるものであるため、退職金として支給することになります。

退職金に対しては、社会保険料、雇用保険料は発生しません。所得税については、勤続年数によって所得控除の金額が変わってきます。

 

退職所得の金額は、原則として、次のように計算します。

 

(収入金額-退職所得控除額)× 1/2= 退職所得の金額

 

退職所得控除額については、勤続年数によって計算方法が変わってきます。

20年以下:40万円 × 勤続年数 *80万円に満たない場合には、80万円

20年超 :800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)

 

たとえば、勤続年数が10年の場合の退職所得控除額は、40万円×10年=400万円となります。

 

退職所得は、一時所得になるため、給与所得に含めることができません。まれに、給与に含めて所得税を計算しているケースがありますが、正しい処理とは言えませんので注意しましょう。

  • 法改正対策・助成金
  • 労務・賃金
  • 福利厚生
  • 人事考課・目標管理

経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。

川島孝一(カワシマコウイチ) 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問

川島孝一
対応エリア 関東(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県)
所在地 港区

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